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⑤俺はハーレムを、ビシっ!……道具屋にならせていただきます1部4章~ダンジョンで裏切られたけど、俺の人生ファーストキスはババアでした!~美女の香りにむせカエル!編  作者: ぺんぺん草のすけ
第一部 第五章 胸糞・・・胸糞・・・クソ!クソ!クソ!

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カルロス隊長! 今、戻りましたぁ!

 義男は、先ほどケテレツからそう告げられていた。


「で、それを実行すれば、アルダイン様は俺をナンバー2――騎士にしてくれるのか⁉」


 食い入るようにケテレツをにらむ義男。その圧に、ケテレツは頭をかきながら渋い顔をする。


 確かにアルダインからは“実験体を第六駐屯地に送り込め”とは命じられている。

 だが――「騎士にしてやる」などとは一言も言っていない。


 ――というか、俺、そんな願いをアルダイン様に頼んでねぇしwww


 下手にそんな要求をすれば、逆に機嫌を損ねられて自分の首が飛びかねない。


 ――そんなアホな真似、できるかボケ!


 しかし今の義男の顔を見る限り、ここで「騎士にはなれない」と言った瞬間、この実験室に永住する気満々なのは火を見るより明らかだった。


 ――それはそれで、うっとおしい……。


 なにより、義男がいると室内の空気が“臭う”。

 男臭? 加齢臭? いや、そんな上品な類ではない。

 シュールストレミングとクレオソートの殺人合体臭が鼻を突くのだ。


 世界のどこかにはこの臭気を好む者もいるだろうが、ケテレツには到底無理だった。


 ――何とかして追い出さないと……。

 ――だが、「帰れ」と言って帰るタイプじゃねぇんだよな……。


 ならば――。


「お、おお! 確かにアルダイン様は、そのようにおっしゃられていたぞ!

 第六の魔装騎兵たちを一掃すれば……騎士にしてやる、となッ!www」


 完全なる口から出まかせだった。

 そもそも実験体一匹で第六の騎士を全滅などできるはずがない。


 ――そんなことしたら、カルロスがすっとんで来て尋問コースだろ……。


 しかし、ケテレツの脳裏に一つの“可能性”がよぎる。


 ――ん? あれ? こいつ……カルロスの前で「アルダイン様に言われました!」とか口走るんじゃね?


 そうなれば、第六と第一の内戦勃発コース。

 最悪、アルダインが失脚し、政権はひっくり返る。


 ……だが、ケテレツの妄想はなぜかそこから斜め上に加速した。


 ――いや……待て待てwww

 もしアルダイン様が失脚したら……あの秘書のネルはどうなる?


 主を失った秘書は、すなわちフリー。

 すなわちこれ無職なり!


 食うにも困り、道端で途方に暮れるネル――。


 そこへ、颯爽とダンディ・ケテレツ、登場!


「ネルさん……よかったら、俺の所で……秘書をしないか?(´-ω-`)」

「本当ですか(´▽`) 助かりますわ……。

 これでいつもケテレツ様とご一緒……♥

 きゃっ、言っちゃった(*ノωノ)」


 ――そんな展開になるんじゃね?

 いいではないかwww いいではないかwww


 もはや妄想は完全に暴走していた。


「行ってこい、実験体!

 第六の門の駐屯地へ!

 そして――俺とお前の輝かしい未来のために!」


 汚れた天井を指さすケテレツの顔は、思いっきりデレッとゆるみきっていた。


 ……まあ、そんな裏事情などつゆ知らず。

 義男はその言葉を一片の疑いもなく信じ、ただただ必死に第六駐屯地での“任務”をこなしてきたのである。


 そして、そんな義男の目の前で――ガメル襲来により、第六の魔装騎兵たちは次々と倒れていった。

 そんな中、死にかけのコアラのマーチを串刺しにしたあの瞬間、義男が抱いた感情はただ一つ。


 ――これで自分もナンバー2に!


 そう思うのも無理はない。

 その顔は、ケテレツ同様にデレッと緩んでいた。


 ……で、その顔をヒロミに見られたような気がするのだ。

 ――ヤバい!


 心の奥底に隠していた“ナンバー2へのあこがれ”を見透かされた気がして、義男の全身を焦りが走った。


 ――だが、今はそんなことを考えている場合ではない……。


 コアラのマーチが――息を吹き返したのだ。

 もしかすると、タコ邪二(ジャニ)郎との会話を聞かれていた可能性すらある。


 ――いや、奴が生きていればアルダイン様との約束が果たせなくなる……。


 むしろ今こそが好機。

 息を吹き返したとはいえ、コアラのマーチが“死に体”なのは間違いない。

 ここで死んでも、「その後、容態が悪化した」と誰もが考えるに違いなかった。


 ――ならば、今すべきことは……ヒロミよりもコアラのマーチ!


 そう腹を括った“オニヒトデのよっちゃん”こと義男は、スッと立ち上がると、争いの爪痕が残る第六駐屯地へ向けて一目散に走り出した。


 駐屯地は地獄だった。


 城壁の一部はVの字に崩れ落ち、内部をさらしている。

 その切れ目の谷底には巨大ガンタルトの骸が横たわっていた。

 その骸を乗り越え、義男は駐屯地の内部へ戻る。


 内側はさらに“地獄をすり潰してぶちまけた”ような有様だった。

 咄嗟に鼻をつく血の臭い――鉄と胃液と糞尿が混じった、むせ返る悪臭。

 それが魔物のものか人のものかは分からない。


 あたり一面には血肉が飛び散り、肉片が樹脂のように地面へ貼り付いている。

 広場の中央には、黒い道のような焦げ跡が煙を立ててくすぶり、焦げた肉の臭いが喉を焼いた。


 ――さすがにひどいな……


 周囲では足を失った兵士、腕を失った兵士がうめき声をあげていた。

 いや、うめき声をあげられるだけ彼らはまだ幸せである。

 すでに下半身を失い内臓をこぼす者は、涙こそ流せど声は出ない。

 腹からこぼれた腸は地面へ滑り落ち、指一本動かぬまま天を仰いでいた。


 ――こいつ……もう死んどるわ!


 そんな状況の中、救護班が悲鳴のような声で駆け回る。

 人手が足りないのか、駐屯地の内勤の女たちまで駆り出されて手当てをしていた。


 ガメル撤退から時間が経ったせいなのか、広場の脇には救護テントが建てられている。

 そのテントの前で、戦の傷がいまだ赤黒く残るカルロスが号令をかけていた。

 血に濡れた軍服、焦げ跡のついた肩当て――それでも背筋は一本の槍のように真っすぐだ。


「息があるものは全て手当しろ! また、人魔チェックで陽性のものは、奴隷兵であろうが全て、人魔治療を行う! これはエメラルダ様のご命令だ! 速やかに行動に移せ!」


 その声は怒号でありながら、不思議と兵士たちの動揺を吸い取っていく“芯の太さ”を持っていた。

 荒れ果てた戦場でなお、誰もがその背を“拠り所”としてしまうほどの威圧感と安定感がある。

 兵士たちは、一瞬たりとも動きを止めない。


 ――チッ……出たよ、戦場の王様ぶり。声デカいし、妙にカッコつくしよ……ムカつくんだよ!!

 ――だが、いまは下手に逆らえねぇ……ここで噛みついたら俺が殺されるわ……。

 ――だから俺は……ニッコニコでご機嫌とってやるんだよ、クソが。


 義男はわざと顔をクシャッとほころばせ、手をこねこねと動かしながらカルロスの前へ進み出た。

「カルロス隊長! 今、戻りましたぁ!」


挿絵(By みてみん)


 カルロスは義男の顔を見ると、少しだけ表情を緩めた。

「義雄か。ご苦労……仲間たちのことは聞いている。気を落とすな。お前のせいじゃない……」

 その声は怒号とは違い、静かで深い。

 傷だらけの男が、他人の痛みすら背負おうとしている――そんな気配があった。


 ――うっわ……“優しい隊長”モードかよ。こういうの女にウケんだよなァ……。

 ――でも、はいはい、そうですね~って顔しときゃいいのよw 強い者には逆らうなwwwこれ、鉄則!


「大丈夫です……カルロス守備隊長……コアラのマーチも息を吹き返しましたし」

「そうか。コアラは息を吹き返したか……よかったな……」


「で、そのコアラのマーチは今どこに?」

「重傷者はあのテントの中で治療を行っている。おそらく、あの中のいずれかにいるはずだ」


「そうですか、ちょっと見舞いに行ってきます」

「今は治療中だ! 邪魔をするなよ!」


「大丈夫です! 側にいてやるだけです。目を覚ました時、誰かがいた方が安心するでしょうwww」


 その“安っぽい笑顔”に、カルロスは何かを感じたのか、ほんの僅かに眉を寄せ……それでも言った。

「義雄……お前、立派な小隊長になったな……」


 その言葉を背中で聞き流しながら、義男の足は救護テントへと早まった。

 ――よし……コアラのマーチ、探してぶっ殺す……いや、トドメ刺す……

 ――どこだ……コアラのマーチは……

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