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創世する世界のイヴ # Genesis to the world's Eve  作者: 遍駆羽御
本編―――― 第3章 眠れる天賦
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第99話 反逆の力と、少女神の想い

 

 第99話 反逆の力と、少女神の想い


 視点 凪沙南イヴ

 場所 地球 旧世界 東京都 千代田区、地球 新世界 東京都 凪紗南市

 日時 2033年 4月9日 午後 4時29分



 予は心お姉ちゃんと協力してスカルドラゴンを滅する。

 予と心お姉ちゃんが取りこぼしたスカルドラゴンの攻撃を予の自称 お兄ちゃん 新刀寺明日葉がハンマーを振り回して受け止めてく入れる。


 明日葉「くぅー、リアルのドラゴンの爪攻撃は重いぜ。全く、オタクがリアルでドラゴンと戦うこと自体が間違っている。バーチャル派なんだよ、オタクは!」


 予と心お姉ちゃんを分断させようとしていたスカルドラゴンの爪は見事に明日葉のハンマーによって防がれた。


 明日葉「やべぇ……早めに対処を頼むよ、妹様」


 イヴ「妹様ではないのだ! 凪沙南流 瞬陣斬」


 予は明日葉の戯言に付き合いながら、左足で踏み込み、スカルドラゴンの右脚を一刀両断する。右脚は楽器屋の駐車場にあるゴミ箱にぶつかり、そこに留まった。

 右脚を失い、バランスを崩したスカルドラゴンはその場に転倒する。


 そのスカルドラゴンの胴体を心お姉ちゃんが自慢の魔力の糸で絡ませようとした時、予達の傍を蓮恭二が素早く、通り抜けてゆく。

 剣を構えた恭二の姿が何故か、いつもよりも逞しく映る。気迫も凄く、頼りないヘタレさが全くない。


 イヴ「…………まるで恭二ではないみたいだ」


 恭二は狼の如き、遠吠えを口から放ちながら、仰向けに倒れているスカルドラゴンの右腕、左腕、左脚を瞬時に切断した。

 それは………あり得ない光景だった。恭二の保っている剣はLevelを補ってそこまでの切断力を魅せる程のモノではない。聖剣の類いでも保っていないと圧倒的なLevel差は覆せないはずだ。


 呆然としている予の耳にはこれは幻ではないのだ! と訴えかけるようにスカルドラゴンの痛がる叫びが聞こえる。


 そして、その叫びを挙げた仲間を助ける為に別のスカルドラゴンが口を大きく開いて、ダークドラゴンブレス――闇の息を吐いた。闇の魔力の籠もった息は最初に五体不満足になった仲間のスカルドラゴンを攻撃している恭二に向かう。


 心「間に合わないわ。イヴ、治癒魔法をすぐに唱えられるように準備して。彼の力量なら、多分、瀕死の状態になるはず。蘇生魔法もオプションに入れて!」


 イヴ「了解なのだ。許せ、恭二……今からでは」


 恋歌「お兄ちゃんの馬鹿! イヴ様の前で格好付けようとするから。避けて!」


 池内桜花「恭二! せめて防御をするんだ。胸部と頭部を護れば、イヴ様の治癒魔法で」


 予達の心配を余所に蓮恭二は微笑んだ。


 視点 神の視点 

 場所 地球 旧世界 東京都 千代田区、地球 新世界 東京都 凪紗南市

 日時 2033年 4月9日 午後 4時32分



 少女神 リンテリアは余裕の恭二の微笑みの裏にいる反逆の神 リベリがいる事に気がついていた。何故ならば、反逆神の位よりも上の位に未来神 ミル・リンテリアはいるのだから、自分よりも下級の神の影響なんぞ、簡単に嗅ぎ分けられる。

 少女神 リンテリアはそれをイヴ達には決して教えない。

 何故?

 それは……と少女神 リンテリアはボンネットの冷たい感触を枕にしながら、両手に握り締めて眺めているエロロリ漫画ではなく、遠い未来を見つめる。


 少女神 リンテリア「良い経験値になるのねん♪」


 神様は人間を人間という特別の位として認識はしない。

 ただ、一神だけ、人間を人間として慈しむ神がいたが……今はもう……いないと少女神 リンテリアは少し思いだし、頬に涙が流れているのを感じた。


 少女神 リンテリア「彼女に報いる為にも、未来神 ミル・リンテリアはより良き未来を築かなければならない。それは神々の戦いとは別の人間……虫のより良き未来を……」


 だからこそ、未来神 ミルは自分の身分を偽り、唯一の人間の為の神として、イヴを育てるべく、画策する。

 そして、来る時まで冷酷にイヴがより成長する未来を選択する。それがイヴ達の知らない少女神 リンテリアの裏の顔だった。


 少女神 リンテリア「目的の為ならば、私は駄目神と言われても構わない。せめて、イヴがラグナロクの上、エクサ ラグナロクを過不足無く、撃てるようになるまでは。それが過保護であろうとも神々の戦いに参戦する最低限のレベル」


 その為ならば――


 少女神 リンテリア「私は悪魔にさえ、なる」



 視点 蓮恭二

 場所 地球 旧世界 東京都 千代田区、地球 新世界 東京都 凪紗南市

 日時 2033年 4月9日 午後 4時33分


 身体が軽かった。

 だから、思わず、戦いには不似合いの笑いを浮かべてしまった。


 僕が五体不満足にしたスカルドラゴンがギャギャー、五月蠅いので……剣でスカルドラゴンの首を薙いだ。

 別のスカルドラゴンの闇の息――ダークドラゴンブレスが目前に迫っている。僕はMではないので避けるつもりでいた。今の自分の能力値ならば充分可能だった。


 ”避けるしかない”


 ”それよりももっと、良い方法があるわ”


 ”そんな方法があるのか?”


 ”このレベルならば、新しい魔王魔法が習得可能よ”


 ”新しい魔王魔法?”


 ”そこのスカルドラゴンの亡骸に手を当てて、魔王魔法 ブラディースキャンって唱えて”


 心に響く反逆者 リベリの声に従い、僕はスカルドラゴンの亡骸に触れて――

 恭二「魔王魔法 ブラディースキャン!」

 ――と唱えた。


<蓮恭二は魔王魔法 ブラディースキャンを習得した>


 僕の身体の中に竜魔法 ダークドラゴンブレスの情報が入ってゆくのを感じた。なるほど、ブラディースキャンという魔王魔法は亡骸からランダムで一時的にその亡骸が保有した魔法・技を習得することができるようだ。

 すぐに僕は迫り来る闇の息に対して、手を翳して唱える。


 恭二「竜魔法 ダークドラゴンブレス!」


 闇の竜の息が僕の手の平から溢れだして、スカルドラゴンのダークドラゴンブレスと激突する。

 Level 270よりも高いLevelにある僕のダークドラゴンブレスがスカルドラゴンのそれに劣るはずはない。

 徐々にスカルドラゴンのダークドラゴンブレスを侵食してゆく。


 その光景に――


 イヴ「魔王魔法……。後で恭二に話をしなければならない自体になったようなのだ」


 心「竜族でない者が竜魔法を使う? あり得ないわ」


 明日葉「魔王魔法、イヴ以外にもその属性を操る奴がいたのか……。威力は恭二の方が上か。これはあのドラゴン、倒されるな……」



 恋歌「あんな力をお兄ちゃんが使うなんて聞いたことがない」


 池内桜花「力強さが違う。何かがある…………」


 ――とそれぞれ疑問を抱いているようだが……僕はそれ以上に僕の振るう力が強くて、楽しくて仕方がなかった。


 ”喜んでいるの。まるで新しい玩具を貰った子どものようね”


 ”ああ、嬉しいよ。やっと、これで僕はイヴを護れる! イヴを手に入れることに挑戦する。それを許されたんだ”


 やがて、僕の放ったダークドラゴンブレスはスカルドラゴンを食い破った。闇に包まれてスカルドラゴンは跡形も無く、消滅した……。


 その威力に驚いた銀色の髪が特徴的な僕の初恋の人が僕に近づいてきた。そして、小さな口を開ける。


 イヴ「恭二。何故、恭二がヴァンパイア族にしか使えない魔王魔法を習得している?」


 戸惑うイヴ様に僕は少しイラッとした。

 そんな顔で見るな! という想いと、どうして僕の気持ちに気づかないという想いで僕の心はぐちゃぐちゃになった。


 恭二「僕はイヴ様に全てを話さなきゃいけないんですか!」


 イヴ「恭二……。予は……」


 恋歌「お兄ちゃん、イヴ様に対してその言葉はないよ」


 池内桜花「今のお前はおかしいぞ、恭二」


 恭二「……まだ、スカルドラゴンは沢山、いる。恋歌、桜花は僕の後ろに。こんな雑魚くらい僕は簡単に倒せるんだ。…………倒せるんだ」


 そうだ、もう、僕は――

 イヴ『そう、虐めてやるな、皆の者。恭二よ、戦いは既に数十分前、情報操作戦から始まっておる。殺すだけが戦いではない。とかく、古来より情報量、情報の質が多い者の方が有利だ』

 ――そう、初恋の人に言われるような弱い蓮恭二ではないんだ。


 そう想うと僕は嬉しくて、嬉しくて、溜まらない!


 例え、これが悪魔との契約だとしても一向に構わない。


 恭二「力は力だろう? みんな」


 イヴ「違う……ぞ、恭二。力は想いでもあるんだ。純粋な想いでも」


 恭二「イヴ様は随分、ロマンチックな人なんですね。好ましく想います」


 と僕はイヴ様に述べて、スカルドラゴンの群れに走った。





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