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淑女で、紳士な二人は生徒会長の両親です(絶望)2

 と、いうわけで翌日の俺は遅刻しないため十分前に着くように電車を乗る。

 昨日のメールでは集合場所はユオンの最寄駅の改札出口付近と書かれていた。

 みんな電車なら同じ路線を使うだろうから、同じ改札口から出るはずだ。

 勘違いや行き違いはまずないはず。

 そんなこんなで目的の駅で降り、改札口を出て待ち合わせの場所へ。


「守谷ー、こっち!」


 水原先輩と生徒会メンバーが集合している。松本先生はどこにもいない。


「松本先生は?」

「『私がいなくてもお前達は真面目だから心配ない。買い物は任せる』ってお姉ちゃんから私宛にメールが届いてた」


 面倒臭がったなあの教師。


「それでこの後は予定はどうするの?」


 姫華先輩がみんなの顔を窺いながら尋ねる。


「何でも……いい」

「そうですね……私もイマイチどこに行きたいかは」


 小毬先輩も雫もパッとは思いつかないようだ。


「えー、せっかく遊ぶのに」

「そういう、舞は、どうなの?」


 逆に小鞠先輩から質問を受けてしまい、口を噤んでしまった。


「どのように過ごすかは歩きながらでもいいだろう」


 綾先輩の提案でとりあえずユオンに向かいながら話し合うことに。


「それで、どうするんですか?」


 俺が尋ねると、はじめに返ってきたのは姫華先輩だった。


「私はちょっと思いつかないわね」

「私は、スイーツが、食べられれば、いい」


 小鞠先輩から意見は出たが、まだ十時だし、今食べると昼が入らなくなってしまう。


「スイーツは後にしてショッピングは?」

「最初に買い物をしてしまったら、荷物が邪魔になるだろ」

「た、たしかに……」


 綾先輩の指摘に水原先輩は苦い表情を浮かべる。

 何か閃いたように俺の隣で手をポンッと雫が叩く。


「そうだ。映画見ませんか? 最近映画のCMが流れてるんで、今なら色々上映されてると思います」


 映画か……最近は見てないな。

 CMとか見ると、凄く見に行きたくはなるけど。


「いいじゃん! それに見終わったらお昼食べて、スイーツも食べるでよくない?」


 水原先輩がまとめると、みんながそれに賛成する。

 予定が決まって数分後にはユオンに着いた俺達。

 まずは映画館に移動し、見る映画を決める。


「みんなで見れそうなのは……」

「これなんてどうかしら」


 姫華先輩が指差す先を見ると、そこには恋愛ものの映画のポスターが貼られている。


「こっちも、気になる」


 小鞠先輩は海外の新作映画。


「あれはどう?」


 雫は有名推理小説が原作の映画を指差している。


「では私と廉君はこの映画を見にいこう」

「R15指定された見るからにエロティックな映画は見ませんからね」

「……あっ」


 綾先輩とやり取りしている横で水原先輩が何かを見つける。

 視線の先にはアニメ系の映画のポスター。


「水原先輩はこれが見たいんですか?」

「えっ!? いや、そういうわけじゃ……」


 そう言いながらもチラチラ盗み見ている。

 アニメ好きというのはもう知れ渡っているのだし、今更隠す必要なんてないのに。


「なんだ? 舞はその映画が気になるのか?」


 綾先輩もそう尋ねると、水原先輩はバツが悪そうに目をそらした。


「気になるけど……みんなと来てるんだし、みんなが見れる映画がいいと、思うし」


 ああ、なるほど。

 アニメをあまり見ていない生徒会メンバーに気を遣っているのか。

 気にする必要ないのに。


「どれどれ……」


 綾先輩がそのポスターを注意深く観察すると、「よし」と呟く。


「姫華、小鞠、雫。この映画にしないか? なかなか面白そうだぞ」


 他三人もポスターの前に集まりだす。


「ちょ、ちょっと綾!」

「なんだ?」


 慌ててる水原先輩と不思議そうに首を傾げている綾先輩。


「なんだじゃないわよ! 私に気を使わなくても……」

「気? 気なんて使ってないぞ。そもそも友人と遊ぶのに気を使う必要なんてないだろ。私は面白そうだからみんなに提案してるんだ」


 綾先輩の言う通りだ。

 実際その映画は俺も気になっていた。水原先輩が言わなくても、俺が提案していただろう。


「面白そう」

「うん」

「絵もとても綺麗だわ」


 三人もお気に召したご様子。


「全会一致のようですね」


 しかし綾先輩は首を横に振る。


「いいや。まだ一人いるぞ」


 綾先輩と一緒に水原先輩に視線を向けた。


「なっ……なによ」


 ジーッと見つめ続けると、顔がだんだん赤くなっていく。


「……み……見たい、わよ」


 よし! これで全会一致だ。


「映画見るならやっぱりポップコーンと飲み物ですよね。俺買ってきます」

「待て、一人では流石に六人分は持てない。私も行く」

「私も、行く。自分で、選び、たい」


 とのことで、綾先輩と小毬先輩がお供してくれることに。


「じゃあ私達がチケット買っておくから後で割り勘ね。私お茶」

「私は紅茶にしようかしら」

「あたしコーラね」


 雫、姫華先輩、水原先輩の三人がチケットを買うために列に並ぶ。

 俺達もポップコーンを買いに行くが、休日の映画館は人が多い。チケット売り場もなかなか。

 どちらも少し買うのに時間がかかりそうだ。


「小毬は何にするんだ?」

「オレンジ」

「廉君は?」

「俺はそうですね……」


 並びながらでもメニューが決められるように高い位置に設置されたメニュー表を確認。


「サイダーにしましょうか」

「そうか……私もサイダーにしようかな」


 へぇー、意外と綾先輩もそういう飲み物を飲むんだ。

 あ、でもコーヒーもいいかも。


「でもコーヒーの方が……」

「廉君もか。わたしもそれで迷ってるんだよ」


 そうか、綾先輩もか……うん……。


「……水に――」

「奇遇だな! 私も水にしようと思ってたんだ!」

「メニュー表見て決めませんか?」


 絶対メニュー表見てないですよね。どこにも水は表記されていないですよ。


「綾先輩。今度は何を企んでいるんですか」

「何も企んではいない。ただ、同じ飲み物を頼んでしまうと間違って入れ替わってしなうなー、間接キスしてしまうなー、とは思ってはいるが」


 世間一般の人は同じ飲み物を頼んだだけで間接キスまで考慮しません。


「飲み物、決まった、の?」


 小毬先輩が俺達二人を見つめている。


「……一旦ポップコーンの味を決めましょう」

「いいだろう」


 飲み物の件は置いておいて、ポップコーンをどうするか。


「Lサイズ3個でいいと思うんですけど、味はどうします?」

「全部同じでいいんじゃないか?」


 であればここは定番の塩がいいかな。


「じゃあ、し――」

「キャラメル」


 俺が言う前に小毬先輩が希望を出す。


「え、キャラメルですか? 塩の方――」

「キャラメル」

「あの、小毬せん――」

「キャラメル」

「いや、俺のい――」

「キャラメル」

「こ――」

「キャ・ラ・メ・ル」


 誰が何と言おうとキャラメルだ。譲らん。

 そう言いたげに無表情のまま俺を睨みつける小毬先輩。とても怖いです。


「……キャラメルで」

「うん。キャラメル、甘くて、おいしい」


 俺達の番なんで、もういいですそれで。


「いらっしゃいませ。ご注文をお願いします」


 とりあえず決まっているものを全て頼み、先に綾先輩に飲み物を頼ませる。


「むぅ……コーヒーでお願いします」


 多少不機嫌になりながらも注文を終えたので俺はサイダーを頼む。

 代金と引き換えに商品を受け取り、雫たちの元に。

 向こうも無事にチケットが買えたようである。


「綾ちゃん達も買えたんでね。はい、これチケット」


 雫に三枚渡され、その中から適当に一枚引く。

 俺達は買ったものを三人に渡した。


「もうすぐ始まっちゃう。みんな急ぐよ」


 水原先輩が先陣を切り、入り口にいる店員にチケットを渡し、すんなりと通る。


「ちょっと待ってください」


 俺が通り過ぎてすぐに店員が俺を呼び止めた。


「買うチケットをお間違いではないでしょうか?」


 え……もしかして、雫達が少しでも安くしようと子供料金でチケットを買ったのか?

 いや、そんなことするはずがない。

 念のためにすでに通り過ぎている雫、水原先輩、姫華先輩にアイコンタクトをとるが、全員心当たりがない様子で首を横に振っていた。


「俺達はちゃんと大人の料金を払っているんですが」


 と、正直に答える。しかし店員は不思議そうな顔をしていた。


「あ、いえ。こちらのお子さんも大人の料金で支払われているので、手違いで買ってしまったのではと思いまして」


 こちらって……あっ。

 どうしよう。小毬先輩がものすっごい不機嫌そう。


「よろしければ、()()料金に変更しましょうか?」


 違うんです店員さん! その人れっきとした学生なんです! だから子供って言わないで!


「……あの、とても言いづらいんですが……その人、俺より年上です」

「はい?」


 まだ信じていないようなので、痺れを切らした小毬先輩が、学生証を取り出して店員につきつける。


「これで満足?」

「しっ! 失礼しました!」


 声がワントーン低い小毬先輩にビビったのか深々と頭を下げる店員。

 無事(?)に通ることが出来た。のだが……。


「なに廉。私の顔に何かついてる? それとも子供に間違えたまま通れば安くなったのにとか思ってる?」


 小毬先輩が滅茶苦茶不機嫌なんですけど!


「こ、小毬さん。機嫌直してください」


 雫が宥めるが、小毬先輩の矛先は雫に向けられる。


「じゃあ雫は他人にまな板だの壁だの平地だの高反発だの言われても許すんだね」

「そ、そこまで小さくありませんよ!」


 このままだと二次災害が広がってしまう。

 何とかして止めないと。


「小毬先輩。あの、後でクレープ奢るんで機嫌直してください」

「……ごめん、雫。言い過ぎた」


 小毬先輩が落ち着いたことで一安心。


「さぁ、早く行きましょう。もう映画が始まりますよ」


 気を取り直して指定されたスクリーンに足を運ぶ。

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