人食いの少女(2)
だが、幾度となく、魔人国のフィールド内に足を踏み込んでも敵の陰すら見えない。
ミーキアンの魔人どころか、魔物すらいないのである。
時々姿を見せるのは、フィールド内に自生する野生の魔物たちばかり。
一体どういう事なのだ!
魔人国の騎士ミーキアンは、まるでキーストーンを守る気がないかのようである。
少々バカにされたような気がしたレモノワは、気持ちが荒ぶった。
しかし、吹きすさぶ吹雪の中を探せど探せどキーストーンは見つからない。
それどころか、キーストーンを隠していそうな超大型種の魔物の痕跡すら見つからないのである。
魔人フィールド内を、隅から隅まで捜索する。
だが、ココは山岳地帯。
捜索するといっても過酷な環境なのだ。
そのため、捜索のたびに、数十人もの奴隷や一般兵が命を落とした。
そんな愚かな行為が、何十回、何百回と繰り返されるのである。
奴隷たちのレモノワに対する忠誠など、皆無であった。
奴隷たちを支配していたのは、ただの恐怖。
レモノワの駐屯地に配属されれば、凍死するか、レモノワに誅殺されるかの二者択一なのである。
そのため、レモノワの駐屯地は奴隷の墓場と言われていた。
その過酷な捜索で、数百人もの奴隷が命を落とした。
魔人フィールドの捜索も、二回り目を終えようとしていた。
しかし、いっこうに手掛かりが見つからない。
一体、ミーキアンはキーストーンをどこに隠したというのであろうか。
その徹底ぶりは、レモノワごとこにキーストーンを奪われることはないと言わんばかりである。
まるであざ笑われたかのように感じたレモノワ。
ついにある決断をした。
業を煮やしたレモノワは、一気に魔人国を攻め落とすのだと喚き散らすのである。
そう、キーストーンを無視して、魔人国へとつながる騎士の門をいきなり開けようとしたのである。
どうせ、ここまで徹底的に捜索しても魔人たちの姿はない。
と言うことは、魔人国側の騎士の門を守る者もいやしないだろう。
たかをくくったレモノワは、奴隷兵と一般兵で突撃部隊を組織した。
その数100人。
とりあず、それぐらいの人数で、魔人国内に突っ込めば、ある程度の騒ぎにはなるだろう。
それでミーキアンが驚けば、しばらくはレモノワの溜飲も下がるというものだ。
魔人国へと通じる騎士の門は、高い高い雪山のてっぺんに立っていた。
レモノワの部隊はこれから魔人国に攻め込もうというのである。
当然それ相応の装備を背負っての行軍だ。
険しい山道を登る。
葉が落ちた木々が寒さを誘う。
その根元にはところどころ雪が残ってはいるものの、至るところに土の色が見えていた。
ぬかるむけもの道を踏みしめて山を上へ上へと昇っていく。
道なき道のため途中、疲労で倒れる物も出る。
泥に足を滑らせて転倒し、けがを追うものも出てくる。
だが、こんな者たちに構っているわけにはいかない。
おそらく、後続の監視部隊によって清掃されるのだ。
逃亡、いや、脱落すら許されない行軍である。




