4−75:順調な行軍
『グ……ハ……』
――ズゥゥゥン……
哀れ、総勢10名から魔法と魔技の集中砲火を浴びたゴブリンジェネラルが、黒焦げになりながら地面へと倒れ伏す。もはや第10層ボスの威厳もなにも無く、ちょっと頑丈な的扱いになってしまっている。
「……ウ……ガ……」
――パシュゥ……
そして、【仲間呼び】で出てきたホブゴブリンも末路は同じだった。ついでのように集中攻撃を食らい、あっけなくドロップアイテムへと変わっていく2体を見届けながら……俺は、朱音さんと会話を交わす。
「もう、ゴブリンジェネラルは敵じゃないな」
「これだけ戦力が揃ってたら、そりゃあ障害にもならないわよ」
「……モンスターよりも、距離と時間が最大の障害だってのが笑えないんだよな」
「……そうなのよね」
朱音さんと2人、小さくため息を交わす。もはや敵はモンスターではなく、移動距離が長いためにダンジョン内で宿泊しなければならないことによる、兼業探索者の探索可能時間の問題が最大の障壁と化していた。そのせいで第14層以降の探索が全く進んでいないのだから、正直なところもうどうしようもないのだ。
「瞬間移動装置とか、ダンジョン内エレベーターとか……どっかに無いかなぁ?」
「探してみる?」
「ふっ、希望的観測を言ってみただけだ」
「ダメじゃん」
朱音さんにジト目で即ツッコまれた。
……でも、このやり取りの感じがなんだか久々で心地良い。横浜ダンジョン留学を始めてから、2週間も経っていないはずだけど……随分長いこと離れてたような気がするんだよな。
――ゴゴゴゴゴゴ……
「あ、道が開いたのです」
「ささっと行こうぜ、時間が勿体ないからさ」
嘉納さんの先導で先に進む。この辺まではまあ、準備運動みたいなものだからな……ここからが本番だ。
◇
「さて、第13層に着きました」
「あっという間ね、なんだかスキップしたみたい」
「こらこら、そんなメタなことを言わない」
ひたすら山道を進むこと、1時間ほど。第11・12層を通り抜けて、第13層までやってきた。ここからは空中型モンスターの強敵・ダイブイーグルが襲ってくる。
「ダイブイーグルか……」
大空を飛び回り、時折【ウインドブレスⅠ】を撃ち下ろしてくる厄介な敵だ。道中がヘアピンカーブの山道みたいな形をしているので遮るものが無く、ダイブイーグルの遠距離攻撃を自力で防ぐ必要がある。
「……まあ、これがあるから別にいいんだけどな。盾展開」
――ブォン
盾からドーム状の防壁を出す。その下面は地面の形に合わせて、自在に変化するようにしてある。これなら、どこから攻撃を受けても大丈夫だ。
……ここまでは地上だけ警戒していればよかったが、第13層からは空中も警戒する必要がある。それを防壁に置き換えてしまい、とにかく早く先に進むために防壁を展開することにした。
「恩田さん、それで魔力保つのか?」
「ああ、それは余裕だよ。亀岡ダンジョンでも試してるからね」
さすがに魔力自然回復量より消費量の方が多いので、1層あたり10%ほど消耗していく。それでも、俺からしたら想定の範囲内だ。ここから出しっ放しにしても、うまくいけば第20層まで保つんじゃないかな?
……まあ、第14層以降の様子がさっぱり分からないから何とも言えないんだけど。モンスターの攻撃を受け止めれば、その分だけ魔力消費量も増えるからな。どこかに第4層のような階層があれば、第20層まで保たない可能性もあるだろう。
「さあ、先に進もうか。みんな、ドームの中から出るなよ。
……そういえば菅沼さん、第14層って普通の階層か?」
「ん? ええ、普通の階層よ。少なくともモンスターだらけではないわね」
「到達できた階層の中に、モンスターだらけの階層ってあったか?」
「無かったわね。少なくとも第17層までは無いわ」
それは良かった。もしリザードマンやオーク、ダイブイーグルだらけの階層があったらヤバいなと思ってたから、朗報だよ。
……まあ、本当にヤバい階層なら情報封鎖の呪いが発動するだろうから、こうやって話せてる時点で無いのは分かってるんだけどな。
「最後まで順調に行ければ良いのですが……」
「まあ、こうなれば前進あるのみネ〜。ミスターオンダの魔力があるウチニ、ガンガン先に進みマショ」
「はい、そうしましょう」
「サクッと行くのです!」
慎重派の三条さんにイケイケのハートリーさん、実は思い切りの良い帯刀さんと、見た目や言動とは裏腹に抜け目の無い九十九さん。性格は四者四様ながら、不思議とすぐに仲良くなっていた。役割も回避アタッカーに中距離アタッカー、防御系タンク、魔法砲台と被っていないのもいい。
「ひゅいっ!」
「ざぶぅっ!」
――ザシュバシャッ!
「ピィィィィッ!?」
「きぃっ!」
「ぐぁぅっ!」
――ゴォォォッ!!
「「「ガァァァァァッ!?!?」」」
仲間モンスター組も大活躍だ。空中から接近してきたダイブイーグルを遠距離攻撃で迎撃したり、出てきたオークを焼き払ったり……俺や嘉納さん、菅沼さんの出番が全く無いくらいに、モンスターを次々と仕留めていった。
「ぱぁっ♪」
……アキは相変わらず、攻撃には不参加だけどな。俺の左肩の上でずっと謎の踊りを踊っているが、俺たちは不思議と疲れを感じにくくなっていた。アキは【踊りⅠ】というスキルを持っているので、その効果でずっと俺たちのサポートをしてくれているのだろう。
「……あまりに出番が無さすぎて、これでいいのか不安になってくるな」
「私、まだゴブリンジェネラルに"アイシクルピラー"しか撃ち込んでないんだけど……」
「まあ、今は体力と魔力を温存しておいてくれ。2人の本当の出番はこの先にあるんだからな、"アイテムボックス・収納"」
「ぱぁっ!」
会話しながらも、ドロップしたアイテムをアイテムボックスに収納していく。
……これだけ人数が居たら殲滅速度は凄まじいが、1人当たりの分け前はさすがにそう多くはならない。モンスターの出現頻度に限界があるからな。今回のような特別な事情でも無い限りは、やはりパーティメンバーは4人程度で組むのが良さそうだ。
「「「シャァッ!!」」」
「ざぶぅっ!」
「食らエッ!」
――バシュッ!
――ズバッ!
「「「シャァァァッ!?!?」」」
ヘアピンカーブ近くの茂みからリザードマン3体が飛び出してきたが、ハートリーさんとシズクが水の刃を大量に飛ばして3体に致命打を与える。2人の攻撃タイミングは絶妙で、リザードマン共は反応するいとまさえ無かったようだ。
「……シャァッ!」
――ゴォォォォッッ!!
「おっと、ハイリザードマンが混ざってたか。まあ、それくらいの攻撃なら……」
――バヂヂヂヂッ!!
3体の中にハイリザードマンが混ざっていたようで、ファイナルアタックの【ファイアブレスⅡ】が飛んでくる。もちろん、防壁に当たってこちらは無傷だ。
「シャ……ァ……」
――ボフンッ
「"アイテムボックス・収納"」
炎を吐き終えると、力尽きたハイリザードマンがドロップアイテムに姿を変える。何がドロップしたかは確認せずに、そのままアイテムボックスへと収納していく。
今回は、とにかく早く先に進むことが大事だからな。アイテムの分配はまた落ち着いた時にやればいい。
「強いわね、あのアメリカの子。ハイリザードマンを一撃で倒すなんて」
「最初はかなり不安定だったんだけどな。ちょっと教えたら、三条さんともども大きく飛躍したよ」
ハートリーさんは才能はあるが、その才能を活かすための知識が不足していた。そこを補っただけで、驚くほどのスピードで強くなっていった。今回は属性相性の良さもあったとは思うが、特殊モンスターを一撃で倒すほどの探索者になったわけだ。
「私も負けてられないわね! "飛突・貫"!」
――ヒュッ!
――ドスドスッ!
「「グギィィィッ!?」」
1列に並んで茂みから出てきたオーク2体が、胴体に同じ大きさの穴を開けられて悲鳴をあげる。朱音さんの新技のようだが、貫通力に優れた武技ということか。
――ドスッ!
「グギィィィッ!?」
しかも、飛距離もかなり長い。朱音さんが放った飛突・貫は茂みの奥に飛び込んでいき、そこでもオークを仕留めたようだ。汚い悲鳴がこちらにも聞こえてくる。
「"アイテムボックス・収納"っと。ほんと、順調な行軍だな」
悲鳴の位置は分かっていたので、その付近にあるアイテムも含めてアイテムボックスに収納する。その間も第20層アタック隊の歩みは止まらず、既に第13層も半ばほどまでやってきていた。
「でも、好事魔多しっていうからね……油断はしないわ」
「ふっ、そうだな」
朱音さん、いい表情だな。
……さて、次の第14層までは、同じく山道を登るような階層が続くらしいが……第15層からは、階層の雰囲気がまたガラリと変わるそうだ。
そして、真の難所はそこかららしい。姿を消す毒蛇……ステルスネークだったか、そのモンスターがいるせいで消耗を強いられ、嘉納さんと菅沼さんは第20層に到達できなかったそうだ。
果たして、今回はどうなるか。新モンスターと戦う機会も最近減ってきてたし、楽しみだな。
◇□◇□◇読者の皆様へ◇□◇□◇
なろうに数多ある小説の中から、私の小説を読んで頂きまして誠にありがとうございます。
読者の皆様へ、作者よりお願いがございます。
皆様の率直な判定を頂きたいので、ページ下部より☆評価をお願いいたします。
☆1でも構いませんので、どうかよろしくお願いいたします。




