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⑤俺はハーレムを、ビシっ!……道具屋にならせていただきます1部4章~ダンジョンで裏切られたけど、俺の人生ファーストキスはババアでした!~美女の香りにむせカエル!編  作者: ぺんぺん草のすけ
第三部 第一章 病院ではお静かに

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半魔の犬(2)

 その時、エメラルダが突然、動いた。

 大岩から飛び降りると、一直線にカエルの輪に突っ込んだ。

 カエルたちが一斉にエメラルダに飛びかかる。

 エメラルダは、寸でのところで、身をひるがえし、カエルの連撃をかわしゆく。

 そして、走る。一直線にタカトたちのもとに向かって。

 だが、エメラルダの後を追って、カエルたちもジャンプする。

 ――あと少し!

 エメラルダは懸命に走る。

 カエルたちを、暗殺者のところまで導けば、カエルたちが、暗殺者を襲うかもしれない。

 そうすれば、もしかしたら、あの二人だけでも小門へと逃がすことができるかもしれないのだ。

 そんなかすかな希望を抱き、懸命に走る。

 しかし、次の瞬間、エメラルダの視界がストンと落ちた。

 エメラルダの足が、何かにからまり後方へと引っ張られた。

 地面に顔をしたたかに打ち付けたエメラルダが、足元をかえりみる。

 すると、足にはカエルの舌が巻き付いていているではないか。

 ――くそ! あと少しなのに……

 エメラルダは唇をかみしめた。


「誰か! たすけてぇ!」

 涙目のビン子は大声で叫んだ。

 犬耳と犬鼻をつけて懸命に吠えた。

 無我夢中で、泣き叫んだ。


 その瞬間、小門の影から一陣の風が吹き抜ける。

 その風は、エメラルダめがけて一直線。

 エメラルダめがけて天高く飛び上がっていたカエルたちの体が、その風により真っ二つに切り裂かれていく。

 ――えっ!

 何がおこったのか分からぬビン子。

 ネコミミのオッサンも、突然のことに大きく目を見開いているだけだった。


 その風は、エメラルダの髪をたなびかせ吹き抜けた。

 エメラルダの背後に、砂煙が立ち上る。

 晴れていく煙の中には、大きな犬が立っていた。

 いや、犬と言うよりオオカミと言った方がいいのかもしれない。

 それほど壮観な大きな犬であった。

 だが、その顔立ちには幼さが残る。まだ若い。大人になり切れてない様子がなんとなくわかる。

 その犬は、普通の犬とは違っていた。

 そう、頭に角が生えているのである。

 ――魔物?

 一瞬ビン子は疑った。

 しかし、違う、それは半魔の犬である。

 ――この子……もしかして?


 半魔の犬は、ビン子の方角へと向きを変えたかと思うと、勢いよく後ろ脚を蹴りだした。

 その勢いで、ビン子の視界は犬の姿を見失う。

 ――どこ行ったの?

 姿を探すビン子の目が、大きく見開く。

 次の瞬間、ビン子の目の前に大きな犬の牙が開け広ぐ!

 ――ひぃぃぃ!

 ビン子の顔が、その恐怖で引きつった。

 だが、その口は、ビン子の黒髪をかすめ、その背に立つ暗殺者の肩に噛みついた。

 そして、勢いをそのままに、その大犬の体は上空へと反転し、暗殺者の体を巻き込んだ。

 その回転に巻き込まれた暗殺者の体は、ビン子の体から無理やり引きはがされ、後方へとはじけ飛ぶ。

 その様子を唖然と見つめるしかできないネコミミオッサン。

 ――今日は何かおかしい。何もかもが、イレギュラーすぎる!

 予測を超える出来事に、オッサンの思考が追いつかない。

 その時、オッサンは何かの気配を感じた。

 反射的によけるオッサンの体。

 その鼻先をエメラルダの拳がかすめていく。

 カエルたちを薙ぎ払い、ほんのわずかな隙を狙ってエメラルダが迫ってきていた。


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