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⑤俺はハーレムを、ビシっ!……道具屋にならせていただきます1部4章~ダンジョンで裏切られたけど、俺の人生ファーストキスはババアでした!~美女の香りにむせカエル!編  作者: ぺんぺん草のすけ
第三部 第一章 病院ではお静かに

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人食いの少女(4)

 山のふもとにある聖人国側の駐屯地。

 奴隷たちを送りだしたことで、やることがなくなったレモノワは退屈そうである。

 まだ日が高いというのに、城壁の上で酒を飲んでいた。

 既に駐屯地内の奴隷兵は全て送りだしてしまった。

 遊びがてら壊す奴隷も残っていない。

 今更ながら2,3人残しておくべきだったかと少々後悔していた。


 そんな駐屯地の目の前に一人の男がよろよろと帰ってきた。

 脱走兵か?

 城壁の上から監視するレモノワは思った。

 その影はどんどんと近づいてくる。

 その装いはどうやら奴隷兵、そして、手には大きな袋を持っている。

 魔人国へ進行しているはずの奴隷兵が、日の高い野原を歩いて戻ってくるのである。

 少々おかしい。

 なぜなら、奴隷兵が逃げ出さないように、後詰めとして暗殺者たちの部隊を配置していたのだ。

 脱落したり、逃げた奴隷兵は、有無を言わさず、処刑である。

 それがレモノワからの命令なのだ。

 レモノワの命令に忠実な暗殺者たちが、奴隷兵ごときを取り逃がすとは考えにくい。

 そんな失態を冒せば、自分たちの命がないことぐらいわかっているはずなのだ。

 近づいてくる男は、駐屯地の直前でパタリと倒れた。

 罠かもしれない。

 警戒するレモノワ。

 だが、あの手に持つ袋も気になる。

 毒物であれば少々厄介である。

 レモノワと数人の神民兵が城門を開けた。

 うつぶせに倒れる男に駆け寄ると、その様子を確認する。

 確かにこの風貌は人間である。

 そして、この衣装は奴隷兵の物。

 レモノワがその奴隷兵の首根っこを掴むと引きずり起こした。

 ぼてぼてと血が塊のように落ちていく。

 それもそのはず、男の耳や鼻が全てそぎ落とされていたのだ。

「何があった!」

 奴隷兵は、かすれる声でつぶやいた。

「申し訳ございません……魔人の女と人間の少女によって、我が隊は全滅……」

 レモノワは、鼻で笑った。

 全滅か……

 まぁ、予想はしていたが、二人だけとは、少々驚きだ。

 だが、気になることを言っていた。

「人間の女とな?」

「ハイ……青いショートボブのメイド女に」

 奴隷兵は、震える手で袋を持ち上げた。

「その人間の少女からの伝言です……これだけは返します。あとは、ありがたく食べさせえてもらいますとのこと……あれは……人を食う少女です」

 側に控える別の神民兵は、袋の中を確認する。

 顔が引きつる神民兵。

 中には無数の耳が入っていた。

 すぐさま、袋の中身をレモノワに見せた。

 ざっと50人分ほどか……

 と言うことは、やはり奴隷部隊は全滅と言う事か……

「人が人を食うというのか……面白い!」

 大きな声で笑うレモノワ。

「しかし、どうやってここまで戻ってきた、後ろには別の部隊もいただろうが!」

「その部隊も少女と魔人に襲われ、全滅です……」

「なんだと! 俺の暗殺部隊が全滅だと……」

「あの少女は嬉しそうに、その方たちの耳も袋の中に入れておりました……」

 袋をひっくり返すレモノワ。

 袋から無数の耳が落ちてきた。

 形のいい耳はおそらく奴隷兵や一般兵のものだろう。

 だが、そのほとんどが、ちぎれた耳やつぶれた耳であった。

 それも昔の古傷で。

 この耳は、暗殺部隊のものだな……

 神民兵であっても手こずる暗殺部隊が全滅……

 レモノワは、掴む奴隷兵の首に力を入れた。

 ミシミシと音を立てる。

 クソ! たった二人で十分と言う事か……ミーキアンめ!

 その瞬間、奴隷兵の頭が地面にめり込む。

 地面から突き出されるように伸びた肢体がぴくぴくと痙攣し、ほどなく動きを止めた。

 

 その話を信じなかったレモノワ。

 なん度となく魔人国へとつながる騎士の門をこじ開けようと部隊を送りだした。

 そのたびに、兵士が一人だけ戻ってくるのだ。

 袋一杯に詰められた耳と共に。

 そのたびにあざ笑われるかのような屈辱感。

 お前らごとき、二人で充分と言わんばかりの嘲笑が聞こえてきそうであった。

 レモノワは、そのたびに肩を震わせ怒らせる。

 自分の部隊が、たった二人の女によって全滅させられる。

 それも、何度も何度もだ。

 ついには、虎の子の神民兵の部隊を送りだすも全滅。

 内地より、確保した奴隷たちも、すぐさま、その数を失った。

 第三の騎士は奴隷の墓場、そんな噂が、当たり前のように飛びかった。

 一般国民も第三の騎士の門への配属を拒みだす。

 ついには、神民学校を卒業した神民兵ですら志願すらしなくなる始末。

 レモノワは無能だ。

 たった二人の女によって部隊を全滅させられる無能の指揮官だ。

 そんな噂が立っていたのである。

 だが、決して、レモノワが弱いわけではない。

 残虐非道のレモノワの性格は、誰しもが知るところ。

 仲間内ですらその命を何とも思わないのである。

 そんなレモノワである、そむけば死。

 兵士たちが命がけで闘うことは誰しも想像ついた。

 それでも、隊は門を開けられない。

 そして、必ず、伝えられるのだ、生き残らされたメッセンジャーによって。

 「隊は……全滅……二人の女によって」


 レモノワの駐屯地では、夜な夜な兵士たちがささやくのだ。

 あの山には人の姿をした鬼がいると。

 耳をそぎ落とすその姿は真っ赤で血に汚れた悪鬼のよう。

 人の身でありながら人を食らう。

 あの山の上には人を食う鬼の少女がいると……


 そして、その噂は、内地、いや他の門へと広がっていく。

 二人の人食いの少女らによって翻弄されるレモノワの話が。



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