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お嬢様で、優しい副会長は女王さま(疑問)6

※3月12日に文章一部変更

 水原先輩達から解放された俺はすぐに教室に戻って授業を受けた。

 滞りなく進む授業。黒板はチョークで真っ白になる程板書されている。俺のノートも同様に真っ白だが、黒板とノートでは白の意味がまったく違う。

 原因は授業中に届いたメール。

 そのメールに気がつき、教師が文字を書いてる間にさっと読み流そうとメールを開いた。

 しかし、流して読むほど文量はなく、メールは短く『放課後も屋上に来てね』と宮本先輩宛であの写真も添付されていた。

 そこからは授業は断片的にしか覚えておらず、いつの間にか六時限目の終わりを告げる鐘が耳に響く。

 最後の授業を受け持っていた松本先生は続けざまにホームルームを開く。

 明日の授業が変更だの、提出物はしっかり出せだの話しているようだ。


「いいな? それじゃあ、号令」


 委員長が号令をかけて一同礼をした。

 このまま屋上に向かおう。


「守谷、ちょっと待て」


 松本先生の呼びかけに足を止めて振り向くと、先生は俺に歩み寄ってくる。


「今日も生徒会は集まるはずだ。ちゃんと行けよ」


 すっかり忘れていた。

 だけどこの後は宮本先輩からの呼び出しをくらっている。


「すいません。この後用事があるんで行けないです。俺から雫に伝えておきますから」

「そうか……。すまないな足止めしてしまって」


 今回は俺の言葉を信用したらしく、松本先生は「明日は参加しろよ」と言い、手を軽く振って教室を出た。

 すぐにスマホを取り出してメールを作成。誤字脱字がないか確認して雫に送信して、重い足取りで屋上へ登った。

 屋上の扉を開けると、水原先輩達がスマホをいじりながら待っている。


「あ、きたきた」


 宮本先輩が俺に気がつくと悪戯な笑みを浮かべた。

 何か企んでいる様だが、俺は奴隷らしく主人の元に赴き、従順に従うしかない。


「ねぇ、奴隷君。お願いがあるんだけどー」

「何ですか。またパシリですか」


 従順とは言ったが、嫌味ったらしく言ってみた。しかしニコニコと表情を崩さない。


「君って、生徒会のメンバーなんだよね?」

「それが何か」


 グッと顔を近づけられる。そして、


「生徒会長の弱み教えてくれたら、解放してあげる。って言ったらどうする?」


 愛らしい顔でそう言った。

 それはつまり取り引き。俺の代わりに綾先輩を差し出せと。

 確かに別に俺じゃなくてもいいんだ。

 綾先輩なら同じ状況でも上手く打開するはず。なんたって完璧人間なんだから。

 そう……完璧な……


「どうしたの? 早くいいなよ」


 完璧な人間。それがみんなのイメージ。そのせいで綾先輩は潰れかけた。

 綾先輩は確かに俺なんか比べ物にならないほど出来た人間だ。

 でも、俺にとってはただの女の子なんだ。だったら男が女を盾にして逃げるなんてふざけた事が出来るかよ!

 俺の返答は決まってる。


「誰が話すかよ!!」


 生徒会あそこだけは絶対に守る。それが無様な俺に出来る事だと思うから。


「ふーん、あっそう」


 これ以上は時間の無駄だと思ったのか、つまらなそうにため息を吐くとスマホを取り出す。まさか……


「なら無理矢理にでも教えてもらおっかな」

「やめなよ、秋葉」


 俺よりも先に水原先輩が宮本先輩を止めた。


「舞、何で止めるの」


 被害者の俺ですら何故止めたのか疑問が浮かぶ。


「流石に気づかれちゃう。これ以上大きな事はしない方がいいよ」

「舞の言う通り。それに聞いたとしても生徒会長あいつが従うとも思えないし」

「……それもそっか」


 再び笑みをこぼし、スマホをポケットの中にしまう。


「そう言えば二人共、今日はバイトが入ってるんじゃなかった?」

「げっ! そうだった。また店長に怒られる」

「怒られるだけならいいじゃん。こっちは一日中それで小言言われるんだよ」


 支度を済ませて早々に帰っていく諸星先輩と宮本先輩。

 残された俺と水原先輩の間に沈黙がおり、穏やかな風が吹き通る。

 何も言ってこない事を帰ってもよしと判断し、荷物を持って去ろうとするが、


「待ちなさい」


 水原先輩に呼び止められてしまった。

 しかし、俺は振り向きはしない。


「なんであんたさっきの断ったの? 言えば少なくともあんたは奴隷をやめられたのに」

「なんでって、そもそも単純に弱点なんて知らないですから」


 嘘だ。だって俺に対する綾先輩の行動って明らかに知られたらまずいでしょ。


「あんた、あんだけ声張って拒否したじゃない。それは無理があるでしょ」

「……ただの女の子を守りたいと思ったから。それだけです」


 これは紛れもない本音だ。


「もういいですか? 何にもないなら俺は帰りますよ」


 背中を向けたまま歩き出そうとすると、水原先輩が行く手を阻んだ。


「ちょっとこれから付き合いなさいよ」

「付き合うって、一応生徒会で集まりがあるんですけど」


 嘘は言ってない。ただ、すでに雫に参加しないとメールで伝えた事を意図的に言っていないだけで。


「どうせ秋葉に呼ばれた時点でその呼び出しもメールかなんかで誤魔化したんでしょ」


 大正解です。見た目に反して鋭いですね。


「付き合いなさいよ。悪いようにはしないからさ」

「え、ちょ――」


 返答を聞かずに俺の腕を掴んで無理やり連れて行く水原先輩。

 こんな場面を見られるわけにもいかない。


「つ、ついて行きますから離してください! こんな所、見られると色々」

「こんな所って一体――」


 立ち止まって視線を腕に落とすと、バッと手を離す。


「……さ、さっさと行くわよ!」

「は、はい……」


 なんだ今の間は。と考えながらズカズカ進む水原先輩の後を追った。




「お疲れ様です」


 生徒会室の扉を開けて普段通り第一声に挨拶をする。


「雫か。お疲れ様」

「お疲れ」


 生徒会室には綾ちゃんと小毬さんがすでに待機していた。

 他の二人はまだ来ていないのかな?


「二人ならまだ来ていないぞ」


 顔に出ていたのか、質問する前に綾ちゃんが答えてくれた。

 廉はともかく、姫華さんがまだ来ていないのは珍しい。


「二人が来るまで待つ?」

「あぁ」


 なら少しばかり自由にさせてもらおう。

 いつものように会計の席に荷物を置く。

 深々と椅子に座り、背もたれに背中を預けて鞄からスマホを取り出していじる。

 画面を開くとメールが一件届いているようだ。

 送信主は廉から。「急にバイトに行く事になったから今日は参加出来ない。ごめん」との事。

 まぁ、一人暮らしなのだからお金が必要なのだろう。

 そもそも、半ば強制的に生徒会に入れてしまったのだから廉の都合ぐらいは考慮しなければいけない。


「雫、どうしたの?」


 右隣の書記の席で、相変わらずお菓子を食べている小毬さんが首を傾げている。


「いえ、廉からメールがあったみたいで」

「廉君?」


 生徒会長の椅子に座っていた綾ちゃんが立ち上がり、私に近寄って来た。


「ちょっと見せてくれないか? 内容が知りたい」

「うん」


 と頷いてスマホを渡そうとしたが、すぐに腕を引っ込める。

 危なかった。あまりに自然に頼まれたから渡しそうになった。


「……どうした? 何故見せない? 早くメールを見せてくれないか」

「私が全文読むよ」

「な! それではメールアドレスがおっとなんでもない。さぁ、早くスマホを貸してくれ」


 今ので貸す気はなくなったよ綾ちゃん。


「一瞬だけ貸してくれ! それなら問題ないだろ!?」

「校則をたった一日で全部完璧に覚えた人の言葉を信じられるわけないでしょ!」


 いや、流石に綾ちゃんでも一瞬だけでは覚えきれないとは思う。思いたいんだけど、廉が絡んでいるとなれば話が別な気がしてくる。


「絶対見せないから! 廉がいいって言うまでアドレスは教えてあげない!」

「雫は意地悪だな! 今日だって廉君との甘美な時間を邪魔して!  ハッ、まさか、雫も……」

「そんなわけないでしょ!」


 いい加減廉関係で暴走するのをやめてほしい。最近冗談抜きで栄養ドリンクと頭痛止めを常備しようかと思ってるんだから。


「あらあら。楽しそうね。でも、もう少し静かにね。外にまで聞こえてたわよ」


 優雅に生徒会室に入ってきた姫華さんが微笑ましく眺めている。


「あ、姫華」

「どうしたんだ? 今日はずいぶんと遅かったな」

「ちょっと用事があって」


 姫華さんのおかげでスマホに向いていた気がそれてくれた。今の内にロックして鞄の中に滑り込ませる。


「姫華さんも来た事だし、早く部活の視察に行こうよ! 今日はそのために集まってるんだから」

「あら? 廉君はいいの?」

「大丈夫です。メールがあって、今日はバイトで来れないみたいですし」


 荷物を置いた姫華先輩の背中を押して、足早に視察に向かう。私の後を追って綾ちゃんと小毬さんもついてきてくれるけど、


「……メールの件はこれが終わったらじっくり話し合おうではないか」


 私の苦労はまだ続きそうです。

 廉の都合も考えて来れないのは仕方がないとさっき思ったばかりだけど。


「恨むわよ、廉」


 誰にも聞こえない声で私は呟いた。

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