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⑤俺はハーレムを、ビシっ!……道具屋にならせていただきます1部4章~ダンジョンで裏切られたけど、俺の人生ファーストキスはババアでした!~美女の香りにむせカエル!編  作者: ぺんぺん草のすけ
第五部 第三章 道具コンテスト ~ ブッ!質格納道具!エロ本カクーセル巻編

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ハイクショップの濁点(1)

 今や膨らむタカトの頬はリスの頬袋そのもの。

 そんな口から、唾液で溶けかけたパンの切れ端がドロリと垂れかけていた。

 マジ汚ねぇ! 汚なさぎる!

 だが、ビン子も負けてはいない。

 こちらも口の周りにパンくずをつけて、一心不乱にサンドイッチを口に運んでいる。

 しかし、ビン子はタカトと違って昼に激辛カレーをたらふく食べている。

 その分、タカトに比べて胃袋の許容量が不利なのだ。

 だから!

 ついに!

 奥の手に打って出た!

 サンドイッチから、中に挟まっている具材だけを取り出してパンを放棄する作戦を実行したのである!

 これなら、胃袋の許容量が心もとなくとも、おいしそうなものだけをたらふく突っ込めるのだ!

 さすがはビン子ちゃん! 賢い!

 だが、当然、それを見たタカトは大激怒!

「ビン子ズルいぞ! ちゃんとパンも食べろよ!」

「パンはタカトのために残してあげてるんじゃない!」

「パンなんかいらねぇよ! 中のうまいものよこせよ!」

「それ美味しくなかったんでしょ! はい!これアンパン!」

「おっ!アンパンじゃん! モグモグ! 超うめぇ!」

 などと、騒がしい二人に全く関心を寄せないクロトはドラム缶の上に並べられたタカトの道具を手にとっては興味深そうに見比べていた。

「ねぇねぇ! タカト君! コレは一体どんな道具なんだい?」

「ああ、それは『スカートまくりま扇』! 女子学生のスカートをまくる道具だ」

「スカートまくりねぇ……要は、風を自在に操る道具といったところか……で、このバニーのフィギュアは?」

「あ、それ。『スカートのぞきマッスル君』! どんな無理な体勢からも、コケることなくスカートの中を覗くことができる姿勢制御(しせいせいぎょ)のすぐれものwww」

「タカト君は、どうしてもスカートの中を覗きたいんだwww というか、これ……人体用のジャイロシステムじゃないか……で、これは?」

「それは男のロマン! 『あっ!(シュ)(ま)()(マ)ン』といって、四本の義手を使ってコンビニでエロ本を立ち読みする道具。それを使えば自分の手はポケットの中に入れたままにできるんだwww」

「ポケットの中に手を入れたままで何をするんだよwww というか……なるほど……これは、四本の独立制御ユニットってな感じか……すごいな……」

「で、それが『恋バナナの耳』。これを耳につけると、遠くにいる女の子の恋の話を盗み聞きすることができるんだ。ちょっと耳につけてみ!」

 と、タカトはパンくずのついた手で『恋バナナの耳』をクロトの耳に押し付けた。

 『恋バナナの耳』から小さな声が聞こえてくる。

「……だれだ……こんなところに……優勝カップを捨てた奴は! しかも、私のサインまで消していやがる! 許さん! マジで許さん!」

 それを聞くクロトはプッと吹き出した。

「これwww女の子じゃなくて、オッサンの声wwwしかも、恋バナじゃなくて不満の声wwww」

「だから、それ今、改良中なの! というか……どこで間違えたんだろうな……」

「というか……オッサンの不満の声だけを拾ってきているのか……どれだけ遠くから音を拾ってきてるんだよ……コレ……ということは、特定周波数帯の音波センサーとしてはすごいレベルってことなんだけど……で、これは!」

 と、クロトが長細い筒を手にした瞬間、タカトの表情が変わった。

「あぶない! それは『アイナの光』といって、圧縮された超高圧粒子を打ち上げる道具なんだ! 人間の手なんか簡単に吹っ飛ぶぞ!」

「おっと! 危ないwww危ないwwww てっきり君の作った道具だから、危険性は低いモノばかりだと思ってたよ」

「だって……ど派手なコンサートを演出するために、多少の危険は仕方なかったんだよ」

「というか、タカト君。どうして、君はこれらの道具を軍事利用しないんだい? これを武具に融合加工すれば第五世代の魔装騎兵をも凌駕する魔装装甲ができると思うだけどな」

「はあ? 何言ってんだ? 魔装装甲なんか作って何が楽しいんだよ」

「えっ? でも、融合加工を極めようとする者なら、最先端の魔装装甲を作りたいと思うものじゃないのかな」

「最先端ね……最先端のモノを作って人が泣いたんじゃ意味ねぇよ……」

「タカト君、君は勘違いしているよ。魔装装甲は人を泣かせるものじゃないよ。人を守るものでもあるんだよ」

「そんなの詭弁だよ……人を守るために生あるものを殺すのであれば、もうそれは立派な命を奪う道具なんだよ!」

「……」

「だいたい俺が作りたいものは、みんなが笑顔になってくれる道具! それが、俺の母さんと約束したことなんだ!」

「なるほど……その願いが、君の道具のネーミングにつながっているわけだね……」

「だから、決して! 人殺しの道具なんて俺は開発しない! まぁ、じいちゃんの手伝いで作る分は仕方ないから例外だけどなwwww」

「分かったよ。道具作りを志す者として、その信念は大切だ。信念のない道具は魂の入っていないタダの道具と同じだからね」


 などと話しているクロトの背後から立花どん兵衛が覗き込みボソリとつぶやいた。

「なんだ。お前、権蔵の弟子か? いや……やっぱり、違うか?」

 それを聞くなりタカトは驚いた。

 というのも、このハイクショップに来てから権蔵の名前など一切出していないのである。

 それが、タカトの作った道具を見るなり権蔵の名前が飛び出したのである。

「どうして爺ちゃんの名前を知ってるんだ!」

 それを聞いて、今度は立花が驚いた。

「爺ちゃんだと! 権蔵の奴! もう孫までいやがったのか!」

「いや、そんな事より!なんでじいちゃんの名前が出てくるんだよ!」

「そんなの直ぐに分かるわ! お前の作った道具には権蔵の癖がよく出とるからな」

「爺ちゃんの癖?」

「いいか! 融合加工の基本は融合すべき物体の万気に魔の組織の万気を重ねること。正確に重ねあえばあうほど万気は互いに混ざり合い新たな万気へと進化する。だが、それは言うほど簡単なことではない。世の中には融合加工職人がごまんといるが、権蔵ほど正確に重ね合わせる奴は見たことがない。ここにいるクロトでさえ、その重ね合わせについては権蔵の足元にも及ばん」

「そんなにすごいんだ……じいちゃん……」

「だが……分からんのは、そんなヘンテコな道具を権蔵は教えるわけはない……というか、アイツのプライドが絶対に許さんはずなんだが……」

 なんか立花に馬鹿にされているような気がしたタカトは少々ムッとした表情で食って掛かった。

「それはどういうことだよ!」

「権蔵は職人の中の職人じゃ!」

「そんなことは分かってんだよ!」

「職人ではあるが発明家ではない。言っている意味が分かるか?」

「全然www」

「あのな……権蔵は職人だから、既存の武具の融合加工をして強化するには長けている」

「うん……それはよく分かる」

「だがな、奴は発明家ではないから、新しいものを作り出すということには全く向いてない」

「……」

「早い話、権蔵は頭が固いんじゃ!」

「なるほどwww って、じいちゃんの事を悪く言うな!」

「あのな! 改良と開発は違うってこと! 権蔵がやっているのは改良。1の性能のものを融合加工によって2や3にしているだけ。それに対して、クロトやお前がやっているのは開発。1の性能のものをAやBにする。いうなれば、別次元に遷移させるアイデアを形にしとると言う訳」

「なるほど……」

「で、頭の固い権蔵が、お前のようなヘンテコなアイデアを生み出す弟子を飼いならせるわけはないはずなんじゃが……」

「べ! べつに俺はじいちゃんに飼われているわけではないからな!」

「しかし、権蔵の奴、こんなヘンテコな道具を見ても我慢ができるようになったということは、奴も少しは頭が柔らかくなったということなのかの……」

「というか、ジジイ!」

「ジジイと呼ぶな! 立花のオヤジさんと呼べ!」

「分かったよ! 立花のオッサン! ところでなんで、そんなに融合加工の事に詳しいんだ? 大体、この店、『俳句ショップ』だろ?」

 だが、それを聞く立花どん兵衛は大きく笑う。

「わははは! 馬鹿かwwwお前www」

 そして、おもむろに、ビン子と一緒にサンドイッチをむさぼっているタケシを怒鳴りつけたのだ。

「オイ! タケシ!」

「なんすか! オヤッサン! 俺! 今! サンドイッチ食べるので時間がないんすよ!」

「というか! なんで、お前が食ってんだ! それはクロトの客人のモノだろうが!」

「何言ってんすか! 時給が低いから俺!飯!食う金すらないんすから!」

「そんなことはどうでもいい! また、外の看板から『濁点』が落ちてるぞ! いい加減にしっかりくっつけとけよ! このガキみたいに、ウチの店が俳句を売っている店と勘違いするトンチンカンが出てきてしまうだろうが」

 驚くタケシがタカトをまじまじと見つめる。

「まさか! マジで君はこの店で俳句を売っているとでも思っていたのか⁉」

 なんか……タカト自身……そう言われると、大きな勘違いをしているような気がしてきた。

 だけど……

「だって……外で見たこの店のぼろい看板には確かに『立花ハイクショップ』と書かれていたもん……」

 恥ずかしさのためか、先ほどから真っ赤にした顔を誰にも見られないように下に向けながら小さな声でぼそぼそと呟いていた。

 一方、タケシはどうしてもサンドイッチが食べたいようで、看板に濁点をつけることを抵抗し始めた。

「オヤッサン! 濁点って必要っすか?」

「当たり前だろ! この店が何の商売しているか分からないだろうが!」

 確かに分からない……

 小汚い店内には融合加工の工具が散らばり、壁は油で黒ずんでいる。

 だが、言われてみれば店内には俳句が飾られている様子など全くない。

 という事は、この店は俳句ショップではないことは間違いないようだった。

 ならば、「ハイクショップ」から濁点が欠落しているという事は、やはり、この店は「バイクショップ」なのだろうか?

 それであれば、工具が散らばり油で汚れているのも納得ができる。

 そして、タケシがダンボールでサイクロンを作っているのにも合点がいく。


 仕方なさそうにタケシは黒いガムテープを握り締めて外に出る。

 そして、木箱を二つほど重ねると、その上に登りボロボロの看板にガムテープを張り付けだした。

 どうやら、この黒いガムテープを二つ並べて貼り付け濁点の代わりにしようというらしい。

「コレでいいんでしょ! オヤッッサン!」

 だが、立花どん兵衛は外に出て看板を確認することもなく、

「おお! それでいい! それでいい! というか、どうでもいい!」と、タケシが残していったサンドイッチを頬張りはじめていた。

 しかし、タカトは気になって仕方がない。

 ――ハイクショップでなければ、おそらくこの店はバイクショップ!

 だが、何かそれも違うような気がするのだ……

 そう、この店にはバイクが一台もないのである。

 えっ? サイクロン?

 あのサイクロンは……底の抜けたダンボール……エンジンもついてなければ、タイヤもついていない。

 ということで、いても立ってもいられないタカトは急いで外に出るとボロイ看板を仰ぎ見た。

 なんと!

 そこには!


『立花ハイグショップ』


「って、この店、ハイレグショップかよ!」

 思わずツッコんでしまったタカトは声を大にしてしまった。

 それを聞いたクロトが店の中で大笑い。

「なんで、こんな小汚い店でハイレグなんか売るんだよwww」

 確かにそうである。

 Wikipediaによると、ハイレグとは「ハイ レッグ カット(High leg cut)の略称で、主に女性用(男性用もある)の下着(パンティーや水着、レオタード類のデザインの一種」とある。

 そんなハイレグをこんな小汚い店で女性たちが買うだろうか?

 もし、試着などしようものなら……フィッティングルームの上部の隙間からどん兵衛タケシとがよだれを垂らしながら覗きだすに違いない。

 ハイ レッド カード!(Hi red card)

 それだとwwwハイレドwwww

 というか、そもそも、ハイレグというものは奇麗でこじゃれたショップで買いたいと思うものである。

 それが例え男であったとしても、とてもじゃないがこんな店で買いたいとは思わない。

 だって……なんかすでにカピカピに汚れてそうだもん……

 ということで、余計に混乱したタカトはクロトに対して怒鳴った。

「なら! この『ハイグ』ってなんなんだよ!」

 クロトは笑いながら店の外に出て看板を見上げる。

「ああ、それwwwこれのこと!」

 と、一つの融合加工の道具をクルクルと指で回すのだ。

 融合加工の道具の事であればタカトは少々うるさい。

 だからこそ、クロトが回している道具がすでに壊れていることは直ぐに分かった。

「それブッ壊れてるだろ!」

 というか、壊れたゼンマイ時計のように至る所からいろんなものがビローンと飛び出しているのだ。

 融合加工に疎いビン子にだって、それが壊れていることは一目瞭然。

 だが、クロトはニコニコとしながら、さも当然と言わんばかりに答える。

「そうだよwwwだって、ここはリサイクルショップ。国中の廃具(ハイグ)が集まってくるところだからwww」


 立花は使われなくなったり壊れた融合加工の道具、すなわち廃具(ハイグ)を集めてきては、それを直すことを仕事としていた。

 通常、融合加工された道具はリサイクルなんてされやしない。

 壊れた道具のほとんどが、そのままゴミ捨て場に直行するのである。

 だが、融合加工は唯一無二のもの。

 同じように見えても同じものは存在しない。

 だから、優れた道具であれば、それをリサイクルしてでも使いたいという思いは、誰にでもある。

 しかし、融合加工のリサイクルというのは簡単にできないのだ。

 なぜなら、融合加工というものは、どうしてもそれを作った職人の腕によって、その性能や能力が大きく左右されてしまうのである。

 例えば、盾の硬度強化の融合加工を施したとしても、その職人によって使用する血液量も違えば硬度も違う。はたまた、その重さ、輝きなども変わってくるのだ。

 そのため、元の状態に戻そうとすれば、その作った職人の癖を熟知しないといけなかったのである。

 確かに癖を熟知すればいいと言えば、それまでなのであるが、これが意外と難しい。

 というのも、職人の癖なんて言うものはどこにも説明書きなんてされていない。

 あるのは目の前の壊れた道具だけ。

 その道具を一つ一つ丁寧に分解していく過程で、その職人の心を理解していかなければならないのである。

 それは膨大な数の職人の癖を熟知することと同じこと。

 まるで、頭の中に職人の図鑑を作り上げることに等しいのだ。

 こういえば、その作業がいかに大変かが分かってもらえるだろう。

 だからこそ、リサイクルを行う職人なんて、ほとんどいないのが現実なのだ。 

 そう、立花どん兵衛はこう見えても、この国のありとあらゆる融合加工職人のクセや性格を熟知していた。

 だからこそ権蔵の性格も作られた道具から感じ取っていたのである。

 そういう意味でいえば、立花どん兵衛もまた一流の融合加工職人と言えるのであろう。


 そんな立花が指先についたマスタードをベロベロとなめながら外に出てきた。

「そんなもんだから、このクロトはこの店に入り浸っていやがるのよwww」

 それを聞いたクロトは極まりの悪そうな笑みを浮かべる。

「オヤッサンwww入り浸っているって、ちょっと酷いなぁwwwwちゃんと、さっきだって居候代を払ったでしょうwww」

 って、さっきの金貨一枚は俳句の代金じゃなかったのかwww

 その金貨を指先でクルクルと回しながら立花は大きなため息をついた。

「というかさ、クロト。お前だったら融合加工院に行けるだろうがよ。こんなところにいつまでもいるもんじゃないぞ」

「融合加工院か……確かに魅力的なんだけど……私にとって、それは今じゃないんだよね……」

 融合加工院、それは融合加工を目指す者なら一度は行ってみたいところである。

 タカトなんて融合加工院に行かせてやると言ったら、おそらく、ビン子を売ってでもその話に乗ることだろうwwww

 そんな融合加工院にクロトは行きたくないというのだ!

 だから、当然、タカトの反応は、

「なんでだよ! 融合加工院だぞ!」である。

 しかし、クロトは頭をボリボリと搔きながら、

「うーん。なんというか、融合加工院ってお上品なんだよ」

「お上品?」意味の分からないタカトは再度尋ねた。

「分かりやすく言えば、あそこで作られる融合加工には面白みがないんだよ。例えば、タカト君、君の作った道具なんか凄く面白い! めちゃめちゃウェットにとんだ発想だよ!」

「え! マジ!」テンションアゲアゲのタカト君www

「だけど、おそらく、今の君のままでは融合加工としては評価されることは絶対にないだろう」

「え…… マジ……」テンションダダ下がりのタカト君www

「在野にあふれた君のような発想を拾い上げるだけの度量が融合加工院にはないんだ」

「……」

「でも、私は、タカト君の作った道具のようにアグレッシブな発想を見てみたい。そして、それを自分の中にドンドンと取り込んでいきたいんだ」

「……」褒められているのかけなされているのか分からないタカトの表情はグニグニと動いていたwww

「だから、今は、そんな道具に触れていたいんだ。で、国中の壊れた道具、特に権蔵さんのような優れた融合加工の道具たちが集まってくるこのハイグショップは私にとっては一番と言う訳」

「「「なるほど……」」」

 と、タカトと立花とタケシは三人並んで腕を組みながら大きくうなずいていた。

 って、立花とタケシはクロトの気持ちを今、知ったのかよwww

 まぁいいじゃんwww

 そんなことをまったく気にしていないクロトは、

「しかも! オヤッサンは廃具(ハイグ)の目利きについては超一流だから、私にとっては師匠みたいなもの。君にとっての権蔵さんみたいなものだよwww」

 と、三人に向かって軽くウィンク。

 なぜか妙に照れた様子のどん兵衛は話をそらそうと、ふと何かを思い出したようであった。

「権蔵といえば、たしか、今日、第七駐屯地から届いたゴミにの中に妙なものが入っていたなwwww」

「「「妙なもの?」」」

 今度はクロトを含めてタカトとタケシが腕を組んで首を傾げた。


 そのゴミはタカト達が内地に帰る直前、第七駐屯地から帰還する商隊が駐屯地内の壊れた道具やゴミを内地へと運んだものであった。

 で、その中で金目になりそうなものはとりあえずリサイクル

 商人とは1銅貨たりとも無駄にしない生き物なのである。

 日が高くのぼるあぜ道にずらりと並んだ荷台の影が並ぶ。

 そんな荷台の上から立花どん兵衛は再利用できそうな道具を見繕っていた。

 だが、そんな時、妙な道具を目にしたのである。

 それは確かに権蔵の癖がはっきりと出ていた。

 ただ……絶対に権蔵が作ったものかと聞かれれば、そうだと言い切る自信がどん兵衛には持てなかった。

 というのも、その道具の形が少々変なののである。

 権蔵といえば堅物の職人である。

 作るものといえば盾や剣、鎧といった武具一般。

 まぁ、普通の一般的にイメージできる形である。

 それが……目の前のあるのは巨大なチ〇コなのであるwwww

 たしかしに、これもイメージできるといえばイメージできるwwww

 いや、もしかしたらチ〇コに見えるだけで巨大な棍棒なのかもしれない。

 その証左として、ちゃんとチンコの付け根には握り手が付けられていたのだ。

 だが、もう一度見直してみても、やはりチ〇コなのだ……

 それも、細部に至るまで精巧に作りこまれたたチ〇コ。

 これを棍棒とチ〇コのどちらに見えると聞かれれば、おそらく10000人中9999人がチ〇コと答えることだろう。

 それぐらいチ〇コなのだ。

 しかも、そのチ〇コ……なぜか、金属で作られている。

 その重量といえば……その一本で、それを積んでいる荷馬車の車輪が地面に食い込んでいるほど。

 開血解放する前で、この重量である……

 ――こいつが開血解放したらどれだけの重量になるというんじゃ……こんな道具、魔装騎兵だって使えんぞ……

 おそらく、その瞬間、荷馬車は砕け、チ〇コの先端はオ〇ホに突っ込むかの如く地表に半分ほど埋まってしまうことだろう。

 だが、この道具の開血解放の効果を見抜いた立花どん兵衛をしても、その巨大なチ〇コ型の棍棒の使い道が分からなかったのである。

 ということで、

「こんなもの!いるかぁぁぁ!」

 立花どん兵衛は巨大なチ〇コ型の棍棒の買取を拒否した。

 さてさて、これには商人たちも困った。

 巨大なチ〇コ型をしていても、金属の塊! 高い値で売れると思っていたのだが、まさかの買取拒否!

「なんでやねん!」

 納得のいかない商人たちは食って掛かった。

「だいたい!これを運んでくるのがどれだけ大変だったか分かってんのか!」

 それをギラっと怖い目でにらみつけるどん兵衛!

「お前ら! 分かってんのか! この先端につけられた穴! おそらく、開血解放した瞬間! 魚臭い液体がここから噴き出すかもしれないんだぞ!」

「なんだって!」

 これには商人たちも驚いた。

「コレだけの巨棍だ! 男だって妊娠するかもしれないんだぞ! やってみるか?」

「いや! 結構だ! というか……そんなに危ないものだったのか……」

「分かったら、それをさっさと人目の付かないところに捨ててこい!」

「分かったよ……人目の付かないところといえば……スラム街のゴミ捨て場ぐらいしか捨てるところはなさそうだな……はぁ……タダ働きかよ……マジで、これ作ったやつカスだな……」

 と、渋々、荷馬車を引きながらハイグショップを後にする商人たちを見送りながら、どん兵衛は思った。

 ――男が妊娠するわけないだろーが! バーーーーカ!

 だが、そうはいっても、どん兵衛もまた理解ができていなかった。

 ――というか、あの道具は……一体、何に使うんだ?


 と、クロトたちに巨大なチ〇コ型の棍棒の話をしたどん兵衛であったが、なぜかタカトが下を向き妙にモジモジしはじめていた。

「それ……多分……俺が作ったやつ……」

「なに! あれはお前が作ったものなのか!」

 どん兵衛は驚いた。

 というか、何か腑に落ちたような表情をしていた。

「どおりで権蔵が作ったにしては、変なものだと思ったわい」

 だが、権蔵の弟子であるこの小僧が作ったというのであれば納得ができる。

「で、あれは何をする道具なんだ?」

「ああwwwあれ!」

 と、急に元気になったタカトは意気揚々と!

「聞いて驚け!仮面ダレダーのシーズン1に登場するツョッカーの怪人『イマラッチョ大佐』が使用する『チ〇コ型の棍棒』だぁぁぁぁぁ!」

「「イマラッチョ大佐!?」」

 仮面ダレダーなど見たことのないクロトやどん兵衛は頭を悩ませた。

 だが、タケシは興奮するように声を大きくする。

「おおお! イマラッチョ大佐! イマラッチョ大佐の必殺技といえば!『イマラッチョアタック!』 チ〇コ型の棍棒を激しくつきまくるあれだろ!」

 それを聞くタカトは仲間ができたって感じでテンションマックス!

「そうそう! 仮面ダレダーに登場するヒロインたちの女性の尊厳というあらゆる場所を攻めまくり二度と普通の生活が送れないぐらいに精神崩壊させるというあの技だよwww」

「あれは!超ディープな技だよな!」

 などと、拳を握り締め力説をするタカトとタケシであったが、それを聞く二人はキョトン。

「「……で?」」

「そんなイマラッチョ大佐のステージ用の棍棒を作ってくれって、第七駐屯地にいるじいちゃんに依頼が来たんだけど、じいちゃんが仮面ダレダー知らないって言うから、俺が代わりに作ったってわけ」

 いや!違うだろ!

 お前が泣いて「俺に作らせてくれって!」懇願したんだろうが!

 と、サンドイッチを頬張りながらビン子が思ったのかどうかは知らないwww

「で、そのステージ道具がなんでゴミに?」

「いやぁぁぁwww ちょっと、凝りすぎちゃって想定よりも重量が大きくなっちゃってさwwwwしかも、使用する血液がバケツ一杯ほどいるようになっちゃってwwwでもって、使えねぇってことにwwww」

 それを聞いたタケシが笑いながら突っ込んだ。

「確かにそれじゃ使えやしないな! わははははは!」

 で、クロトも苦笑いしながら、フォローを入れる。

「タカト君らしいやwwww」

 だが、立花どん兵衛だけは真顔で顔を引きつらせていた。

 ――こいつ……権蔵の血液一滴の技術を使ったうえで、バケツ一杯の血液が必要だというのか……いったいどれほどの開血解放のパワーが出るというんだ……

 そして、今度は少々、悔しそうな表情に変わり唇をかみしめていた。

 ――わしは……もしかしたら、とんでもないお宝を見過ごしてしまったのかもしれん……廃具(ハイグ)士として一生の不覚……

 しかし、諦めるのはまだ早い。

 というのも、それを作った本人が目の前にいるのだ。

 それなら、その技術のすべてを見せてもらおうではないか。

「おい! タカト君! 外で立ち話もなんじゃ。中に入って、融合加工の道具作りでもしていかんか?」

 どん兵衛はタカトを店の中にいざなった。

「えっ⁉ いいの?」

 それを聞いたタカトは目を輝かせた。

「ああ。かまわんよ。しかも、店にある魔物素材は使い放題じゃwwww」

「マジ! あとでお金払えって言うのは無しだぜ」

「アホか! わしはそこまでせこくないわい!」

 その後を追うクロトとタケシ。

「そしたら私たちも融合加工づくりをしましょうかwww」

「俺はまた!サイクロン制作の続きだ!」


 で、店内に一人残されていたビン子ちゃんは、残ったサンドイッチを全部平らげておりましたとさwww

「シュールストレミングサンド! まじ!うめぇ! いや、まじ!くせぇ!」


 え? ルリ子さん?

 ルリ子さんならサンドイッチを買って戻ってきたら、すぐに帰ってしまいましたよwww

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