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⑤俺はハーレムを、ビシっ!……道具屋にならせていただきます1部4章~ダンジョンで裏切られたけど、俺の人生ファーストキスはババアでした!~美女の香りにむせカエル!編  作者: ぺんぺん草のすけ
第三部 第一章 病院ではお静かに

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深淵の悲しみ 浅瀬の忠義(3)

 薄暗い小門の中で倒れているヨークのもとに、万命寺の僧たちが駆けつけた。

 けたたましく魔血切れを示す魔血ユニットの警告音が響いている

 その中には、権蔵とガンエンの姿もあった。

「エメラルダ様はどこだ!」

 懸命にエメラルダの姿を探すも、そこにない。

 それどころか、一緒に逃げたはずのタカトとビン子もいないのである。

 もしかして、連れ去られたのか?

 いや、そんなはずはない。この道は一本道。

 誰ともすれ違うことはなかった。

 万命寺の僧たちが、ヨークの体を揺するも、既にヨークの意識はない。

 それどころか、地面にはおびただしい血だまりができている。

 気づいたガンエンが、その僧を押しのけて、ヨークの容態を伺った。

 ガンエンが、ヨークの腰の魔血ユニットのスイッチを切った。

 けたたましくなる警告音がピタリと止まる。

 ヨークのシャツは腹部から胸へと赤く染め上がり、その服の裂けた間からは、わき腹の肉がぱっくりと裂けているのが見て取れた。

 ――この傷……まさか、己が血で開血解放を行ったのか……

 ガンエンはヨークのわき腹の傷を診察する。

 思ったより傷が深い。

 ――このバカが! ここまで深くえぐりおってからに!

 抱き起すからだから、力なく垂れるヨークの腕。

 ガンエンの手の体温が、ヨークの冷え切った体に奪われていく。

 すぐさま、ガンエンは人魔検査キットを取り出すと、人魔チェックを行った。

 結果は陽性。

 魔血ユニットから、魔の生気が体中に回り始めていたのだ。

 このままでは人魔症を発症してしまう。

 いや、出血死の方が先か……

 だが、このままでは、仮に人魔になっては浮かばれまい。

 どうせ死ぬのであれば、一思いに楽にしてやるのも情けと言うもの。

 せめて、人としての最後を迎えさせてやるべきなのだろう。


 ガンエンはすぐさま立ち上がり、僧たちに命令した。

「エメラルダ様は、おそらくさらに奥へと向かっておる! だが、暗殺者たちも追っているかもしれん、お前たちは、すぐさま後を追え!」

 ヨークを潰すところを見せたくな。そんな気持ちだったのかもしれない。

 僧たちは、魔の国へと走り出す。

 だが、ココから先の道は複雑である。道順を知らぬ僧たちにとって、エメラルダにそう簡単には追いつけそうになかった。。


 ガンエンは、ヨークをそっと地面に寝かす。

 そして、右こぶしを握り締め、弓の弦のように後ろに引いた。

 その拳に力を込める。

 ゆっくりと息を吐く。

 悲しみをたたえた目が、ヨークの閉じた瞳に語り掛ける。

 人魔となって死ぬのは嫌じゃろ……

 せめて最後は人間として葬ってやるからな……

 それが、ガンエンなりの優しさだった。


「まて! 待ってくれ!」

 権蔵が叫んだ。

 エメラルダが無事と言うことは、タカトとビン子も無事のはずなのだ。

 このヨークが、己が命を危険にさらしてまで、3人の命を守ってくれたのである。

 何とか助けたい。

 この青年を、何とか助けたい。

 権蔵のその一念が、言葉を絞り出した。

「この者を、一之祐様のところに運ぼう!」

 確かに、このままでは人魔症を発症することは間違いない。

 だが、それが、たちまちと言うわけではない。

 幸い、大量に失血したヨークの体の中には、血がほとんどなかった。

 魔血ユニットから流れ込む、魔の生気が体中を巡ろうにも、血が足りないのである。

 そのため、ヨークの人魔症の進行速度は、思ったよりも遅かった。

 必死の形相の権蔵。

 ガンエンは、仕方なしに右こぶしを降ろした。

「時間はないぞ……」

 権蔵とガンエンは急いで、第7の騎士の門の側にある宿舎へとヨークを運んだのだ。



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