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⑤俺はハーレムを、ビシっ!……道具屋にならせていただきます1部4章~ダンジョンで裏切られたけど、俺の人生ファーストキスはババアでした!~美女の香りにむせカエル!編  作者: ぺんぺん草のすけ
第三部 第一章 病院ではお静かに

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スネークホイホイpart 2(2)

 ハトネンに追いかけられるダンディは、今やトラックの中心ほどまで走っていた。

「おい少年! ゴールに向かって走らなくていいのか?」


 その言葉に我に返るタカトとハヤテ。

 その二人の目の前では、ハトネンに吹き飛ばされたグレストールが頭を振りながら、やっとのことで鎌首を上げようとしていた。

 ハヤテはとっさに駆け出した。

 今ならば、グレストールの脇を潜り抜けることができるかもしれない。

 背に乗るタカトは、その勢いに振り落とされまいと、ハヤテの首筋の毛をギュッとつかんだ。


 しかし、そのチャンスに気づくのが少し遅かった。

 すでに、今やグレストールの三つの首は起き上がり、ハヤテたちの動きを追っていた。

 だが、もう、そんなことを気にしている暇はない。

 ハヤテは体を低くしてグレストールの懐に飛び込んだ。


 うねる三本の首の影。

 首が作る隙間が刻一刻とその形を変える。

 ハヤテは止まることなく次々と隙間を潜り抜けていく。

 だが、一つの蛇の口がハヤテを追って、みずらかの腹の下へと潜り込んだ。

 蛇の牙がハヤテの後ろ足を挟もうと勢いよく閉じる。

 しかし、ハヤテも勢いよく跳ねる。

 次の瞬間、ハヤテたちの体は、蛇の影から光の下へと抜け出していた。

 グレストールの背後へと躍り出たハヤテの足が地面を掴むと、一気にゴールに向かって駆け出した。

 だがしかし、ハヤテの体に、黒い影が落ちてくる。

 その頭上には残る二つの蛇の頭が迫っていたのだ。


 ――逃げきれん!

 背後を気にするハヤテ。

 その視界の端に迫りくるグレストールの緑の目の存在を感じた。

 だが、次の瞬間、ハヤテの体が軽くなった。

 と言うより、おもりが取れたようにふわっと浮き上がるような感じ。


 タカトが叫ぶ。

「ハヤテ! ゴールを目指せ!」

 いつの間にかハヤテの背から飛び降りていたタカトは、己が足でトラックにしっかりと立っていた。

 だがその膝は、若干、小刻みに震えているのは笑えるが、それはココだけの秘密。

 そう、タカトはグレストールの口に追いつかれそうになったのを見て、ハヤテの背から飛び降りていたのだ。

 タカトは飛び降りる直前に、思ったのである。

 このままでは後ろから迫るグレストールの口に二人とも確実に食われる。

 だが、自分がハヤテの背から降りれば、ハヤテのスピードは加速する。

 加速したハヤテはグレストールの口を振り切ることができるかもしれない。

 そうなれば、そのままゴールへと駆け込むことができるだろう。

 ハヤテが優勝すれば、エメラルダの黄金弓は取り戻すことができる。

 いや、ハヤテが優勝しないと、黄金弓は取り戻せないのだ。

 だからこそ、ハヤテがゴールしないといけない。

 ならば、今の自分は邪魔でしかない。

 ハヤテの足を遅めるただの重りなのだ。

 今、自分ができることは何だ……

 ハヤテを解放すること。

 そして、グレストールをおびき寄せるエサとなること。

 おそらく、ハヤテと離れればグレストールは人間である自分を狙うはず。

 そうすれば、完全にハヤテはフリーになるのだ。

 これこそ、タカトが考えた必勝法! スネークホイホイpart 2!


 しかし、ハヤテは前足を突っ張った。

 爪が地面を削り、スピードを殺す。

「バカが! お前ひとり残ったところで意味はないだろうが!」

 ハヤテは、タカトに吠えた。

 だが、背中越しのタカトは怒鳴る。

「お前がゴールしないと、みんなハッピーになれないんだよ!」

 タカトはグレストールを睨み付けていた。

「タカト! お前はどうなる!」

「バカ野郎! 俺を見くびるな! コレでも俺は万命拳を修行した身だ!」

 って、ほんの少しだけですけどね……

 だが、震える足は、いつもと一緒だが、発せられる言葉には力強さがあった。

 明らかに先ほどまでのタカトとは様子が違う。

「早く行け! 俺が死ぬ前にゴールして、このレースを終了させてくれ!」

 ――そういう事か!

 ハヤテは合点がいった。

 ハヤテがゴールすれば、この魔物バトルは終わる。

 ならば、レースが終了したタカトの身はミーキアンの預かる身に戻るのだ。

 すなわち、魔物バトルのレース外でタカトを食らえば、それはミーキアンに対してケンカを吹っ掛けたことと同義である。

 さすがに蛇もそこまで馬鹿じゃないだろう!

 瞬時に理解したハヤテの体は反転し、一気にゴールを目指して駆け出していた。



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