スカートの中は乙女の秘密(1)
「ウニおんなぁぁぁぁぁぁあ!」
タカトは勢いよくミーキアンの城門を飛び出した。
そこは、一般街とミーキアンの城の境界線。
目の前は一般魔人たちが暮らす一般街が広がっていた。
辺りをきょろきょろと見回すタカト。
あのウニ女どこ行きやがった!
見つけたら、あの厚顔無恥の顔のカラを叩き割ってやる!
きょろきょろとするタカトが珍しいのか、ぞろぞろと人が集まってきた。
タカトは押し寄せる人の影を押しのける
――邪魔だどけ! あの女の姿が見えないだろうが!
だが、その押しのけようとした体はモフモフしていた。
――きもちいぃぃ!
タカトはさらに、モフモフした。
魔人の頬が赤く染まった。
――きもちぃぃぃ!
タカトの顔は引きつった。
――そうだった……ここは魔人国、魔人世界だったんだ。
もしかして、タカトさん、今の今まで忘れていらっしゃたのでしょうか?
取り囲む魔人たちがタカトを見下ろす。
「こいつ奴隷の刻印を表示してないんだけど……奴隷じゃないのかな?」
「でも、ミーキアンの城から出てきたぞ、もしかしたら、ミーキアンの新しい奴隷かも知れないぞ」
「オイ誰か、ちょっとコイツの服めくってみろよ」
後ずさるタカト。
――まずい……
今、服をめくられたら一巻の終わりである。
だって、タカトの体にはなんの刻印も入っていないきれいな体。
あっ、お尻には蒙古斑があったかも。
って、そんなボケかましとる場合かぁ!
一人の魔人の指がタカトの服の裾をつまんだ。
「イヤァ! えっちぃぃ!」
タカトは、その手を払いのける。
――ヤバイ! ヤバイ! ヤバイ!
焦るタカトの背後から、元気な女の子の声が響いた。
「タカトォ~」
振り向くタカト。
ビン子が手を振りながら追いかけてきていた。
そんな駆け寄ってくるビン子を魔人たちが一斉に見る。
「おっ、もう一人いたのか?」
魔人たちの口からよだれが垂れ落ちていた。
ビン子が城門を潜り抜けようとした瞬間、その体が後ろに引っ張られた。
尻もちをつくビン子。
「いたあぁぁぁぁい!」
尻をさすりながら、後ろを睨むビン子。
――どこのどいつヨ! 後ろから引っ張るなんて!
そこには、ビン子の肩を掴むエメラルダの姿があった。
しかし、その顔は真顔。
とても冗談で引っ張っているような顔ではなかった。
「ビン子ちゃん、今、この城から出たら、あなたも危ないわ!」
とっさにタカトのほうへと視線を戻すビン子。
タカトの泣き顔がこっちを見つめていた。
今や、タカトは魔人たちに囲まれ、風前の灯火。
――タカト……
ビン子はいま、ミーキアンの城門の内側にいる。
すなわちミーキアンのテリトリーなのだ。
そこに天然物の人間がいたとしても、さすがに一般の魔人たちが手を出せるわけがない。
それに対してタカト君。
なんで城門の外に出ちゃったかな……
一般街の境界線上で震えるタカトは、エメラルダとビン子に乾いた笑顔を送っていた。
――ハハハハハ、どうしよう俺……
その目から一筋の涙が零れ落ちる。
――助けて……ビン子ちゃん……
ビン子はその思いに気づいたのか、気づかなかったのか……
タカトから視線をそらすビン子。
――無理……




