青春の汗と、欲望乱れる球技大会(蒼白)16
「20対16で一組の勝利。礼!」
拮抗した試合に観戦者は大いに盛り上がり、両チームに拍手が送られる。
「次に優勝決定戦を行います」
いよいよ俺達の番だ。
「やっほー。応援に来たよ」
のんきな花田さんが約束通り友人を連れて応援に駆け付けてくれた。
「あ、廉達いました」
同じタイミングで生徒会も集合する。
「雫さんも応援に来たんだ」
「花田さん。ええ、生徒会の仲間が出るんだから応援しなくちゃ」
と、二人は軽く話を交わす。
「お前ら頑張れよ! カッコ悪い姿見せたら殴る!」
「もう! たつきちゃんは言葉が粗いんだから。ごめんね。でもカッコいいところ見せてね」
「そうそう。男の子なんだから女の子にカッコいいところ見せなきゃ」
「「「それはもちろん!」」」
あー、あんなにもだらしない顔しちゃって。まぁあんな話をしたんだし、気の抜けたかけ声になってしまったが少なからず心に引っ掛かりみたいなものがあるはずだ。
これで少しは和らいだのかな。
「廉、いよいよ決勝ね」
生徒会を引きつれて声をかけてくる雫。
「あぁ!」
「気合十分。といったところだな」
「決勝ですから。全力を出し切らないと」
「そうか。なら生徒会長として気合を注入しなければな。さ、抱よ――」
「あ・や・ちゃ・ん?」
雫の威圧で前に出そうとしていた手をスッと下ろす綾先輩。
「応援してるわよ廉君。頑張って」
「ありがとうござます姫華先輩」
「それと……」
不意に俺の右手を生徒会以外が気づかないようにそっと両手で包み込む。
「私なりの気合ちゅ・う・にゅ・う。ふふっ」
そう言ってウィンクする姫華先輩。
それを涙目で悔しそうに見つめる綾先輩。
そんな顔で俺を見ないでくださいよ。
「……手を握るくらいなら」
晴れた日の太陽のような笑顔で姫華先輩と入れ替わり、他の生徒に見えないように手を握る。
とりあえず満足した様子ですぐに手を離す。
「……ふぁいとー」
小さな拳を俺に向ける小鞠先輩。実に微笑ましい。
「もし試合で活躍しなかったら廉のこと『タマナシ』って呼ぶことにするから。あと物理的にも」
小鞠先輩なりの応援なんだろう。流石に本気じゃない。だから小鞠先輩が手を開いたり閉じたりして指の運動させながら俺の股間あたりに殺意を向けているのは気のせいなんだ。
「あんた絶対に勝ちなさいよ! 勝たなきゃ……その……なんかあるから!」
なんかってなんですか。小鞠先輩に玉を握り潰される以上の恐怖はないと思いますよ。
「じゃあ勝ったら何かご褒美あるんですか?」
「え、いや、その……」
ちょっとした悪戯心で尋ねると、アタフタする水原先輩。
可愛らしいが、これ以上は可哀想なのでやめておこう。
「冗談ですよ冗談」
「そうよね。ご、ご褒美があった方が頑張れるのよね。男の子好きそうなものって……」
あれ? 聞こえてないの? 冗談ですよ? ちゃんと聞いてくださいよ。
胸あたりに手を置きながら考え込んでるみたいですけど。まさか……ね。
いや待ってください水原。なんで自分の胸に視線を落として決意した目をしてるんですか?
「勝ったらあたしの胸揉んでいいよ」
「いやいやいやいや、何がどうなってそうなるんですか」
「男の子はおっぱい好きじゃん!」
否定しきれないですが、それとこれとは別だと思います。
「ならば私も一肌脱ごう。廉君が勝ったら私の胸も揉んでいいぞ!」
綾先輩も何さらっと混じってるんですか!
「そんなことしなくてもいいですって!」
「あ、あたしの胸じゃ満足出来ないの!?」
そうじゃないです!
「廉君はお尻の方が好きなんだな」
それも違います!
「はいはい、御二方。それ以上は廉が困りますからね」
雫に助けられたが、試合前でどっと疲れたな。
「ありがとう雫」
「大したことじゃないわよ。でも、水原先輩の申し出ちょっといいなって思ったでしょ。いやらしい。もしかして私もそんな目で」
ジト目でそんなことを言う雫。
俺で遊んでるだけなのだろうが、ここで否定しておかないとスケベの称号をものにしてしまう。
それは避けたい。
「そ、そんなことないぞ! 雫をそんな目で見たことなんて一度もない!」
俺がハッキリと言った途端だった。
周りの空気が少し冷たくなった気がする。
「……ふふっ。そうよねー。廉がそんな目で見るわけないもんねー。山があるのに平地なんて見る価値すらないよねー」
あの、雫さん? 目元あたりがすごーく松本先生に似ているんですけど、怒ってます? 怒ってますよね? なんでですか?
「二組と三組の選手はコートに集まってください」
「あ、俺もう行きますね」
グットタイミングの招集で足早に離れる。
後方では「なんで私は違うの? お姉ちゃんも綾ちゃんもたわわに実ってるのに。そっかまだ成長期じゃないのねふふふふふふふふふふ」と、雫の不気味な笑い声が聞こえた。
試合中には戻っていてほしいものだが。
「廉、激励は受けれたか?」
「まぁ、一応」
卓也から視線を逸らして隣に立ち、目の前の相手と対面する。
廊下にいたあの五人が余裕そうな笑みを浮かべていた。
「決勝戦、二組対三組の試合を行います。お互いに、礼!」
一斉に「お願いします!」と言い、礼をしてすぐにジャンプボールの準備を始める。
無論、ここは一番背の高い卓也に任せることに。
相手は卓也と同じくらいの身長。ジャンプボールは五分五分と言ったところか。
二人がセンターサークルで腰をかがめたのを確認すると、ボールを柔らかく真上へと放つ。
高々と上がったボールが最高点に到達し、自由落下を始めると同時に二人はボールに向かって跳ぶ。
先に手が当たったのは卓也だった。
弾かれたボールは真っ直ぐ祐太の元へ。
だけどさっきのジャンプボール、不自然だ。殆ど跳躍のタイミングは一緒だったのに目に見えて負けていた。まるでわざと負けたような――
「ナイス卓也! 一気に攻めるぞ!」
「待て! ドリブルはするな!」
俺の助言は数秒遅く、すでに祐太がドリブルを始めてしまった。
低くジャンプした分卓也よりも先に着地をしていた相手が祐太に向かってすでに走り出しており、ボールが二回つかれる前にはすでに盗まれていた。
対応が遅れた俺達に止めるすべはなく、相手はそのまま一人でシュートを決める。
「三島君! 守谷君! ファイト!」
「ま、まだまだ始まったばっかりだよ! 頑張って!」
「取られたら取り返せ!」
「ふぁ、ふぁいとー!」
花田さん達からの声援が送られる。が、俺達はあまりに早すぎる失点にただ呆然としていた。
「す、すまん……」
いきなり自分のせいで点を取られたことでへこんでいる裕太。
だがあの動きは狙った動きだ。
「ジャンプボールの時、向こうはわざと卓也に弾かせてた。じゃなきゃあんなすぐに対応出来るわけない。気にするな」
とは言ったもののいきなり向こうのペースはまずい。
流れを掴むために最初のゴールは決めたかった。
しかしもう過ぎてしまったことだからどうしようもない。
今出来るのは気持ちを入れ替えることだ。
両手で頬を叩き、気合いを入れる。
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