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(他称)アニキと、(自称)姉貴の兄姉バトル2

 約束通りアニキと卓也と一緒にユオンに来ている。

 夏休みもあり、前来た時よりも人が多い。

 早速メインの水着を選ぶために二階の水着売り場で物色を始めていた。


「アニキこれとかどうです?」

「いやいやアニキさんならこれの方がいいんじゃないか?」

「渋過ぎだろ。アニキは若いんだぞ?」

「いや、アニキさんは漢って感じの顔立ちだからむしろこれぐらいが似合うって。ね! アニキさん」

「守谷は分かるがなんで三島までアニキって呼ぶんだ」


 二人は今日が初対面のはずだが、さすがコミュ力お化けの卓也だ。

 いくら見た目の判断はしないとはいえ、臆せずかつ相手を貶さない程度にいじっている。


「そんなことはいいじゃないですか。それで、どちらが好みですか?」

「……しいていうなら三島のだな」

「なん……だと……」

「残念だったな廉」

「お前ら仲良いな」


 さて茶番はこれぐらいにしておこう。


「アニキどうします? これで決めますか?」

「悪いがもう少し見ていきたい。俺のことはいいからお前らも自分の分を選んできていいぞ」

「分かりました。卓也はどうする?」

「俺は去年の──」


 と言いかけたところで卓也はハッとする。


「やっぱり俺も新しく買い直す」

「そっか」


 ということで今度は自分の水着のためにバラバラに売り場を散策する。


「これは……真っ赤で派手すぎだな。これはカラフル過ぎるし、趣味じゃない。あ、これいいな」

「なぁ廉君。今度の海で持っていく水着どっちがいいかな。大人っぽい黒い水着かフリルのついた白い水着か。廉君はどっちが好み?」

「れっちゃん。この水着どうかな? ちょっと挑戦しようかと思ってるんだけど、やっぱりお姉ちゃんには大胆過ぎ、かな? どう思う?」

「素直な感想を述べますと、彼女ムーブと姉ムーブする不審者に囲まれて今すぐここから離れたいです。というかなんでいるんですか」


 両脇を陣取る綾先輩と美鶴さん。

 なぜこの二人が一緒にユオンに。


「あ、ここにいた。探したよ綾、美鶴ねえ……え。守谷!? 何でいるの!?」


 なるほど。水原先輩と一緒に来ていたのか。


「あ! 廉だ!」

「え、廉がいるの?」

「あ、本当だ。美鶴さんの隣にいるのって守谷君だね」

「あらあら、偶然ね」


 ぞろぞろと現れたのは生徒会である雫と姫華先輩と小毬先輩。それに加え、海に誘われたであろう沙耶未

 と花田さん。


「なんで守谷がここに?」

「水着を買いに来たんですよ。もしかして水原先輩達もですか?」

「そうだけど」


 また綾先輩が仕組んだのかと思ったが、今日ユオンに行くことが決まったのは昨日のことだし、綾先輩の仕業じゃないだろう……と思いたい。


「もしかして、綾先輩が買いに行くって言いだしたんですか?」


 花田さんもいるため、小声で尋ねる。

 しかし水原先輩は首を横に振った。


「ううん。美鶴ねえ。なんか昨日の夜急に買いに行こうって誘われて、それなら女の子全員で行こうってことになって」


 やっぱり昨日の会話を聞かれてたか。


「廉は……一人なの?」


 ちょっと待て雫。

 なんでそんな可哀想な人を見る目を俺に向けるんだ。


「違うって。俺も海に参加するメンバーで水着を買いに来たんだよ」

「廉の知り合いで参加者ってことは三島君か」


 と納得した様子の雫。

 あ、そうか。アニキが来ることを知っているのは姫華先輩だけか。


「おーい! 廉!」


 選び終えたのか、卓也とアニキがこちらにやって来る。


「そこにいるのって……生徒会の人達か?」


 卓也は嬉しそうにこちらにやってくるが、アニキは綾先輩と美鶴先輩の存在に気がつき、回れ右をして他人のフリを決め込もうとしている。


「あ、卓也! アニキ! そうなんだ! こっちにこいよ!」


 と、生気のない虚ろな目で二人を呼ぶ。

 呼ばれてしまったからには他人のフリはできないと、渋々アニキも卓也と共にこちらに合流する。


「え? 飛鷹さん!?」


 アニキがいることを一番に驚いたのは水原先輩。


「なんでいるの?」

「俺が海に誘ったんです。まずかったですか?」

「そうじゃないけど」


 水原先輩とアニキの視線がぶつかると、すぐさま水原先輩は視線をそらした。

 アニキを海を誘ったのには理由が二つある。

 一つは単純にアニキと遊びたかった。

 もう一つは水原先輩とけじめをつけてもらうためだ。

 アニキが良い人であることは水原先輩も分かっている。

 だけど、今見た様子からしても近寄りがたいようだ。

 二人と仲がいい俺としては、一度話し合ってもらってほしい。

 別に二人共仲良くしてくれとは言わない。

 今後の関係をどうしていくのかは二人が決めること。

 ただ、何も話さずにあの一件を引きずっていくのであれば話は別だ。

 この機会に決着してほしい。

 だが、その前に問題がある。


「くっ! やっぱり一緒にいたな宮口さん!」


 対抗心をメラメラに燃やしてるこの自称姉だ。


「あー……昨日ぶりだな」


 アニキは遠い目で美鶴さんを見つめる。


「え、美鶴ねえ。飛鷹さんと知り合いなの!?」


 このことに驚愕する水原先輩。

 まぁ、そうだよな。


「私かられっちゃんを奪ったライバル」


 勝手にライバル認定しないでください。

 アニキが迷惑がってます。

 それに水原先輩も混乱してますよ。


「ねぇねぇ、守谷君」


 いつの間にか近寄っていた花田さん。


「あの人って、守谷君のお兄さん?」

「いや、俺がそう呼んでるだけ」

「あ、そうなんだ。ということは、あのアニキさんと仲良いんだ」

「まぁ、そうだな」


 何か他人に言われると少し照れるな。


「つまりアニキさんのムスコさんにも挨拶したんだね!」

「息子って、アニキは未婚者だよ」

「もー、察してよ? ムスコって言うのはチ──」

「分かった上での回答だと察してくれないかな?」


 近寄ってきた時点で分かっていたけど、案の定妄想の材料にしようとしてるなこの子。


「さぁ、れっちゃんをかけて私と勝負です!」

「勝負しなくていいから守谷を弟にしてくれ」


 面倒くさいからって本人の承諾なしに無茶苦茶なこと言わないでくださいアニキ!


「だめ! アニキさんに勝ってこそ『やっぱり俺には必要なのはアニキじゃなくて姉貴だ!』って、私をお姉ちゃんと認めてくれるんです!」


 例え命の危機を助けられたとしても絶対に認めませんから。


「準備はいいですかアニキさん!」

「いやだから──」

「デュエルの開始の宣言をして! 舞ちゃん!」

「うぇっ!? デュ、デュエル開始ー!」


 アニキの話も聞かずに勝手に開始の宣言を水原先輩に指示。

 そして唐突の指示に対してもオタク魂が勝ったのか、お手本の開始宣言をする水原先輩。

 今この世で最もどうでもいい戦いが始まる。


「綾ちゃん。私達はどうする?」

「美鶴さんは忙しそうだから、私達はどこかでお茶でも飲みながら待つとしよう」

「そうだね。他の人もそれで──あれ? 小毬さんと沙耶未と花田さんは?」

「小毬ちゃんと沙耶未ちゃんがお店を探しに走り出したのを花田さんが追いかけてるわよ」

「まったくあの二人は。すぐに追いかけますよ」


 他の人達はここから離れるようだ……あれ?


「綾先輩? 水着を買いに来たんじゃ」

「あぁ、それならもう買ってあるぞ?」

「え? だったらなぜさっき俺に水着を選ばせようとしたんですか」

「私が買ったのは海で楽しむ用で、廉君に選んでほしかったのはベッドで愉しむ用だ」

「水着の使用は海オンリーでお願いします」

「バカなこと言ってないで早く行くよ。廉も来る?」


 ちょうどここから離れたいと思っていたところだから、お言葉に甘えて同伴させてもらうとしよう。


「そうさせて──」

「れっちゃんは離れちゃだめでしょ」


 美鶴さんが俺の腕を掴んで逃がさない。

 俺はすぐさまアイコンタクトで雫にヘルプを要求するが、意図的に視線を合わせてくれない雫は残念そうにしている。


「なら仕方ないね。さ、綾ちゃん」

「え? 廉君は? 廉くーん!」


 雫に引っ張られながら綾先輩は連れていかれ、姫華先輩もその後ろを歩いていった。

 今回ばかりは伸ばされた綾先輩の手を掴みたいほどこの場から逃げ出したいが、


「ほら守谷。お前がいないと始まらないそうだ」


 アニキも俺を逃がしてくれないので、俺も強制的に残るはめに。


「なんだかおもしろいことになったな」

「こちとら面白くないんだよ」


 ほぼ無関係な卓也はのんきでいいもんだ。

 俺とアニキはすぐにでもここから逃げ出したいのに。


「最初の勝負は、れっちゃんの水着選び対決! お互い水着を一枚選んでどちらが好みか選んでもらう。時間は今から三十分です!」


 と言って早速男性の水着売り場で俺の水着を選び始める美鶴さん。

 対戦者のアニキはその並々ならぬ気迫に若干引きながらも、渋々水着選びを始める。

読んでくださり ありがとうございます

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― 新着の感想 ―
[良い点] アニキ(マジ)vsお姉ちゃん(自称)、廉くんの水着勝負とは…。 別の意味で廉くんの心労負担(デメリット)大きいな~……。(目逸らし) [気になる点] アニキ(尊敬)と美鶴さん(バイト先輩)…
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