チェックメイト!
“ガッチャマンボゥ”たちには、確かに油断があった。
6人同時攻撃など不可能――そう思っていたのだ。
だが現実は違った。
いま、この瞬間、6人の体が木っ端みじんに吹き飛んでいる。
――どうしてだ?
“イマラッチョ1”の胸に疑念が渦巻く。
あの機械人形は、我らの糸に操られていたはず。
それがなぜ、我らの意に反して動いた?
プログラムか? それとも……
――分からぬ。
しかし――
「我らはアダム様の特選部隊! “6つ子忍者戦隊ガッチャマンボゥ”!
ここで退くわけにはいかぬ!」
“イマラッチョ1”は檄を飛ばす。
「“シコマッチョ5”! 今こそ究極奥義を見せるとき!」
だが――応じるべき“シコマッチョ5”には、もはや頭も腕もない。
残っているのは胸から下だけ。
転がる下半身の上で、力なく横たわる魚肉ソーセージが――
その呼びかけに答えるように、ぐい、と天を突くように反り返った。
「ソーセージの圧縮エネルギー、限界値に達するわ!」“おそマッチョ3”が冷静に告げる。
「ここまで膨張するなんて……常識では考えられないわね」“からマッチョ2”が分析する。
……いやいや、こいつら死にかけてるのになんでそんな余裕なんや。
それほどまでに、“シコマッチョ5”を信じているということなのか……。
「残り5秒で射精行動に移行!」“おそマッチョ3”が地面を叩きつけるように叫ぶ。
「全ユニット、耐ショック体勢をとりなさい!」
5!
玄武のモニターに映る“シコマッチョ5”のソーセージが震える。
4!
「内部圧、臨界突破!」“からマッチョ2”の声が鋭く響く。
3!
「持って……!」“おそマッチョ3”の拳に力がこもる。
2!
反り返る魚肉ソーセージが悲鳴をあげる。先端が、肉体の限界を超えていく。
1!
どぴゅっ!!!
先・端・裂・傷!
瞬間! 白光が玄武の全画面を覆い、モニターが一斉に飽和した。
「発射確認……!」“からマッチョ2”が目を細めて呟いた。
「……これが、“シコマッチョ5”の本気よ」
直後、6人の“ガッチャマンボゥ”の肉体が赤い液体となって溶け崩れた。
一見すれば「6つ子忍法! 変わり身の術!」に見える。
だが、今回は違う。
印を結ぶための手足は、すでに吹き飛んでいるのだ。
そんな状態で、忍法が成立するはずがない。
“シコマッチョ5”が放ったのは別の術――
「6つ子忍法! リゼロノスバル!」
って! エヴァちゃうんかい!!!
それは死にかけた魂を赤い繭に転生させる――黄泉がえりの秘術!
死にかけた”ガッチャマンボゥ”たちの魂を赤い繭へと転生させたのである!
「あははははは!」
「残念だったわね、坊や!」
「私たち、完全復活よ!」
高らかな笑い声が響き渡る。
しかもその声は、白虎の内部から聞こえるではないか。
「これで貴様の攻撃など届きはせん!」
「中におっても、この程度の機械人形ごとき、ワイらなら動かせるんや!」
「シコシコシコ!」
6台の白虎が、再びうなりをあげ動き出す――。
再びレールガンを構える白虎たち。
「コレで終わりだ!! 人間よ!」
一斉に引き金が引かれた。
6つの弾丸がコクピットを貫く!
胸部装甲に大きな穴。
赤く焼けた縁の向こうに、揺らぐ景色。
中にいた者は、肉の一片すら残さず、一瞬で蒸発したに違いない。
だが、撃ち抜かれたのは玄武のコクピットではなかった。
――6機の白虎のコクピットだった。
互いに向かい合い、同時に胸を撃ち抜いたのだ。
「リモート操作なんざ、お前らだけの専売特許じゃねえんだよ!」
玄武の足元から6本のコードが伸びていた。
蛇のようにのたうち、白虎の腹部コンソールへとつながるそれは、外部から操縦権を奪うためのもの。
高斗は、先ほど機関銃を拾った時点で、すでに接続を済ませていたのだ。
「っていうかww そこに誘い出されてるのに気づかねぇのかよww」
高斗の声には嘲りが混じる。
戦闘の中で、高斗は敵の仕組みを観察していた。
“ガッチャマンボゥ”たちは、6人同時に倒さなければ完全には死なない。一人でも生き残れば、他を再生させる。
だが、仮に6人まとめて倒しても、赤い繭を経由して転生されてしまう。
ならば――転生先を潰してしまえばいい。
玄武のHUDがロックしていたのは敵本体ではなく、ホームに散らばる赤い繭だった。
高斗は機関銃を乱射し、中に蓄えられた赤い体液ごと繭を撃ち抜いていく。
その結果、ほとんどの復活用の器は粉砕され、“ガッチャマンボゥ”達が転生できる余地は失われた。
だが、一部だけはどうしても残ってしまった。
それが白虎のコクピット内にある繭だ。
こいつをつぶすためにコクピットを破壊すれば、白虎自体を動かせなくなり、6人同時攻撃の手段も絶たれてしまう。
しかし、残しておけば“ガッチャマンボゥ”達はそこに転生しかねない。
これでは6人同時攻撃の手段が残ったとしても“ガッチャマンボゥ”達を確実に倒すことはできない。
だが、タカトはそれを逆手に取った。
“ガッチャマンボゥ”達を、強制的にコクピットという密閉空間に送り込んだのだ。
密閉されたコクピットの中では、たとえ誰かが生き残っても、死んだ仲間のもとに近づくことはできない。
外に転がる転生先も潰されており、残された選択肢はないのだ。
つまり、“ガッチャマンボゥ”たちが次に転生した瞬間、彼らの死は確定していたのである。
チェックメイト!
玄武は足元のきしむ音を聞きながら、ホームの上を歩いていく。
「俺はお前たちの相手をしているほど暇じゃねえんだよ!」
線路上には、長くつながる補給車両の列があった。
「アイナとの約束を守るため……俺は! 早くアイナを迎えに行かなきゃいけないんだ!」
その一台の扉に手をかけ、無理やりこじ開ける。
ガキンッ!
鋼鉄製の扉がくの字に曲がり、耳をつんざく音を立てる。
その奥にあるのは――大量の銃器や弾薬
などではなく……
メイド姿の女の子たちがぎっしりと並んでいたのだwwww
「ご主人様♡ おかえりなさいませぇ~♡」
(……はい?)




