超覚醒(2)
エメラルダの顔がさらに険しくなった。
カエルでもてこずったのに、そのカエルたちがおびえて逃げるほどの魔物とは。
しかも、今のエメラルダは、武器を持たぬ素手である。
唯一の武器であった黄金弓は、大岩の上に置いてきた。
その大岩は、ゴリラたちの背後に位置している。
ゴリラを、避けてその大岩までたどり着くことはできるのだろうか。
だが、そんなことを考えても仕方ない。
エメラルダは、ゴリラたちの一瞬のスキを突き大岩へと走った。
エメラルダの金色の短髪が、ゴリラの横を滑りぬけ、大岩へ上へと飛び跳ねた。
この弓さえあれば!
焦るエメラルダの右手が、今だ空中にある体から黄金弓へと急いで伸びた。
しかし、弓には届かない。
エメラルダの右手は空を切る。
エメラルダの体が、その途中の中空で動きを止めていた。
うぐっ!
エメラダは、押しつぶされた声を出す。
息ができないエメラダはもがく。
そう、エメラルダの首を何者かがつかみあげていたのだ。
その手を外そうと、エメラルダの手が懸命にもがいている。
しかし、離れない。
その手の主は、ゴリラとは別の魔人のものであった。
どうやら、この魔人はゴリラの主らしい。
だって、魔人たちもまた、ゴリラにそっくりなのである。
唯一の違いは、服を着ているかどうかぐらい。
って、ほとんど一緒じゃん!
3匹のゴリラに3匹の魔人。
――万事休すか……
エメラルダは悔しそうに魔人の緑の目をにらみつけた。
だが、その瞳の色は、酸欠により、散りかけていた。
――マズイ……意識が飛ぶ……
「おい! 弟たちよ! ここに生きのいい人間がいるぞ!」
エメラルダを掴む魔人は、他の魔人に声をかけた。
「おいおい兄者! こんなところに人間なんているわけないだろうが、どうせ、どこかの魔人の奴隷だろ! もし、それが魔人騎士だったりしたら、そんなもの食ってみろ、俺たちが、食い殺されるぜ!」
そうである、ココは魔の融合国。すなわち、魔人世界である。
人間は、魔人や魔物のエサでしかないのだ。
唯一、生き残る方法は、魔人の所有物の奴隷となることである。
それも、より強い魔人の奴隷にだ。
もし、他の魔人が所有する奴隷を害すれば、当然、その所有者の魔人の報復は避けられない。
力こそ正義、それが、魔人世界の掟なのである。
エメラルダを掴む魔人は、少しドキッとした表情を見せた。
次兄魔人がいう事も一理ある。
奴隷でない人間が、こんなところをうろついている方が、おかしいのだ。
だが、確認するぐらいはいいのではないか。
奴隷なら、胸に所有者である魔人の名前の刻印があるはずだ。
長兄魔人は、エメラルダの服を引き裂いた。
あらわになるエメラルダの胸。
その巨乳が、引きちぎられた服の反動で、大きく波打った。




