4−83:VSオノドリム、横浜ダンジョンにて・中編
ここまで、オノドリムの行動パターンを観察して思ったのは……オノドリムは自発的に動けない分、何かしら物を飛ばしたりモンスターを飛ばしたりするなど、非常に長いリーチを持つ攻撃が多いということだった。こちらがずっと遠距離にいるのも関係していると思うが、この様子だと広場内に安全地帯は存在しないと思われる。
……では、近距離ならどうだ? 行動パターンが変わって対応してくるのか、あるいは近接戦闘が苦手で一方的にやられてしまうのか。ゴブリンジェネラルは遠距離戦が苦手だったが、それでも槍投げ攻撃のような対応策はあったから……おそらくは前者、行動パターンを変えてくる可能性が非常に高い。
「よっしゃぁ、俺の一撃で切り倒してやらぁ!」
「行くわよ!」
「行きます!」
「行くネ〜!」
「ざぶぅっ!」
大戦斧を掲げた嘉納さん、剣槍を携えた朱音さん、大盾を構えた帯刀さん、シズクを肩に乗せたハートリーさんが、それぞれ別の方向からオノドリムに向けて突貫していく。オノドリムの遠距離攻撃に範囲攻撃が多かったので、一網打尽にされるのを防ぐためにあえてバラけたのだろう。
それを見たオノドリムが、幹に浮かび上がる顔を憤怒の色に染める。
『ナメルナヨ、ニンゲンドモガ! キンキョリデナラ、ワレニカテルナドト、オモイアガルナ!』
――シュルシュルシュルッ!
オノドリムの枝葉から、無数の棘が生えた蔓植物みたいなものが10本ほど現れる。近付いてくる探索者は、どうやらあれで迎撃するようだ。
……当たったらただじゃ済まなさそうだな。あの棘が生えた蔓、長くて鞭みたいによくしなるようだし……ホント、初代ポ◯モンのアニメで良く見た技みたいだな。こちらは棘という露骨な悪意が乗っかっているけれども。
ならば、こちらも相応の対策を取る必要があるな。
「"プロテクション・オール"、"エンチャント・ファイア・オール"」
――ブォン
――ゴゥッ……
プロテクションは全員に、エンチャント・ファイアは亀岡組+後衛組に掛ける。属性エンチャントは暴発の危険もあるが、亀岡組は属性エンチャントに慣れているので戦闘力増強も狙って掛けておいた。
……なんというか、やはり朱音さんがいると【付与魔法】の消費魔力量が減って、すごく戦いやすいな。彼女が持つ"第2級着付け技能士"の資格がかなり特殊な資格だからなのか、【付与魔法】が使用可能になる効果も実は着付け技能士でしか得られないのだが……それで得られる効果が、アイデア次第でどこまでも有用になっていくというのが非常に面白い。
俺が得たギフトが【資格マスター】で、本当に良かったと思う。こうして、俺ではない誰かの努力を直接俺の力に変えて、ダンジョン内でその人に還元できるのだから。
「プロテクションですって? 恩田さん、これは?」
「物理ダメージを大きく軽減するバリアだ。ブルースライムの酸に手を突っ込んでも、オークの一撃をまともに食らっても無傷で凌げるぞ」
オノドリムが繰り出す物理攻撃を、プロテクションでどこまで軽減できるかは未知数だがな。それでも無いよりあった方が良いのは間違いない。オノドリムが魔法攻撃を持っているとちょっと怖いが、それならそれで別の対処方法もある。
……ただ、なんとなくオノドリムは魔法攻撃の手段を持っていないか、あっても大した威力ではないんじゃないかな、と思っている。
魔法が使えるなら、最初に使ってきてるはずだしな。通常ボスがファーストアタックで厄介な行動を繰り出してくるという法則に則るのであれば、種子の散弾よりも厄介な魔法攻撃なんてたくさんあるはず。ゴブリンキングが繰り出してきた魔法攻撃なんて、冗談抜きで朱音さんが1度命を落としかけてるほどだからな。
「うおおぉぉぉぉぉっっ!!」
――ダダダダダッ!
嘉納さんがかなりのスピードで駆けていく。プロテクションの効果に身を任せて、なんと完全ノーガードで全力疾走しているようだ。
さすがに危ないんじゃないかと思ったが、嘉納さんはこれまで第一線で探索者を続けてきた強者だ。本当に危険なら、絶対にそういうことはしないはずだ。
『チカヅクナ!』
――ヒュッ!
オノドリムの迎撃で、蔓の鞭が2本ほど嘉納さんの顔面目掛けて振るわれる。だが、嘉納さんは全くスピードを落とそうとする気配が無い。
そのまま、棘棍棒と化した蔓の鞭を嘉納さんは顔面で受け――
――バチバチンッ!
「そんなもん、痛くも痒くもねぇよっ!! 【怪力乱神】舐めんな! うらぁっ!!」
――ブォンッ
なんと逆に頭突きで弾き飛ばし、返す刀で嘉納さんは横振りの一撃をオノドリムに叩き込んだ。
――バギバギバギッ!
『グガッ!?』
大戦斧の刃は、オノドリムの太い幹に3割ほど入り込んだところで止まる。3割も切り目を入れられたと言うべきか、3割しか切り目を入れられなかったと言うべきか……いずれにしろ、亀岡組の誰にもあんな物理攻撃の威力は出せない。さすがは【怪力乱神】、物理特化のギフトは伊達じゃないな。
「はあっ! "炎雷槍"!」
――ドスッ!
――ゴウッ!!
――バヂヂヂヂッ!!
『グガァァァッッ!?』
オノドリムの動きが止まったところに、朱音さんが剣槍をオノドリムの幹へと突き立てる。ランク5の武器は、オノドリムの固い幹にもスルリと侵入し……そうして深く穿った穂先から、炎と雷が激しく噴き出た。第19層の戦いで残っていた雷エンチャントが、ここで役に立ったようだ。
『ソノ、デンゲキヲ、ヤメロォォォッ!?』
オノドリムが雷撃で痺れている。こうなるともう、オノドリムに為す術は無い。
「はっ!」
――サクッ!
――バヂヂヂヂッ!
「ヤァッ!」
――ドスッ!
『ガァァァァァッ!?』
帯刀さんとハートリーさんの一撃が次々と入り、帯刀さんは同じく第19層で残っていた雷エンチャントを攻撃に乗せて、きっちりと追加ダメージを与えていった。
このまま終わるか? とも思ったのだが……さすがに、ボスモンスターはそんなに甘くなかったようだ。
『グゥ……コノ!』
――ヒュッ!
――バチバチバチバチッ!
「おっと」
「きゃっ!?」
「くぅっ!?」
「ヒャウッ!?」
痺れ状態から復帰したオノドリムが、蔓の鞭を無茶苦茶に振り回して強引に5人を引き剥がしにかかる。
4人に攻撃がまともに当たったが、全てプロテクションで弾いて無傷だった。とは言え、何度も攻撃を食らうのはさすがに良くないようで、プロテクションを頼みにしつつ距離を離していった。
「ざぶぅっ!」
――バシャァッ!
――ズバッ!
『グァッ!?』
離れ際にシズクが水の刃を飛ばし、蔓の鞭を4本ほど切り飛ばしていたのはさすがだったが。
「……今だ、菅沼さん!」
そして、5人が作ってくれた決定的な隙。これを逃すわけがない。
「待ってたわ! 食らいなさい、"フレアボール・ラッシュ"!」
――ドドドドドドドドドッ!
5人が離脱したその直後、オノドリムへ向けて菅沼さんが炎の玉を乱射する。ファイアボールよりも更に大きい、巨大な火球の乱れ撃ちだ。
『グッ、マダ、マダワレは、オワランゾ!』
さすがにこれには、オノドリムも焦ったらしい。明らかに余裕の無さそうなセリフを吐きながら、オノドリムが枝葉から大量の蔓植物を出す。今度は棘が生えておらず、攻撃目的でないのは明らかだった。
そして、一気に大火球へ向けて殺到させる。大火球に触れた蔓植物は、当然のように火が点いて燃え始めるのだが……。
――プツッ!
――プツプツプツプツプツツッ!!
火が点いたその瞬間に、オノドリムが蔓植物を先っぽだけ次々と切り落としていく。何を意図しているのか、最初は見ていて全く分からなかったが……しばらくすると、オノドリムの狙いに気が付いた。
「あら残念、火球が全部迎撃されちゃったわね」
切り離された蔓植物が辺りに散らばり、激しく燃えている。しかし、オノドリム自体には大火球が1つも到達していなかった。蔓を犠牲に本体へのダメージを抑えたわけだな。
もちろん、無傷ではないだろう。蔓植物もオノドリムの一部だと考えれば、それなりにリソースを削っているはず。そう何度もできることではないはずだ。
「………」
しかし、相手は腐っても第20層のボスモンスターだ。もしかしたら、まだ切り札を隠し持っているかもしれない。
「……【鑑定】を使うか」
魔力消費量が結構多いので、できれば使いたくなかったが……出し惜しみしていては危険かもしれない。
これなら、最初に使えば良かったな。完全に俺の判断ミスだ、反省して今後に活かしていこう。
強そうなモンスターには最初に【鑑定】、情報を得てから戦う。それを徹底した方が、今後のためにも良さそうだ。
「【鑑定】」
オノドリムの情報を【鑑定】で覗いていく。さて、どんなのが出てくるかな?
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