表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
42/109

青春の汗と、欲望乱れる球技大会(蒼白)1

欲望だらけの球技大会編、開始。

 六月中旬。いつもと変わらない教室の風景……とは言えなかった。

 クラスが妙にそわそわしているのは気のせいではない。


「お前ら、もうすぐ何があるか分かってるな」


 教壇に立つ松本先生が隊を率いる司令官の如く俺達を見つめる。

 松本先生も何故か気合が入っていた。

 いや、理由は分かってる。

 俺だってそわそわしてるんだ。高校生活の最初のイベントを前に。


「来週の月曜日……つまり球技大会だ! 全力で勝利をもぎ取れ!」


 クラス全員が「おーっ!」と叫び気合十分。

 球技大会。数少ないクラス対抗の行事。

 賞品がもらえるわけではないが、勝負事に燃えずにはいられず、みんな時間がある時には練習をしていた。

 さらにこの球技大会は、男子達が女子達へアピール出来る数少ないチャンス。

 活躍出来れば、女子への好感度は爆上がり。

 そんな下心を持つ男子は少なくない。

 もちろん、俺と卓也はその部類には入らないけど。


「競技は前回で決めた通りだ。放課後は自由に練習する事も出来る。怪我には注意するように。では解散!」


 ホームルームが終わると同時に、俺の方へと近づくクラスメイトが一人。

 制服を少し着崩し、雑誌のモデルを真似たような髪型をした眼鏡男子だった。


「よっ、廉。今日は分かってるよな」


 若干かっこつけながら言われるが、どうしてもこいつの顔を見ると、図書館で鼻血垂れ流した姿を思い出してしまう。


「分かってるよ裕太ゆうた


 田中裕太。入試組の俺と卓也とは違い、大部分を占めるエスカレーター組の一人。

 こいつのおかげで俺達入試組が、すんなりと輪の中に入れたと言っても過言ではない。

 ただ、欠点として調子に乗りやすく、モテたい気持ちが先行してるために彼女が出来なかったりする。

 黙ってれば告白されても不思議ではないのだが、それだけ口を開けば残念さが増すのだ。


「なんだよ、そのやる気のない返事は。このイベントの重要性が分かってないな。女子への絶好のアピールチャンス! 結果によってはその日の内に彼女が!」


 これだもの。内容だったり、ゲスな笑いで全てが台無しだ。


「なんだ? そんなに俺を見つめて」

「いや、お前がモテる秘策を思いついただけだ」

「詳しく!」


 凄まじい食いつきっぷりだな。


「まず口を閉じて、十分間息を止めろ。きっと女子達が涙ながらに『綺麗な顔してるね』って言ってくれるぞ」

「ねぇ、それ死んでるよね?」


 だって前に黙ってればモテるかもって言ったのに、十秒も持たずにギブアップしたじゃん。

 だったら一生無言にさせるしかないと思って。


「まぁまぁ、二人共。今はそんな事どうでもいいだろ」


 椅子を半回転させて、前の席に座っていると卓也も混ざる。

 ただ、この話をどうでもいいとばっさり切り捨ててしまった事で、裕太の気に触ってしまったらしい。


「お前ら二人はいいよな! 卓也は何もしなくてもモテるし、廉なんかあの美少女だらけの生徒会に入ったんだからな! 生徒会長はかっこよくて綺麗。副会長はザ・お嬢様って感じで可憐。書記さんは年上なのにロリロリしてて可愛い。会計さんは真面目だけど、たまに見せる笑顔がグッとくる。そして、最近生徒会で手伝ってる先輩も他の四人に劣らず美少女なんだろ! 俺も混ぜろ!」

「お前気持ち悪いな」


 おっと本音が。


「お前気持ち悪いな」

「なんで今二回言ったんだよ!?」


 大事な事なので。


「んで、そんな二人なのに、なんで手を出せねえ!」

「彼女(ギャルゲー)いるし」

「作る気なし」

「なんでこの二人なんだよ!」


 羨ましさを超えて嫉妬が滲み出ている裕太。

 もう手遅れだが、早くやめた方がいいぞ。

 球技大会で補えないほど、クラスの女子の好感度がただ下りだ。

 中にはゴミを見るような目をしてるぞ。


「もういい! 絶対活躍して、彼女作ってやる!」


 だから手遅れだって。


「なぁ裕太。俺と廉は入試で入ったけど、ほとんどはエスカレーター式でこの学校に入ったんだから、球技大会の結果どうこうで彼女が出来るものなのか?」


 それは俺も思った。

 俺達みたいな入試組の新参者なら活躍で簡単に好感度は上がりそうなものだが、中学校から顔を知っている奴なら、そんなに関係ない気がするが。

 だがそんな考えは間違いとばかりに、舌で音を鳴らし、人差し指を立てて左右に揺らす。

 こんな事をかっこつけて平然とするからモテないんだよ。


「分かってないなー。知っているからこそ、思っていた以上に活躍して『あれ? あいつって……あんなにかっこよかったの? (トゥクン)』みたいな事になるんだよ」


 真剣な顔でトゥクンを口で言う奴初めて見たよ。思っていた以上に気持ち悪いな。

 あと、クラスの女子に丸聞こえ。


「実際これで何組もカップルが出来たって話だ。だから負けてもいいから活躍したい!」


 クラス的には活躍しなくてもいいから勝ってほしいな。


「ちゃんと勝つつもりでいくからな」

「分かってるって、だからお前らをチームに入れたんだよ」


 裕太と俺と卓也。そして他に二人を加えての五人組チーム。

 つまり五対五の球技と言えば、バスケットだ。


「運動神経抜群の卓也に、経験者の廉。二人がいてくれればなんとかなりそうだ」


 経験者ではあるが、部活でやっていた程度だ。

 それに部活も中二の時に辞めてるし。


「なんとかって言っても、俺達のクラスにバスケ部がいないのは致命的じゃないのか?」

「もう少し夢を見させてやれ」


 耳打ちで伝える卓也に、そう返した。


「今日は俺達がコートを使える番だ。早速体育館にーー」

「あ、その前に生徒会に連絡しないと」


 アルバイトや生徒会の仕事もあり、俺はあまり練習に参加出来ていなかったが、今日は俺達のクラスが唯一体育館を使える日だ。

 俺だって負けたくはない。今日は休ませてもらうために雫にメールを送ろうと文面を考えていると、


「廉、いる?」


 ちょうど送り先の雫が俺を訪ねてきた。


「あ、会計さんだ」

「か、かかかか、会計さん!?」


 いつも通りの卓也。一方接点があまりない裕太だが、そこまで戸惑わなくてもいいのでは。


「こっちだ」


 俺に気づき、教室に入ってきた。


「雫、ちょうどよかった。今日は球技大会に向けて練習するつもりだから、生徒会には出られない」

「分かってるわよ。生徒会に参加しなくてもいいって事を伝えに来たの。それと、今日の練習に生徒会もお邪魔させてもらうわよ」

「なんでまた」


 呆れた様子でため息を吐かれてしまった。


「前から球技大会に向けて練習してる生徒会の写真撮ってたでしょ? 今日は廉の番」


 ああ、そうだった。練習に参加出来なかったのもそのせいだった。


「一番最後だから遅くなるけど、大丈夫?」


 俺は横目で卓也と裕太を見る。

 卓也は微笑み返し、裕太は歯を見せてサムズアップをしていた。


「大丈夫そうだ」

「よかった。二人もごめんね」


 そう言って裕太と卓也に謝罪すると、卓也は「大丈夫」と短く返す。

 しかし裕太は、


「だ、だだ、ふへ、大丈ふぇふ、ぶ、です……へ、へへ」


 最高に締まりのない顔で、もじもじしながらニヤニヤ笑っていた。

 雫もこれには苦笑いを浮かべる。


「じ、じゃあ、私はこれで」


 雫は足早に教室を去った


「もう少しお話ししたかったのに。ハッ! 俺のキリッとした顔を見て恥ずかしがったのか!? ふふっ、どうしたらいいんだ」


 とりあえず男子トイレの鏡を見てこい。キリッとした顔なんてどこにもないから。


「あ! 二人にも伝えておかないと」


 朗報だとばかりに、他の二人に報告をしに行く裕太。

 裕太からの伝達に興奮を抑えられず、二人もテンションが上がっている。


「……先行くか」

「あ、飲み物買いに行っていいか?」


 盛り上がっている三人をよそに、俺達は教室を出た。


「まったく、裕太は調子のいい奴だな」

「とは言いつつ、嫌いじゃないだろ?」


 当たり前だ。嫌いだったら絡まれた時点で席を外してるよ。


「出来れば純粋に、バスケに取り組んでほしいもんだけど」

「確かに動機が不純だけど。やる気があるだけマシだと思おうぜ。あ、結構並んでるな」


 自動販売機に着き、いつも以上に並ぶ列に並んだ。

 俺と卓也の番になり、スポーツドリンクを一本ずつ買って、更衣室に向かった。

読んでくださり、ありがとうございます。

感想・誤字などありましたら気軽に書いてください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ