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【資格マスター】な元社畜の現代ダンジョン攻略記  作者: SUN_RISE
第4章:そして始まる、現代ダンジョン探索元年

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4−59:空飛ぶ黒き要塞、フェル


 メインの道から大きく外れ、濃い藪をファイアブレスで焼き拓きながら台地のふもとまで移動する。なんだかんだで結構な数のモンスターを炎に巻き込んだようで、それなりの数の魔石や装備珠を拾うこととなった。

 ……そうして、無事に台地の近くまでやって来ることができた。


「……こうして見上げてみると、やはり大きいですね」

「30メートルくらいだと見積もってたけど、もっとありそうだよな」


 これまで遠目でしか見たことが無かったので、近くで台地を見上げてみると思ったよりも高い印象を受ける。目指す頂上は濃い藪に覆われているようで、背の高い緑色の草のようなものが頂上から少しだけ顔を覗かせていた。

 次に、目の前にそびえる岩壁へと目を向ける。こちらは全体的に白くキラキラと輝いており、指や足を引っ掛けられそうな出っ張りは一切見当たらない。


――ガッ! ガッ!

「……うん、やっぱりダメだな」

「掘るのは無理そうですね」


 まるで白砂を固めたような見た目をしているが、杖で叩いてもビクともしないくらいには強度が高いようだ。ダンジョンオブジェクトなので当然と言えば当然なのだが、どう見ても脆そうなので惑わされてしまうな……。


「コレ、どうやって上るノ〜?」

「ん? ああ、ここは素直にフェルの力を借りるつもりだ。なあ、フェル?」

「ぐおぉっ!」


 俺の頭の上で、フェルが勢い良く翼を広げた……今はミニサイズになっているので、そこまで大きくはないけどな。だが【サイズ変化】で元の大きさに戻ってしまえば、翼開長15メートル近い巨体になる。

 そんなフェルの有り余るパワーを活用して、台地の上まで飛んでもらおうという寸法だ。今までは台地の存在に気が付いていても、上る手段が無くて実行不可能だったのだが……フェルが仲間になったことで、探索が可能になったわけだ。


 ……ハイジャンプ? さすがに30メートルは一息で跳べないな。亀岡ダンジョン第11・12層で崖を駆け上れたのは、足を乗せられる出っ張りがあったからだ。

 だが、この台地は滑らかな表面を持った垂直崖だから、出っ張りに足を掛けて跳び上がることはできない。ハイジャンプで一息に跳べる高さは大体10メートルくらいだから、ジャンプ力が全然足りないのだ……。


「ぐぉっ!」

――バサァッ!

――グググ……


 フェルが一気に飛び上がり、俺たちから十分に距離を取る。

 ……そうして【サイズ変化】のスキルにより、フェルは元のインフェルノワイバーンの大きさまで戻った。ちょうど地面に足が着くよう、飛び上がる高さを調節していたようだ。


「ぐぉぉぉぉぉっっ!!!」

――ガサッ! ガサガサッ!

「!!」


 体長10メートル以上の巨体を震わせながら、フェルが特大の咆哮を放つ。

 ……その直後、近くの藪からガサガサという音が聞こえてきた。すわ戦闘かととっさに武器を構えたが、草木が擦れ合う音は少しずつ俺たちから遠ざかっていき……やがて、音は全く聞こえなくなった。


「………」


 どうやら、藪に潜んでいたモンスター共は逃げたようだ。フェルとの格の違いを感じ取ったのかもしれない。

 ……フェルが教えてくれたスキルの中に、"威圧感"や"威嚇"みたいなスキルは無かったからな。確実ではないけど、スキル効果で逃げていったとは考えにくいのだ。


「おっし、闇の竜王の威厳を周りに十分示せたようだな、フェル」

「ぐぉっ! ぐおぉぉぉっ!」


 『ふっ、そうか、我が闇の覇気に怖れをなして逃げていったか、ザコ共が』とか言っている……本当にスキル効果じゃないんだよな、今のやつ?

 ヒナタがフェルと同じことをしても、モンスター共が逃げていくまでには至らない。実力的には、現状ヒナタの方が上にも関わらずだ。これまでの俺の経験から、竜の咆哮は恐怖心を煽ってくるものが多かったように思うので、実は種族特性的なものとしてそういうのが存在しているのかもしれないな。

 ……ただフェルの場合、【ダークブレスⅠ】のような闇属性攻撃手段を本当に持ってるからややこしいんだよなぁ。いつもの厨二病的発言だとは思うのだが……。


「ぐぉぅっ!」

「『鱗の隙間に入るといい』ってさ。こういうところに乗れるから、みんな奥まで入ってくれるか?」

「了解です」

「はいヨ〜!」

「ひゅいっ!」

「ざぶぅっ!」


 本来の姿に戻ったフェルは、その体そのものが堅固な盾と化している。フェルの体を覆う竜鱗1つ1つはとても大きく、それらがフェルの体表を隙間なく覆い、外部からのダメージを防いでいるわけだ。

 ただ同時に、可動部を含む立体的な体を覆う以上は竜鱗丈の余りみたいな部分も多く発生している。その中に、お(あつらえ)え向きに人が乗り込めそうなカゴ状の窪みとなっている部位がいくつもあるのだ。そこに乗せてもらい、フェルに台地の上まで連れて行ってもらおうという計画だ。


「きぃっ!」


 なお、ヒナタはフェルと一緒に飛んでの護衛だ。フェルは体が大きくなると、小さなものに対応しにくくなるという弱点があるからだ。

 この階層に、ヒナタやフェルと互角以上に渡り合える空中型モンスターは基本的に出現しないが……まあ念のためだ。台地の上に、そういうモンスターが居ないとも限らないからな。

 フェルが放った咆哮は台地の上にも届いているはずだから、もし戦意のあるモンスターがそこに居れば……自動的に、一定水準以上の実力を持つ存在になる。フェルほどではないにしろ、厄介な相手となるだろう。


「……よし、全員乗ったな。それではフェル、よろしく頼む!」

「ぐぉぉっ!」

――バサァッ!! バサァッ!!


 フェルが力強く羽ばたくたび、黒い巨体が軽々と高度を増していく。もしこれを物理的に実現しようと思ったなら、一体どれほどのエネルギーが必要になることやら。

 改めて、フェルという存在の規格外さを認識した瞬間でもあった。






――ドスンッ

「おっ、到着したか?」


 小さな振動と共に、フェルの羽ばたき音が途切れる。どうやら台地の上に到着したらしい。

 ……とは言え、外にどんな危険があるか分からない。不意打ちを食らうと危険なので、近くにいるであろうヒナタにまずは外の様子を確認することにした。


「ヒナタ! 何か居るか!?」

「きぃぃぃっ!! きぃっ! きぃっ!」


 『インプの大きい版みたいなのが居る。戦闘態勢は取ってるけど、攻撃してくるつもりは無さそう』という答えがヒナタから返ってきた。それを聞いて、そっと竜鱗の影から外の様子を窺う。


『………』


 左手を腰に当て、右手に長さ3メートルほどの三叉槍を携えた黒い悪魔がこちらを睨みつけている。その悪魔とバッチリ目が合ったが、悪魔の表情は全く変わらなかった。

 その黒い悪魔、全体的なフォルムは確かにインプのデカい版だが、インプとは受ける印象がだいぶ違う。立派な2本の黒い巻き角に、筋骨隆々の体。両手首は赤熱し、翼と尻尾はより大きく太くなっている。

 インプは後衛タイプのヒョロい印象だったが、目の前の悪魔は典型的なパワーファイターの見た目だ。大きな槍も持っているし、ほぼほぼ間違いないだろう。それでいて、インプを超える魔力量も感じるのだから……ギフトで例えるなら【炎槍士】あるいは【ファイアランサー】といったところか。見た目的に【闇魔法】も使ってくるかもしれないが、さすがにそれは多才すぎると思うので可能性程度に考えておくことにする。


「インプの特殊個体……"フレイムデビル"か」

「ぐぉぉっ?」


 『そこは"フレイムサタン"ではないか?』というフェルの意見が入るが、サタンというとかなり高位の悪魔だという勝手な印象が俺の中にはある。もし今後、インプの上位互換みたいなモンスターの特殊個体が出てきた場合に付ける名前が無くなってしまうかもしれないのだ。


「もっと手強いのが出てくるかもしれないからな。その時のために、"サタン"という名前は取っておくことにするよ」

『ホゥ、我ヲ弱キ者ト評スルカ……実ニ不愉快デアル!』

――ゴォォォォ!


 声と音がした方を見てみると、フレイムデビルが両手首から激しく炎を噴き出させながら、こちらを一層険しい表情で睨みつけていた。どうやらフレイムデビルはゴブリンジェネラルやゴブリンキングと同じく、人の言葉で会話することができるみたいだ。

 そして、俺の言葉がどうにもフレイムデビルの逆鱗に触れてしまったようなのだが……なぜだろう、それでも攻撃を仕掛けてきそうな気配が全く感じられないのだ。怒りに燃えてはいるものの、手を出すに出せないといったところだろうか?


 ……あ、これはもしかして。


「フェルが怖いのか?」

『グッ……』

「ぐぉぉっ!! ぐぉぅっ! ぐおぉぅぅ!」


 心底悔しそうな様子で、フレイムデビルが絞り出すように呻き声を上げる。

 ……まあ確かに、フレイムデビルがインプの強化版だと仮定するならば、メインの攻撃方法はおそらく【火魔法】だろう。フェルはワイバーンの頃から素の耐性で火属性攻撃が効かず、かつ物理系ステータスもフェルの方が上だと思われるので、フレイムデビルからしたら相性最悪の相手だ。本能的に戦いを避けたがるのも納得できる。

 ただ、それを察したフェルが『実に情けない奴だ。それなりの実力(フォース)を持っていながら、我との戦いを避けようとするなど……ふっ、それだけ我が闇の波動が深く濃いということか?』といった感じで煽っていて、それを聞いたフレイムデビルが見るからに青筋を立てている。どうもプライドが高いらしく、逃げるという選択肢は既にフレイムデビルの頭から飛んでいったようだ。


 ……もっとも、こんなモンスター(特殊個体)が脇道でもない普通の道中に出てきたら、もうそれだけで一騒動になる。相手に退く気が全く無さそうなのは、こちらとしてもありがたいところだ。


「……やはり、特殊モンスターがいるのですね?」

「ああ、そうみたいだ。おそらくインプの特殊個体だが、強力な【火魔法】と槍による物理攻撃を仕掛けてきそうだ。見た目的に【闇魔法】もあるかもしれない。どうも今は攻撃してきそうな気配は無いが……」

「あれは強そうだネ〜。ネェ、アイツ私たちに任せてくれないカナ?」


 黒い鱗の影から出てきつつ、フレイムデビルの姿を眺めたハートリーさんがそんなことを言いだした。


「三条さんとハートリーさん、コチとシズク……その4人で戦うのか?」

「そう、そのツモリ。4人で戦えば、いい勝負できるカモ?」

「うーん、そうだな……三条さんも、それでいいかい?」


 三条さんも警戒しつつ外に出てきたので、念のため確認してみる。

 ……まあ、答えは大体予想できるが。こういう場面で、三条さんが否と答えることはまず無いだろう。


「はい、是非やらせてください、恩田さん」


 フレイムデビルを見据えながら、三条さんが力強く言い切った。


「よし、分かった。危なくなったら介入するが、基本的には4人に討伐を任せるよ」

「「了解(リョーカイ)!」」

「ひゅいっ!」

「ざぶぅっ!」


 その言葉と共に、4人が前に出る……うん、良い目をしているな。決して油断せず、かといって緊張しすぎてもいない、ちょうど良い心持ちでフレイムデビルの前に立てているようだ。


「ぐぉぅっ!」

「……きぃ」


 フェルは【サイズ変化】を使わず、そのまま腕を組んで事の成り行きを見守ることにしたようだ。一方で、ヒナタは不満そうに俺の左肩へと戻ってくるが、残念ながらヒナタも今回は控えだ。

 ……俺たちがいる前提での戦い方に慣れてしまっては、彼女たちにとって害にしかならないからな。ここは俺無しで、彼女たちがどこまでやれるのかじっと見守ることにしよう。



◇□◇□◇読者の皆様へ◇□◇□◇


 なろうに数多ある小説の中から、私の小説を読んで頂きまして誠にありがとうございます。


 読者の皆様へ、作者よりお願いがございます。


 皆様の率直な判定を頂きたいので、ページ下部より☆評価をお願いいたします。

 ☆1でも構いませんので、どうかよろしくお願いいたします。

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↓新作始めました
魔法に傾倒した大魔法士、転生して王国最強の魔法士となる ~ 僕の大切に手を出したらね、絶対に許さないよ? ~

まだ始めたばかりですが、こちらもよろしくお願いいたします。
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