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⑤俺はハーレムを、ビシっ!……道具屋にならせていただきます1部4章~ダンジョンで裏切られたけど、俺の人生ファーストキスはババアでした!~美女の香りにむせカエル!編  作者: ぺんぺん草のすけ
第三部 第一章 病院ではお静かに

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天使とバナナとミニキュウリ(3)

 人魔収容所でムフフな本の存在を知り怒り狂っていたビン子。

 収容所から帰った後、権蔵の言いつけで小門と家を行ったり来たりしていた。

 権蔵は小門内の環境を整えるため家になかなか帰れない。

 道具のあれを持ってこい! これを持ってこいと逐一タカトに命令するのだ。

 そのたびに、ふくれっ面で道具を取りに家へと帰るのである。

 また、ビン子はビン子で、権蔵の家に隠れているミーアに食事を運んだりする仕事を担っていた。

 タカトが、家の作業場で道具を揃えたり頼まれた材料を加工している間、ビン子はミーアと別の部屋で楽し気におしゃべりをしている。

 今にして思えば、ただ単におしゃべりだったのだろうか……

 権蔵の作業場にこもっていたタカトは、ビン子の行動なんて確認することができなかったのである。

 時折聞こえてくるビン子とミーアの声……

「大根よね……」

「大根だな……」

「タカトなんて、ミニキュウリよ! いや、ミニミニキュウリかも!」

「ミニミニキュウリか! ははははっは」


 タカトの手に握られた魔物券がかすかに震える。

 その券を光にすかすタカトには、嫌な予感しかしなかった。

 権蔵の手伝いが忙しすぎて、ついうっかりベッドの下のムフフな本の存在を確認することを忘れていた。

 まさか、ビン子の奴、俺のムフフな本を本当に捨てたとか……

 もしかして、捨てる時に中を見たとかないよね……

 だが、ハッとタカトは気づいた。

 あっ……だからか! だから、俺の事を貧相と言ったのか!

 これなら、先ほどのビン子のセリフにも合点がいく。

 なるほど、あれは、男優さんだからな! 仕方ない!!

 一般人の俺と比べても仕方ないんだって!

 俺は平均よりもちょっと大きいぐらいなんだからな!

 そこんとこ、ビン子は、理解してないんだな、バカだなぁ。

 だが、そうであるならば、ムフフの本の末路は決まる。

 ……って、本当に本を捨てたんと違うのか! あいつ!

 本を取ればビン子の貞操が失われる。

 また逆に、ビン子の貞操を取れば、ムフフな本は捨てられたことになる。

 どちらも嫌だ……いやなんだぁぁぁ!

 涙目になったタカトは、エメラルダに助けを求めんと振り向いた。

「俺の……俺の……宝物がなくなったぁ……」

 その様子に驚くエメラルダ。

 だが、宝物が何をさすのかさっぱり分からない。

 まぁ、この時点で思い出すという事は、そうたいしたものではないのだろう。

 エメラルダは、自分の魔物券もタカトに手渡し、なだめるように優しく声をかけた。

「大丈夫よ! ここにはタカト君に賭けた万魔物券があるんだから。これだけあれば大体のモノは買えるわよ!」

 いや……ビン子の貞操は戻ってこないだろ……

 だが、すでにタカトの意識は別にあった。

 タカトは、もう一度、手元の券をまじまじと見る。

 万魔物券……

「ちなみにコレ、一体いくらになるの?」

「うーん、よく分からないけど、大銅貨2枚の一万倍だから、大金貨2枚ぐらいじゃない?」

 何ですとぉぉぉぉぉ!

 この券一枚が大金貨2枚とは……

 エメラルダさんから貰ったものも含めると、大金貨4枚……

 どこぞの国で売られている高級車レクサスが買えてしまうではないか。

 こんな大金があれば、ムフフな本は一体何冊買えるのであろうか。

 ビン子に捨てられた本など、もはや無用!

 俺は、新しい出会いに旅立つのだ!

 すでにタカトの体は、2枚の魔物券を握りしめ換金所へとダッシュしていた。


「あれ? タカトは?」

 そこに戻ってきたビン子はエメラルダに尋ねた。

「タカト君なら、魔物券を握りしめてどこかに行ってしまったわよ」

 何ですとぉぉぉぉぉ!

 ビン子の直感が何かを察した。

 タカトの事だ、大金を手に入れたら、ろくなものを買わないかもしれない。

 あれは私の魔物券!

 せめて、自分にもエビフライの一本でも買ってもらわないと納得いかない。

「コラ待てぇ! タカトォォォォ! エビフライ買ってよぉぉぉ!」

 ビン子もまた、タカトの後を追った。

 それを見送るエメラルダは、微笑んだ。

 この二人といると、少し幸せな気分になれる。

 辛い自分の過去を一瞬であるが忘れることができた。

 エメラルダは、タカトが地面に広げた優勝賞品をまとめると、ハヤテと共に駆け出した。

「待ってよぉぉ! タカト君! ビン子ちゃん」

 リンはため息をつきながらついて行く。

 ――この人たちは……ここを一体どこだと思っているのでしょうか……一応、私がいるとはいえ、魔の融合国ですよ……いつ食われたっておかしくないのに……本当に……面白い人たち……



 











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