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【資格マスター】な元社畜の現代ダンジョン攻略記  作者: SUN_RISE
第3章:流星閃き、道は拓く

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幕間3:とある横浜ダンジョン探索者の1日(後編)


「クセモノカ! ガァァァァァァァ!!!」

――ガサガサガサガサ……


 まずは4人を威嚇するように、ゴブリンジェネラルが大槍を掲げて雄叫び1発。重装備探索者もかくや、というほどの重装甲を見せつける。

 すると、砦の周りで複数の草むらがガサガサと揺れ始め……やがて、そこからゴブリンが20体ほどゾロゾロと出てきた。


「ゴブリンか、ラッキーだな!」

「ええ、一気に勝負を決めましょう!」

「いくわよ!」


 しかし、ゴブリンの姿を見た4人は歓喜の表情を浮かべた。

 ゴブリンジェネラルは【仲間呼び】というスキルを使うのだが、これはゴブリンジェネラルより弱いゴブリン種を呼び出すスキルになる。その呼ばれて出てくるモンスターの中で、ゴブリンは最も弱いモンスターになるわけだ。第10層より深い場所を主戦場にしている探索者からすれば、ゴブリンジェネラルがただ大きな隙を晒しているようにしか見えないのだ。

 ……とはいえ、無防備なところを狙われればゴブリン相手でも危険なのは事実。ゆえに、身軽な【遊撃手】がゴブリンの迎撃に向かっていく。これは、4人の中で事前に決めていた役割分担であった。


「"サンダーストーム"!」

――ゴロゴロ……ゴロ……


 【黒雷の魔女】が放つ【雷魔法】が、ゴブリンジェネラルに襲いかかる。空に大きな黒雲が展開され、雷光が時折雲間を閃いた。


――カッ!

――バリバリバリバリバリバリ!!

「グッギッグゥゥ……!?」


 やがて、黒雲に蓄えられたエネルギーが激しく発散する。その結果として放たれた無数の雷撃が、ゴブリンジェネラルを何度も撃ち据えた。

 ゴブリンジェネラルは雷撃を受ける度、苦しそうに呻き声をあげるが……その目は、【黒雷の魔女】を憎々しげに見据えていた。

 ゴブリンジェネラルは全身金属鎧を着ており、そのせいで雷属性攻撃には弱い。それでも体力の多さゆえ、サンダーストームにはしっかりと耐えきった。


「やはり、サンダーストームで一撃は無理ですね。みなさん、魔法の準備を始めるので時間を稼いで――」




「――グオオオォォォォ!!!」

「「「「ギャギャギャギャギャギャ!!!」」」」


 全身から煙を噴き上げながら、ゴブリンジェネラルが猛々しく吠える。それに呼応するように、ゴブリンも全力の雄叫びをあげた。

 ゴブリンジェネラルのスキル【鼓舞】が発動したのだ。これにより、ゴブリンの能力が底上げされる。


「はぁっ!」

――ズバッ!


 しかし、その隙に【炎騎士】がゴブリンジェネラルの懐で剣を振るう。狙いは重装備に守られていない部位、つま先だ。ゴブリンジェネラルは攻撃を受けやすい下半身を中心に、主たる部位のほぼ全てが重装備で覆われているのだが……下半身に限って言うと、なぜかつま先だけが剥き出しになっているのだ。

 ゆえに、まずはつま先を攻撃して転倒させ、その後に頭や目を攻撃するのが対ゴブリンジェネラル戦におけるセオリーの1つとなる。


「グオォ!?」


 地面を掠めるように振られた剣が、ゴブリンジェネラルの左足指を全て斬り飛ばす。


「ガァァァァ!!」

――ズドンッ!

「っと、危ないわねっ!」


 痛みに呻きながらも、反撃の大槍振り下ろし攻撃が放たれるが……【炎騎士】はこれを紙一重で回避した。言葉だけ聞くと余裕が無さそうに思えるが、実際の彼女は笑顔さえ浮かべていた。


「はぁっ!」

――ズバッ!

「グァッ!?」


 そのままの流れで右足の指も全て斬り飛ばすと、【炎騎士】はその場を離れていく。いいようにやられて怒ったゴブリンジェネラルが、【炎騎士】を追いかけようとするが……。


――グラッ……

「グォッ!?」


 1歩踏み出した瞬間に体勢を崩し、その場でよたつく。結局走り出すことはできず、【炎騎士】をまんまと取り逃がしてしまった。


 人間をそのまま大きくしたような肉体構造を持つゴブリンジェネラルは、身体的な弱点も人間と同じものを抱えている。

 ……そう、例えば足の親指を失ってしまうと、途端に人は走れなくなってしまうのだ。【炎騎士】に剥き出しの両足指を斬られたゴブリンジェネラルが、走れなくなってしまうのも道理である。


「どっせぇぇぇい!!」

――ドガガガガッ!!

「「「「ギャッ……!?」」」」


 その間、【鎚戦士】は【黒雷の魔女】に近付いてきたゴブリン共を力技で蹴散らし……。


「しっ!」

――ビシュッ!

――ドスドスッ!

「「ギャッ!?」」


 【遊撃手】は、少し離れた場所にいたゴブリンを矢の2連射で射抜く。いくらゴブリンジェネラルの【鼓舞】で能力が上がっていても、元の能力が低いせいかそれほど手強くはない。これがアーミーやアーチャーだったなら、もっと手こずっていたのだろうが……。

 そうして、ゴブリンの数がみるみるうちに減っていく中で……遂に、【黒雷の魔女】の準備が整ったようだ。


「準備完了です!」

「「「!!」」」


 その声を聞いて、全員がゴブリンジェネラルから大きく距離を取る。なにを大袈裟な、と思うかもしれないが……このパーティのメインダメージソースたる彼女の最大打点が、サンダーストーム程度の魔法であるはずがない。


「平定の雷剣よ、我が敵を撃ち抜け! "トツカノツルギ"!」


 そして、【黒雷の魔女】の切り札が放たれる。

 彼女の場合、普段使いの魔法には英語風の魔法名を当てているが……切り札たる魔法には、詠唱と和風名をセットで当てている。その方が彼女にとっては特別感が出て、威力が少しだけ上がるらしい。

 そして、今回の魔法は一撃の威力に全振りした【雷魔法】だ。


――ゴロゴロゴロゴロ……

「グムッ!?」


 ダンジョンの空を、分厚い黒雲が広く覆う。そのただならぬ雰囲気に、ゴブリンジェネラルは急いで辺りを見回すが……時、既に遅し。


――バヂ、バヂ、バヂ……


 黒雲の合間から、剣の形をした雷が顔を覗かせたが……かなり大きい。

 ゴブリンジェネラルも身長3メートル、肩幅90センチを誇る規格外の巨漢だが、それより数倍は大きな雷剣が雲間から徐々に姿を現し――




――バヂィッ!!


 その巨大さに見合わぬ高速で、ゴブリンジェネラルに向けて飛来した。


――カッ!!!

――バヂバヂバヂバヂバヂバヂ!!!


 そして、その雷剣をゴブリンジェネラルは避けることができなかった。

 高圧電流に焼き尽くされたゴブリンジェネラルは、断末魔を上げる間もなく消し炭となり……雷剣がバチバチと唸りをあげる中、誰にも気付かれないまま魔石と3色装備珠へその姿を変えた。


「「「ギャギャギャ!?」」」


 ゴブリンジェネラルの【仲間呼び】で呼び出され、倒されずに残っていた数体のゴブリンが森の中へ逃げ散っていく。それを4人は、追撃せずに見逃した。ゴブリン程度を倒すことに労力を割くくらいなら、次の階層のためにリソースを温存すべきだ……そう、4人は判断している。

 もっとも仮に追ったところで、ゴブリンは探索者の視界から切れた瞬間に消滅する仕様となっているので、無駄なのだが。どちらにせよ持ち帰れるドロップアイテムの数は有限なので、第11層以降に出てくるモンスターの単価の高い魔石や、ランクの高い装備珠を持ち帰った方が遥かに効率よく稼ぐことができるだろう。


「魔石と、装備珠3つ。回収完了だ」


 それでも、ゴブリンジェネラルの魔石は単価が高いのでしっかり回収しておく。色味は強いがそこまで大きくないので、あまり嵩張らないのも4人にとってはグッドだ。

 【鎚戦士】の男性が背負ったリュックの中に、ドロップアイテムを入れていく。


「……なんかよ〜、ずっとゴブリンジェネラルだけと戦ってられたら、一番効率が良さそうなんだけどな」

「仕方がありませんよ。ゴブリンジェネラルは1日1体しか倒せない……それが、現在判明しているダンジョンの仕様なのですから」


 【黒雷の魔女】が言った通り、ゴブリンジェネラルは1パーティあたり1日1回しか戦うことはできない。ずっと第10層に張り付いてゴブリンジェネラルばかり倒す、というようなことはできないのだ。




 ……ここからは、4人はおろか世界の探索者の誰も知らぬことだが。より正確な仕様としては、まずゴブリンジェネラル討伐の瞬間に、該当ダンジョンの第10層に居た者全員に"ゴブリンジェネラル討伐済フラグ"というものが立つ。

 次に、そのフラグが立った者が第10層に居る場合のみ、ゴブリンジェネラルが跡形も無く消滅し階段が出現する。フラグのリセットは日付を跨いだ瞬間、つまり午後11時59分から午前0時になった瞬間に行われるので、それまでは絶対にゴブリンジェネラルと戦うことはできないのだ。

 なお、時刻の基準はダンジョンがある国の標準時で行われる。現状、所属が少しでも曖昧な土地にはダンジョンを出現させていないので、そのような処理が可能となっているわけだ。




「さて、それでは先に進みましょう」

「おうよ、やっぱオークが相手じゃないと張り合いが無いな」

「リザードマンとの勝負、実に楽しみです」

「ゴブリンアーチャーも引き続き出てくるので、援護はお任せを」


 4人は連れ立って、階段を下りていく。ここからが4人にとっての探索の本番……皆、更に真剣な表情を浮かべて階段を下りていった。

 なお、これ以降の探索風景については割愛する。第11層以降はまだ語るには早く、帰り道は行きの道程を逆再生したようなもので、特筆すべきことが何も無いからだ。


 そして、以上が現時点における、日本トップクラス一般探索者パーティのダンジョン探索風景である。日本トップクラスといえど、権藤が持っているような魔法の袋を手に入れるにはまだまだ階層が足りず、また恩田のようにアイテムボックスと似た効果を持つ魔法も持っていない。拾った物は全て持ち運ばなければならないため、持込品・持出品は厳選しているパーティが殆どなのである。


 ……無限に等しい収納魔法と、威力は低いが燃費の良い魔法。そこにMP自動回復とヒナタやアキの存在が合わさり、恩田はいつの間にか凄まじいスペックを獲得するに至っている。

 だが、これからだ。【資格マスター】ギフトが真の力を発揮するのは、まだこれからなのだ……。



 幕間2話にお付き合いくださいまして、ありがとうございました。


 ……さて。第3章も間もなく終わりとなりますが、そのトリを飾るのがまさかゴブリンジェネラル程度とは、読者の皆さまも思ってはいませんよね? それならば、ヘラクレスビートルの方がよっぽど強いですからね……。

 鋭い読者の方々は、おそらくですがモンスター名までピンと来ているのではないでしょうか? 3ー93話で明らかにしていきますので、ぜひ楽しみにお待ち頂けますと幸いです。



◇□◇□◇読者の皆様へ◇□◇□◇


 なろうに数多ある小説の中から、私の小説を読んで頂きまして誠にありがとうございます。


 読者の皆様へ、作者よりお願いがございます。


 皆様の率直な判定を頂きたいので、ページ下部より☆評価をお願いいたします。

 ☆1でも構いませんので、どうかよろしくお願いいたします。

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↓新作始めました
魔法に傾倒した大魔法士、転生して王国最強の魔法士となる ~ 僕の大切に手を出したらね、絶対に許さないよ? ~

まだ始めたばかりですが、こちらもよろしくお願いいたします。
― 新着の感想 ―
更新ありがとうございます。 「武器で近接攻撃をする前衛職技が無いから、チートじゃないよ(苦笑)」とか、勘違いしてそうですよね、恩田さんって……(そっと目を逸らす) そして、すっかり恩田さんのとんで…
こんにちは。 やはり恩田さん達は、他の上澄みと比較したら一歩も二歩も更に上回った強さ&高い効率性なんですね。
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