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⑤俺はハーレムを、ビシっ!……道具屋にならせていただきます1部4章~ダンジョンで裏切られたけど、俺の人生ファーストキスはババアでした!~美女の香りにむせカエル!編  作者: ぺんぺん草のすけ
第三部 第一章 病院ではお静かに

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鈴を持つ女(1)

 チリーン!

 聞き覚えのある鈴の音が響いた。


 タカトの手刀が、途中で止まる。

 いや、止められた。


 チリーン!

 鈴の音と共に、タカトの体が力なく地面へと着地する。

 タカトの体が、長兄魔人の足元に膝をつき落下の勢いを殺していた。

 しかし、タカトは、そのまま動かない。

 まるで、荒ぶるつきものでも落ちたかのように静かに膝まづきうつむいていたままだった。


「何やつ……」

 そうつぶやく長兄魔人の動きが止まっていた。

 そう、そのおでこから将棋の駒が落ちてきたのだ。

 そして、また、ひざまずくタカト額からも一枚の駒が落ちてくる。

 それは金と角。

 タカトが飛びかかった瞬間、激しく打ち合おうとする二人を制するかのようにどこからか将棋の駒が投げつけられていたのである。


 だが、たかが将棋の駒。

 気をそらすことができても、ダメージなどありはしない。

 だが、いまだに長兄魔人は動かない。

 いや、動けなかったのだ。

 なぜなら、長兄魔人とタカトの間には一人の女が立っていた。

 そして、右手に持つ鋭い小剣のきっさきを長兄魔人の喉元に突き立てて、残ったもう片方の手ではタカトの手刀のつかを受け止めていた。

 どうやら先ほどの鈴の音の正体は、その女の腰についてあるはサクランボのような二つの鈴であった。

 ――この女、どこかで……

 タカトは、ぼやける意識で、その女の姿を仰ぎ見る。

 いつの間にか、タカトの目はいつもの黒く優しい瞳に戻っていた。


 ――この鈴の音……なんだか……なつかしい……

 そう、タカトとビン子が、第六の宿舎の依頼で、第一の駐屯地に毒消しを運んだ帰り道、権蔵の酒をかうために向かう途中で出会った女である。


 女は、動かぬタカトの手を放すと、自らの服の襟首に指をかけ、胸を魔人の前にさらした。

「その女を放せ……さもないと、死ぬぞ、お前……」

「ぐぬぅぅ……」

 魔人は手を放す。

 ――

 ドサ!

 タカトの目の前に、エメラルダの体も落ちてきた。

 地面に打ち付けられるエメラルダ。

 喉を押さえ、激しくせき込んでいる。

 せき込むたびに、その巨乳が波打つ。

 どうやら、まだ、命は大丈夫のようである。


「ちっ! 奴隷の刻印か!」

 女の胸には、魔人の名前が黒々と刻印されていた。

 その言葉を聞きとげると、女は、さらけ出した胸を服の中へと戻した。

「この獲物は、我らディシウス様のものだ……文句はあるまい」

「貴様……ディシウスの奴隷か……」

 長兄魔人は、後ずさる。

 ディシウスとは、それほどまでに畏怖される魔人騎士なのであろうか。

 いや違う、魔人騎士ではなく、一般魔人。

 そう、このゴリラが服をきた魔人たちと同じくただの一般魔人なのである。

 だが、その力は、魔人騎士すらも凌駕すると言われる、一般魔人なのだ。

 そのため、多くの魔人騎士が、自らの神民魔人に迎え入れようと声をかけたが、ディシウスはかたくなに拒み続けた。

 だが、呼ばれれば、いかなる戦場に現れる。

 その鬼神のような戦いぶりは、人間だけではなく、魔人たちも畏怖させた。

 そう、彼は傭兵なのだ。フリーの傭兵。

 ただ、そのディシウスの傍らには常に蝶の羽をもつ美しい女の魔人がいたという。

 だが、それも過去の話である。

「いまさらディシウスの奴隷が、しゃしゃり出てきてなんとする!」

「なら、私を食ってみるか?」

 女は嫌らしくにやけた。

 だが、すでに長兄魔人は、頭の中で、前言を撤回していた。

 なぜなら、女の胸にははっきりとディシウスの名を冠した奴隷の刻印があったのだ。

 ディシウスが過去の伝説であったとしても、まだ、存命であることは間違いない。

 主が死ねば、奴隷の刻印も消える。

 力が衰えているのかどうかも分からぬ。

 今、どこにいるのかも分からない。

 ただ、何かを求めてさまよっているという噂だけ聞いたことがある。

 だが、この奴隷を食らえば、確実に、自分たちの命を追ってくるくとだけは間違いなかった。

 それが、魔人世界のケジメなのだ。

 強いものが強いモノであり続けるためには、当然ながら、歯向かったものを叩きつぶさなければいけない。

 それをしなければ、たちまち、弱い魔人と認識されてしまうのである。

 弱肉強食の世界で、それは自分が食べれる側に回るということなのだ。

 奴隷を傷つけることは、その主を傷つけることと同意。

 傷つけた相手は草の根を分けてでも探し出し、食らうのである。

 自らの強さを示すためにも。



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