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青春の汗と、欲望乱れる球技大会(蒼白)12

ようやく球技大会開始。

 球技大会当日。ようやくこの日を迎えた。

 昨日の厳しい練習に耐えた俺達だが、松本先生の言っていた通り誰も筋肉痛にはなっておらず、ベストコンディションと言える。

 だが俺は緊張していた。

 本番を迎えたから緊張しているのではなく、体操服姿の全校生徒の前に立っているからだ。


「廉、緊張しなくてもいいのよ。話すのは綾ちゃんと姫華先輩だけで、私達は飾りみたいなものだから」


 隣の雫が俺の緊張をほぐそうとそう囁く。

 現在開会式の最中。そして俺達生徒会も壇上に上がっており、姫華先輩が喋っている。


「以上で終わります。次は生徒会長からの開会の宣言です」


 姫華先輩と変わり綾先輩が全校生徒マイクの前へ。


「皆、この日のために努力した者もいるだろう。今日は存分に練習の成果を発揮してくれ。ではここに球技大会の開会を宣言する! 全力で勝利をもぎ取れ!」


 生徒が一斉に歓声を上げる。

 鳴りやまない内に俺達は降壇した。


「やる気充分のようだな」

「女神様に目の前で勝てって言われたんだもん。みんなはりきってるのよ。流石綾ちゃん。みんな釘付けね」

「でも今日は、みんなの視線が、こっちに向く回数が、多かった、気がする」

「ふふ、それはきっと廉君がいたからよ。やったわね廉君、注目の的よ」

「手元に弓と矢があればすぐにでもその的を射抜きそうなほどの視線でしたけどね」


 無事に開会式が終わり、ようやく緊張の原因がなくなったことに安堵しながら解散していく生徒の波に潜り込む。


「廉、こっちだ」


 すぐに卓也達の元に赴き、この後の予定を整理する。


「俺達はすぐの試合だっけ?」

「そのはずだけど」


 念のため俺は今日のプログラムが印字された紙を見る。

 一年生は6クラスあり、バスケはそれぞれ1チーム作ることになっていた。つまりバスケは6チームで争うことになる。

 しかし時間の関係上10分の1クォーターのみの試合となっていた。

 そして試合の流れはまず3クラスずつで総当たり戦をして、そしてそれぞれの1位同士と2位同士が対戦を行い順位をつける。

 仮に総当たり戦で戦績が同じだった場合は得点と失点から順位を決めるとのこと。

 そんで知りたかった試合順だが……俺達が最初でしかも連続か。


「やっぱり俺達がすぐみたいだな……それで剛と隆志。祐太はなんでそんなに暗いんだ?」


 目に見えて落ち込んでいる祐太。なんとなく想像は出来ているけど。


「ここって体育館二つあるだろ?」

「ここ以外に基本部活が使ってる体育館があるんだっけ」

「そう。そんで第一体育館は男子しか使わないから少しショックを受けてるらしい」


 本当にくだらないことで気分を落とすなこいつ。

 それにこいつあのこと忘れてるんだろうな。


「祐太」

「廉、俺はダメだ。女子がいないなんて俺はなんのために練習してきたんだ」


 勝つためだろ。


「お前忘れてるかもしれんが……俺達のために別クラスの女子が応援にくるだろ」

「何浮かない顔してんだお前ら! 早く試合の準備しようぜ!」


 本当に単純だこいつ。ゆえに扱いやすい。


「バスケットに参加するクラスは速やかに壇上前に集合してください」


 招集をかける体育委員長の声が聞こえ、バスケット参加者はぞろぞろと壇上に集まった。


「試合のルールですが――」


 簡単に一通り体育委員から試合の説明を受けた俺達は試合の準備をする。

 すると視界の端で雫の姿を捉えた。

 俺に気がついた雫が近くに寄ってくる。


「体調はどう?」

「バッチリ。雫はクラスの応援か?」

「えっと……まぁそんな感じなんだけど……なんと言えばいいのかな」

「三組はコート内に来てください」


 なんだかはっきりとしない受け答えに疑問が浮かぶが、呼ばれてしまったので急いでコート内に。

 対戦相手は五組。雫のクラスだ。

 結束の証なのか一色ずつ赤、青、黄色、緑、紫のリストバンドを付けていた。


「ふふっ、お前達は残念だ。いきなり俺達と対戦することになるんだからな」


 このチームのリーダーなのか赤のリストバンドをした奴が微笑している。


「それはどうかな。俺達だってそれなりにやれるぞ」


 反論すると相手は鼻で笑う。


「何も知らないようだな。俺達は伝説の世代と呼ばれてるんだ」


 な、なんだと!?


「俺は型にはまらない変幻自在のプレーで圧倒」

「3Pラインから内側は俺の守備範囲」

「相手のプレーを100%コピーできるっす」

「オールレンジでシュートが入るのだよ」

「そして俺は相手の筋肉の動きや呼吸で相手の先読みが出来る!」

「「「「「という設定!!」」」」」

「卓也。全員お前のところの部員だろ」

「よくわかったな」


 雫が言葉を濁した意味がよくわかったよ。

 顔を真っ赤にして顔を押さえている雫の姿がよく見える。

 多分だがこの試合は普通に勝てるだろう。


「そして!」


 まだ何かあるのかよ。


「俺達には幻の六人目がいる!」


 そう言ってコート外に指を差すがそれらしき人物はどこにもいない。代わりに黒いリストバンドが無造作に置かれている。


「なぁ。たしか今回はどのクラスもちょうど五人でバスケに参加してるよな? なら六人目はいないはずだけど」


 その通りだ祐太。だから幻の(存在しない)六人目なんだろ。


「……試合始めるんだけど」


 教師が困惑しながらも試合を進めようとしている。

 とりあえず言いたいことが言えて満足したのか素直に配置につく。

 俺達も卓也にジャンプボールを任せて自分のポジションについた。



 結果から言おう。ダブルスコアの大勝利だ。


「やっぱ負けたかー」「流石にネタ過ぎたな」


 特に負けたからと言って悔しがる様子もないことから本当にネタ枠の出場だったらしい。

 雫はこの試合後すぐに体育館を去った。

 もう自分の番が来るのか、はたまた恥ずかしくてその場を去ったのかは不明。

 その後の試合は相手チームの中に現役が二人いたが、前の試合同様に俺と卓也が基本的に点を取りにいき、他の三人がアシストしながら隙あらばシュートといった流れで勝利を掴んだ。

 午前の試合をすべて終え、総当たり戦で一位が確定した俺達は一足先に体育館を出て他を見にいくことにした。

 まずは男子ドッジボールの見に行ったが、決勝に駒を進められなかった。

 後は頼んだとクラス全員から託されながら花田さんのいるテニスコートに。

 流石に応援しにくると言ってくれたんだから俺も少しは応援しよう。


「……あれ花田さんじゃないか?」


 コートを見渡すがどこにも花田さんの姿がない。


「どこにもいないぞ」

「そっちじゃなくて」


 卓也が差しているのはテニスコートではなかった一体どこを指しているんだと思いながら指差す先を見ると、鼻にティッシュを詰めてベンチで横たわる花田さんがいた。


「……どうしたらこうなるんだ」

「さぁ?」


 もしかしたらボールをぶつけたのかと思い少し心配はしているがおそらく……


「花田さん」


 フェンス越しから話しかけると花田さんはゆっくりと起き上がる。


「あ、三島君と守谷君達。どうしたの?」

「それはこっちのセリフなんだけど。なんでベンチに横たわってるんだ」

「ああ、少し前通りかかった二人組の男子が転んだんだけど、まるで攻めが受けを押し倒すようだったから。不意だったからびっくりしちゃった」


 花田さんが鼻血を吹き出したことで君以上に周りがびっくりしたと思うな。


「それで試合はどうなったの?」


 おぉ……花田さんの言動は全スルーとか、流石卓也だな。


「お恥ずかしい話まだ一勝も出来てません。ちなみに決勝には絶対に出れなかったり」


 眉をハの字に垂らして笑う花田さん。


「そっちはどうだったの?」

「全勝したよ」

「ということは決勝!? よかった。午後は応援に行くね! 真由達もちゃんと来るから君達も頑張ってね」

「も、もちろん!」


 他の三人にも声をかけ、さりげなくやる気を引き出す。

 こちらとしては有難い。


「そういえばその人達はどこにいるんだ? 少しは応援した方がいいだろうし」

「教えるのはいいけど、守谷君は生徒会の応援に行った方がいいと思うよ?」


 うっ……たしかに生徒会の仲間として応援しに行く必要があるな。

 でもただでさえ広いこの学校で全員分はキツイ。

 それにさっと見て帰るのを応援とは言いたくない。


「お前は生徒会の応援に行け。俺達が花田さんの応援や花田さんの友達の応援に行くから」

「……悪いな」


 言葉に甘えて小走りで第二体育館に向かう。


読んでくださりありがとうございます。

感想・誤字等ありましたら気軽に書いてください。

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