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高校生で、一人暮らししている俺のアルバイト生活(疲弊)2

 あれから一時間。

 平和に時間が進み今はレジの番をしている。

 それにしてもやる事がない。

 滝本さんも戻って来たが特に指示もなく、ただレジの前で立っているだけなので時間が進むのが遅く感じてしまう。

 ちょうどよく誰か本を探してほしいと頼んでくれないものか。それか滝本さんから新しい仕事が舞い込んでこないものか。


「あの……」


 レジカウンターからちょこんと顔を出した小学生ぐらいの子供が……あ、これ小鞠先輩だ。


「小鞠先輩!?」

「あ、廉……ここで、アルバイト、してる、の?」


 最後の「の?」で小首傾げる小鞠先輩はかわいいな。

 思わず撫でたくなるが我慢しよう。

 心に傷を負って仕事はしたくないんで。


「そうです。一応一人暮らしですから。流石に仕送りだけで生活するのは気が引けるんで。小鞠先輩は本を買いに来たんですか?」


 無言でこくりと頷く小鞠先輩。


「でも……中々、読みたい本が、見つから、ない……」


 そう言ってジーッと俺を見つめる。


「廉の……オススメの、本、とかあったら、教えて、ほしい」

「俺のですか?」


 再び無言で頷かれたが急に言われてもパッと思いつかない。

 ライトノベルはよく読んでいるがそれを小鞠先輩に紹介はなんだかしたくはない。

 最近の本は読んでないし……


「うーん、ちょっと思いつかないですね」

「そう……」


 シュンとしてしまった小鞠先輩の姿に心が痛む。


「よかったらですけど、一緒に本を探しましょうか? 案外一人だと気づかない作品もあると思いますし」

「いいの?」


 視界の端で滝本さんの姿を捉えたので咄嗟にこう返す。


「お客様が必要であれば」


 友人として小鞠先輩と一緒にいては怒られてしまいそうなので、お客と店員の立場であるとわざとらしく主張した。

 滝本さんもわざとらしく困った表情を浮かべるが、手首のスナップを利かせて「行ってもいいよ」と手の甲を向けて振っている。


「お願い」

「かしこまりました」


 と言って小鞠先輩を連れて本を探す事に。

 しかし小鞠先輩が読む本となるとどんな本だ? まずは小鞠先輩のイメージから読みそうな本は。


「廉、ちょっと、いい?」

「なんですか?」


 小鞠先輩のイメージにぴったりな一冊をと意気込んで探している最中にいつもよりワントーン低い声で小鞠先輩は呼び止めた。


「何してるの?」

「いや、小鞠先輩にぴったりの本をと」


 なんか背筋がゾッとするぞ。


「それは、分かって、る。わざわざ私のために、仕事を止めて探してくれる。それに関しては嬉しいし感謝してるから文句を言うつもりなんてないよ」


 あれ? 言葉もなんかだんだん流暢になっている気が……


「その上で聞かせてもらうけど……廉が持っている本は何?」

「何って……絵本でーー」


 あれー? なんで俺は絵本コーナーにいるんだ?

 小鞠先輩のイメージに合う本をと思ってたのに。

 小さいイメージが強すぎて思わず絵本に来ちゃったんだな。

 いやー、うっかりうっかり。俺ってなんてドジっ子なんだろ!

 と言う主張を全面に出すかのように舌を出して自分の頭を小突くとゴミを見るような目が向けられる。


「あ、あのー、小鞠先輩? ほら、スマーイル、スマーイル」

「……………………シヌ?」


 俺はこの時身をもって知った。

 相手を恐怖させるのに多くの言葉はいらない。たった一言で充分だと。

 それほどまでに小鞠先輩の一言は強烈だった。


「すいませんすいませんすいませんすいませんすいませんすいません」


 床に頭をつけて土下座する。

 事情を知らない通りすがりのバイトの先輩は「子供に向かって何してんだ」と言いたそうな顔をしていた。

 この人見た目は子供、中身は大人の女子高校生ですからね!


「どうしたの? 私の事を考えて選んでくれてるんでしょ? だったら早く選んで」

「これは手違いなんですごめんなさいちゃんと小説コーナーに行きますいませんだから許してください」


 俺の持てる最高の謝罪でなんとかその場は許すとの事で決着はついた。

 ただ……


「今度また絵本コーナーに行ったら分かってるよね」


 と釘を刺され、ちょっとちびりそうになりながら俺は現在小鞠先輩と小説コーナーで本を探している。


「廉、どう」

「これなんかどうですか?」


 そう言って小鞠先輩に見つけた本を手渡す。

 それにしても、温度差が激しいな。

 先ほどまで纏っていた殺意が今では一切感じられず、いつもの可愛らしい小鞠先輩がそこにいた。

 差が激しすぎて今の小鞠先輩も若干恐怖がある。


「うん、おもしろ、そう。これ、買うね」

「あ、あららあり、ありが、とうござい、ます!」


 もう自分がどんな状況かも分からない。


「レジ、お願い」

「か、かしこまりました!」


 俺が選んだ一冊だけを持ってレジに並ぶ小鞠先輩。

 人がいなかったので、俺がレジを打つ事に。


「あ、ちょっと、待って」


 手の平を見せて俺を止めると、隣に置いてあるお菓子コーナーから大量にお菓子を持ってくる。


「これもついでにお願い」


 これもついでって……これだけで袋二つぐらい使うんですけど。

 これじゃあ本のついでにお菓子じゃなくて、お菓子のついでに本ではないのか。

 ツッコミたい気持ちを抑えながらバーコードを通す。

 もちろんの事だが本一冊の値段よりも倍以上お菓子を買っていた。


「はい、小鞠先輩」


 代金を受け取り、袋を小鞠先輩に渡す。


「ありがとう。また、来るね」

「は、はい。お待ちしております」


 小鞠先輩が店を出たのを確認すると、自然と体から力が抜ける。


「れっちゃんどうしたの? 凄い疲れてるようだけど」

「ちょっとあってですね」

「それじゃあ休憩に入りな」

「そうさせてもらいます」


 滝本さんの許可をもらって俺は裏に下がって休憩を取るのだった。

読んでくださりありがとうございます。

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