孤軍の神と背水の駐屯地(2)
そんな時、城壁の門が開き、4人の兵士が飛び出したのだ。
「開血開放!」
4人の兵士たちは叫ぶ。
それとともに、その身は黒き魔装装甲に包まれていく。
女の周りを、4人の魔装騎兵が取り囲んだ。
そして、女にめがけて一斉に剣を振る。
その太刀筋に一切の躊躇なし。
女であっても、たたっ切る!
四方向から振り下ろされる鋭い斬撃。
しかし、次の瞬間、その白刃は、跳ね返された。
4振りの剣がまるで磁石で跳ね返されるかのようにはじけ飛んだ。
女の周りを光の光球が包んでいる。
そう、神の持つ神の盾である。
その絶対防壁の前に、いかに魔装騎兵であったとしても、その攻撃は無力。
だが、ここで、あきらめるわけにはいかぬ。
魔装騎兵たちは、瞬時に態勢を立て直すと、二の太刀を入れる。
思い思いの方向から、次々と斬撃が飛ぶ。
だが、その太刀筋も光の粒を散らし跳ね返される。
剣先すら女にまったく触れることもできない。
4人が振るう剣の発する激しい金属音が、途切れることなく続く。
光球の中で、マリアナが舞った。
その手で、魔装騎兵の顔を一人一人なでるかのようくるりと回る。
白きスカートが、まるでラッパ状の花のように広がり円を描く。
まるでコダチチョウセンアサガオのように美しい。
マリアナが動きを止めると、その花が急速にしぼんでいく。
すでに使命を終えたかのように白きスカートの花は、マリアナの足へと絡みついた。
次の瞬間、マリアナを包む光球に、赤き牡丹の花が乱れ咲く。
だが、その花は咲いたかと思うと、すぐにその命を終えるかのように、光球の曲面に沿って垂れ落ちていった。
次々と光球が赤く汚れていく。
光球の周りには、4体の首がない魔装騎兵が血しぶきをあげて立っていた。
そう、マリアナの誘惑によって、互いに互いの首をはねたのである。
マリアナの足元には、黒き魔装騎兵の頭が四つ転がっていた。
それは、一瞬のことだった。
マリアナを攻撃していた魔装騎兵たちが、あっという間にやられたのだ。
絶対防壁である神の盾で、攻撃を受けながら、神の恩恵で反撃。
どれだけの生気を消費するのだろう。
タカトたちの時代において、ソフィアと戦っていたミズイでさえ、その生気の消費量に耐えられないため、一旦、神の盾を解除したうえで神の恩恵を使っているのだ。
同時使用、それは、尋常でない生気の消費なのである。
だが、今のマリアナにそんなことをかまっている時間はなった。
一刻でも早く! アリューシャのために……
その気持ちが、無理をさせる。
自分の体よりも、妹のことを思う気持ちが、後先を考えさせない。
「邪魔をするなぁぁぁぁぁぁ!」
怒りに満ちたマリアナの瞳が、赤く染まり始めていた。




