表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
⑤俺はハーレムを、ビシっ!……道具屋にならせていただきます1部4章~ダンジョンで裏切られたけど、俺の人生ファーストキスはババアでした!~美女の香りにむせカエル!編  作者: ぺんぺん草のすけ
第五部 第二章 第七駐屯地

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

545/644

タカトの脳の9割はオッパイでできている

 ケケケケケケ……


 キーストーンがのる台座の向こう側では、天を仰ぐアイナが乾いた笑い声を立てていた。


 その様子を見たモーブは透明なタカトにささやいた。

「坊主、逃げろ……」

「逃げろって言っても……」


 逃げようにも、この地下の部屋には出口は一つしかない。

 しかも、今タカトとモーブは、この部屋の一番奥に位置しているのだ。

 そんな二人の前にはアイナが立ちふさがり出口をふさいでいるのであった。

 だが、そんなことはどうでもいい。

 先ほどからタカトの腕を掴むモーブ腕からは、赤き血がとめどもなく垂れ落ちていた。

 ――むさいオッサンと言えども、こんな死にかけオッサン見捨てていけるかよ


「ワシがあの女の気を引く」

 モーブはディアボロマントで見えないタカトの頭を引き寄せるとそっとつげた。

 ついにこのおっさん自暴自棄にでもなったのか?


 だが、モーブの目は強い光を伴って、いまだ反り返って笑い続けるアイナを睨みつけていた。

 ――あの女の行動はどこかおかしい……


 仮にアイナが、魔人国側のスパイであれば、モーブが動けぬ今、キーストーンをさっさと奪っていけばいいだけのことである。

 そのキーストーンこそがこの戦いの目的なのだから。

 また仮に、アイナが融合国を裏切ったのであれば、魔人国側にキーストーンを持ち込めばそれ相応の見返りが見込めるというものなのである。


 だが先ほどからアイナはキーストーンが目の前にあるというのに、その存在に全く興味をしめそうとしない。

 ――おそらく女の目的はキーストーンのほかにあるという事か。


 なら、殺戮か?

 ただ、ただ、人を殺したいだけなのか?

 村が全滅したのも、きっと、この女の仕業なのだろう……

 であれば、ただ生きとし生けるものを片っ端から襲っているだけとも考えられる。


 ――ならなぜ……わざわざ、こんな地下に来たというのだ?


 そう、この地下室にはモーブとタカトの二人しかいないのである。

 ここに来るまでの上の階には守備兵たちがわんさかといたはずなのだ。

 殺したいだけなら、上の階の方が大量に人を殺せるのである。

 もうすでに、上の階では殺戮が行われた後なのか?

 いやそんなはずはない。

 自分が壁に打ち付けられるた時に発せられたタカトの叫び声以外なにも聞こえなかったのだ。

 如何に、ここが地下室であったとしても、他の階の大きな音ぐらいは届くはずなのである。

 そしてまた逆に、この地下室で発生した大きな音も上の階へと響き渡る。


 ――という事は、ここに来る意味があったという事か……なら、何がこの部屋にあるというのだ……

 キーストー以外にあると言えば、モーブ自身とこの貧弱な小僧のみ。

 この二人のうちのどちらかを襲う理由があったと考えるのが普通だろう。

 そのうえで、この小僧と自分を比較した時に、騎士である自分の方が理由がありそうだ。

 フィールド外にいる騎士は不死ではない。

 今であればモーブ自身を殺すことも可能なのである。

 ――それを狙ったか?


 だが、先ほどからのアイナの様子は、それを狡猾に計算したものとは思えないほど動きに統一性が無いのだ。

 ――あの女の様子、まともに自分で思考をしているとも考えにくい……


 となると、考えられる結論は一つである。

 あの女は誰かに操られているのか!

 それは誰だ?

 魔人騎士の誰かか?

 いや、もしかしたら、融合国の誰かかもしれない……

 第二の後継騎士を選ぶタイミングでの襲撃……

 一番得をするのは……


 ま

 さ

 か

 アルダインか?


 だが、アルダインが自分を襲ってくるとは思えない。

 ……思いたくない。

 だが……

 やつなら……ありえる……

 しかし、第三世代の回収命令を出したのもアルダイン自身……

 分からぬ……

 いや、今はそれを考える時ではないか!


「走れ! 坊主!」

 モーブの腕がタカトを力強く押し出した。


 その勢いで尻餅をつくタカト。

 だが、そんなタカトの背後でさらなる別の恐怖が大きくなっていた。


「生きていたのか!」

 アイナの胸が大きく息を吸い込んだかと思うと再び背後へと反り返っていた。


 咄嗟に後ろを振り向いたタカトは叫んだ。

「アイナちゃん! やめてくれぇぇぇぇ!」

 再びアイナの攻撃をモーブが受ければ、今度は確実に死ぬ。

 というか、アイナちゃんが人を殺すところなんて見たくはない。

 アイナちゃんは、俺の、いや聖人世界のアイドルなんだぞ!


 次の瞬間、反射的にタカトの体がアイナへとはねていた。

 アイナに向かって一直線。

 貧弱なタカトにとって、自らの体をすべてぶつけてアイナを押し倒すぐらいしか対処する方法を思いつかなかったのである。


 だが、限界まで反ったアイナの体が跳ねかえってくる。

 アイナの顔が再び正面に戻った時、あのピンクの麗しい唇からすさまじい衝撃波が発せられるのだ。


 ――間に合わん!

 アイナに向かって飛び込んだタカト。

 だが、アイナに届くには少し距離が遠かった。


 このままでは衝撃波は突進するタカトを直撃し、そのまま背後のモーブを巻き込むことになるだろう。


 ――ちっ! どうすれば? どうすればいいんだ!


 その刹那の時間、タカトの脳がフル稼働した。

 タカトの脳の9割はオッパイでできている。

 残り1割は、エロエロハーレムの果てしない欲望。

 すなわち、タカトの脳は全てエッチな妄想でできているのだ。

 そんなタカトの脳が、今、常にオッパイやエロイことを想像するために活用していた脳内領域をすべて解放した。


 マ・ジ・タ・カ・ト・降臨!


 かつてないほど真面目モードになったタカト。

 その脳内コンピューターでは、現状、可能性のある打開策のシュミレーションが演算されていた。


 導き出される一つの解答。


『非常に危険! 非常に危険!』

 ――そんなことは分かってんだよ!


『生存確率0.01%』

 ――分かっているんだよ! そんな事も!


 以前、森の中で豚の魔物ダンクロールと対峙した時と全く同じ計算結果。

 ――俺の脳みそ、使えねぇぇぇ!


 ……だけど

 オッチャンが!

 アイナちゃんが!

 俺が、今、何とかしないとダメだろうが!


 ピコーン!

 その時、タカトは何かをひらめいた。

 ちなみにこの間、0.001秒の世界!


 俺が今、身に着けているのは何だ?

 そう、吸収した光波、音波を対角線上ポイントに吐き出すディアボロマント。

 だが、あの衝撃波のエネルギーは吸収できない。

 そう、許容量を超えたマントは暴発することは間違いない。


 だが、暴発までには時間がある。

 それまでに吸収したエネルギーは、どこに向かう??

 当然、対角線上の背後へと……

 なら、そのマントを一枚の布として広げればどうなる?

 対角線上のポイントは存在しなくなり、出口を失ったエネルギーはマントの中で蓄積、反響する。

 ならば……


 何もない空間から突然タカトの姿が現れた。

 タカトは身を包むディアロボロマントをつかみ取ると瞬時に目の前で広げていた。

「アイナちゃん! 正気に戻ってくれ!」


 突然アイナの直前に広がる黒い面。

 その黒い四角の空間がどんどんとアイナに向かって迫ってくる。

 それは、タカトの広げたディアボロマント。

 出口を失った光は、ディアボロマントに呑み込まれていった。


 だが、アイナの体は止まらない。

「死ねぇぇぇぇぇ!」

 正面に戻ったアイナの口から、先ほど同様の巨大な衝撃波が発せられた。


 だが、次の瞬間、アイナの直前で大爆発!……が起きなかった。


 それどころか、タカトが広げたディアボロマントに包まれて転がっていくアイナの体。


 ずさぁぁ

 勢いそのままにアイナの体が地下室の石畳をこすっていく。

 石畳にたまった分厚いほこりがアイナの元まで太い線を引いていた。


「アイナちゃん! アイナちゃん! アイナちゃん!」

 ディアボロマント越しにアイナをしっかりと抱きしめるタカト。

 それに抗うアイナ。

 アイナと一緒に転がっていったタカトは必死にそんなアイナを押さえつけていた。


 アイナに飛びつく直前、ディアボロマントを脱いだタカトは、それをアイナの目の前に広げた。

 そして、何を思ったのかそのマントの中心に噛みついたのである。

 タカトの口に引っ張られるマント。

 平面の中心に一点のくぼみができた。

 それと同じくしてアイナから発せられた衝撃波はディアボロマントに吸い込まれていく。

 当然、出口がない衝撃波はマントの中にたまっていった。

 だが、行き場を失った衝撃波は、マントのくぼみへと収束しはじめる。

 一点へと集まる衝撃波のエネルギー。

 次の瞬間、タカトは噛みついたマントをぱっと放した。

 急激に開放されたエネルギーは膨張、反転。

 マントを突き破り、アイナの元へと飛び出した。

 それは、アイナが引き起こした同種の波動。

 その波動が、位相を反転してアイナめがけて打ち出されたのである。

 反転した音波は、アイナの音波を打ち消した。

 ディアボロマントが吸収することが出来る限界まで蓄積したエネルギーである。

 残っていたアイナの衝撃波のエネルギーが強いといえど、打ち消しあってしまえば、タダの女の子の叫び声。

 貧弱なタカトを吹き飛ばす力すら残っていなかった。


 「アイナちゃん❤ アイナちゃん❤」

 タカトはディアボロマントの中でもがくアイナを必死に抱きしめる。

 頬を擦りつけ、腰まで振って……

 しかしもう……限界!

 うっ!


 アイナもまた抗う動きが小さくなって、遂に動きを止めてぐったりとなった。


 「た……か……と……く……ん……」


 マントの中からアイナのか細い声が聞こえた。

 もしかして、アイナチャンの意識が戻ったのか?

 タカトはディアボロマントをかき分けてアイナの姿を探し始めた。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ