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青春の汗と、欲望乱れる球技大会(蒼白)9

 球技大会前日。

 昨日と同じ時間同じ場所に全員集合している。

 さぁて、はりきって練習するぞ!


「……おい、廉」


 今日も基礎練習をするかな。


「なぁなぁ、廉」


 でも、少し本格的な練習がしたいな。


「こっちを向いてくれ廉」


 そうだ! 速攻の練習をしよう!


「廉、花田さん達が応援に来てくれたみたい。ほら、手を振ってる」


 フェンス越しから手を振っている花田さんと友人達。

 みんな私服を着ているところを見ると、応援のために来てくれたようだ。金髪の子だけは昨日と同じようなジャージを着ている。

 だけど、そんな些細ことはどうでもいいんだ。

 ゆっくりと視線を横にズラす。


「廉くんの運動着姿はたまらんな」

「綾ちゃん、自重」

「あらあら」

「ポテチ、うまし」

「なんであたしまで」

「おねえちゃん一人じゃ寂しいから」

「あ、守谷君のところの大家さんも来てたんですか?」

「あら、この前の。ええ、守谷君が頑張ってるって聞いて応援したくて」


 なんで応援する人がこんなにもいるんだよ!?

 生徒会全員集合だし、美鶴さんも来てるし。

 なにより驚いてることは大家さんいることだ。


「まさか生徒会まで来るとは。でも、あと二人は誰だ? 剛か隆志の姉ちゃんか何かか?」


 当然二人は首を振るわけで。


「なら卓也か廉?」


 そして自然と同じ質問をしてくるわけで。


「いや、俺じゃないな。でも片方は見たことあるような……」


 そりゃ一人は俺のバイト先の先輩だからね。


「じゃあ廉か?」

「さー知らないな」


 面倒臭いことになりそうだし、ここはしらを切ろう。


「れっちゃん頑張ってー。おねえちゃんが応援してるよー」

「守谷君、怪我しちゃダメよー」


 よりにもよって、なんで今ピンポイントで二人が声をかけるかな!?


「……お前の関係者だろ。てか、お前に姉っていたのか」

「違う。バイト先の先輩」

「でも、おねえちゃんって自分で言ってなかったか?」


 あの人の妄言だから。でも事情を説明するとややこしくなるからあえてしない。


「あぁ、だから見覚えがあるのか。ならもう一人のお姉さんは?」

「あれは……大家さん」

「へぇー、松本先生よりも若いだろうに大家だなんて。大変そうだな」


 どうやら裕太は勘違いしているようだ。


「大家さんは30代だぞ」

「え!? 松本先生よりも年上なのか!?」


 やっぱそこに驚くよな。

 でも、驚くのはここまでにしてほしいんだ。

 このままだと練習が進まない。


「ほら、もう練習始めるぞ」


 来た理由は後で聞くとして、練習を無理矢理始める。

 午前は基礎的なことの復習しながら練習を進めた。

 みんなそれなりに上達しているようなので、午後は実践的なことをしようか。


「よし、休憩にするか」


 少し息が上がっている四人を休ませる。


「喉乾いたー、飲みもん」


 相当喉が渇いているのか、わざわざ声に出しながら鞄の中からペットボトルを取り出す。


「ん……あ、もう空っぽだ」


 しかし、欲求を満たすほど入っていなかったようだ。


「誰か飲みものあるか?」


 みんな持参のペットボトルを確認するが、どれも空だったり、ほんの数口でなくなる程度にしか残っていない。

 俺も少し前の休憩でほとんど飲みつくしてしまっている。

 つまり、買いに行かないといけないわけで。


「はぁ……俺が買ってくるからお前達は待ってろ」

「え、それは悪いし。俺も一緒にーー」

「別にぞろぞろ行く必要はないし、卓也も休んでろ。俺がみんなの分買ってくるから」


 と、言って自動販売機に向かったのはいいけど。

 一番近くの自動販売機でも少し歩かなければならない。

 俺も疲れてるので、思わずため息が漏れる。

 少し歩いて自動販売機に到着。

 疲れながらもここまで買いに来たんだ。

 渇いた喉を潤せる快感をご褒美としてもらおう。

 右ポケットに入れてある財布を掴ーー財布をつか……ははっ、きっと左ポケットに入れたんだな。

 左ポケットを試しに叩くと平手の感触がダイレクトに太ももに伝わってくる。

 その瞬間、俺は青ざめた。


「……しまった」


 財布を鞄から抜き取るの忘れてた。

 また取りに戻らないといけないのか。


「廉君どうしたんだ?」

「飲みもの買いに来たのに財布持ってくるの忘れたんです」

「それは困ったな」

「ええ……でもそれ以上に困ったことがあるんです」

「何? 彼氏が困ってるんだ。彼女である私が助けてあげよう。それで、困っていることとは?」

「自称彼女が俺の匂いを現在進行形で堪能していることなんですが」


 いつのまにか背後にいた綾先輩の鼻息やら吐息がさっきから後頭部にかかってるんですよ。


「そう言うが廉君。廉君の匂いを堪能しているのは妻である私しかいないぞ?」


 だからあなたのことなんですって。

 あとさりげなく自分が当てはまらないように「彼女」をランクアップさせない。

 結局それも自称なんですから。


「はい、綾ちゃん離れる」


 よかった。ストッパー役の雫もいたのか。

 背後の気配が遠ざかってから後ろを振り向く。

 綾先輩や雫だけではなく、他の生徒会メンバーも一緒にいる。


「生徒会全員集合ですか」

「あらあら、そんな嬉しそうな顔しちゃって」


 この顔のどこが嬉しそうなんですか。むしろ姫華先輩が喜んでますよね。

 小鞠先輩は俺を無視してお菓子の自動販売機でポテチ買ってるし。


「なんでここにいるんですか」

「廉を呼びに来たからよ。ちょうどお昼だし」


 違うんだ雫。俺が聞きたいのはそういうことじゃない。


「なんで花村公園にいるかって聞きたいんだ」

「もちろん廉君を視姦ーー応援だ!」

「私は綾ちゃんの見張り」

「あ、あたしは、美鶴ねえに誘われて」

「廉君が苦しんでるところが見たくて」

「そんな姫華のポテチに釣られて」


 はい、二番目と三番目の人以外。あとで説教させてください。


「はぁー……もういいです。応援に来てくれた人に何も言いませんけど、絶対に変なことしないでくださいね」

「もちろんだ! それで廉君は飲みものが買えなくて困っているんだろ? 私が奢ろう」

「それは流石に」


 俺が財布を忘れたのが原因だし、そもそも俺が取りに戻れば済む話だ。


「なに、私が奢ると言ってはいるが実際は杏花姉さんから預かったお金で買うだけだ」


 それならいい……のか?

 俺の横を通り過ぎ、自動販売機販売機に紙を投入する綾先輩を見守る。

 しかし、投入した紙は吐き出されてしまう。


「……おっと、私としたことが。間違って違うものを入れてしまった。うっかりうっかり」

「まずは撮られた覚えのない俺の横顔の写真の説明を求めたいんですが」

「はい、没収」

「なっ!?」


 綾先輩よりも先に写真を抜き出して破る雫。

 消してくれるのはありがたいが、被写体本人の目の前で破り捨てる必要ないんじゃないかな?


「れ、廉君の写真が……あと九十九枚になってしまった」


 待ってまだ持ってるの!?


「廉は飲みものなにがいいの?」

「え……ス、スポーツドリンクで」


 雫が代わりに五人分の飲みものを買うと、俺に全て渡す。

 さらに七人分の飲みものを買い、他の生徒会メンバーに渡す。


「綾ちゃんは何がいいの?」

「廉君の飲みかけもらうから大丈夫」

「了解。お茶ね」


 もう慣れてしまった雫は綾先輩の意見など無視してお茶を買い、綾先輩に押し付ける。


「いや、だから私は廉君のーー」

「他の人はどうしますか?」


 これ以上綾先輩の要求など耳に入れようとしない雫は他の三人に話しかける。


「私は紅茶を貰おうかしら」

「あたしはお茶」

「オレンジジュース」


 注文通りに飲みものを買って、それぞれに渡す。


「じゃあ、みんなが待ってるから早く行きましょうか。廉も来て」


 雫を先頭にぞろぞろと歩いてく。俺はみんなの後についていった。

読んでくださりありがとうございます。

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