魔の融合国(5)
だが、次の瞬間、カエルは、タカトを吐き出した。
カエルの唾液でべとべとになったタカトは、地面の上に転がった。
アホな妄想に身もだえているタカトは、フニャフニャにのびていた。
カエルの奴、最後まで飲み込むことなく、吐き出すとは。
よほど、食べごたえがなかったのか。
もしかして、これは、俗にいう、中折れと言うやつですか?
ぺっ! ぺっ!
伸びるタカトの横でカエルが、激しく唾を吐き出していた。
よほどまずかったのであろうか?
いや、そんなことはないだろう。
タカト君は、これでも一応、人間なのだ。
童貞と言えども人間なのだ。
変態と言えども人間なのだ。
いくらあほな妄想をしようとも、人間であることには変わりない。
脳には、おバカな妄想が満ちあるれているかもしれないが、人の生気は宿っているはずなのだ。
魔物が魔人へと進化するために好んで食べる人間の生気が。
それが、なぜ……もったいない!
カエルが恨めしそうな緑の目でタカトをにらんだ。
今だ口から唾を吐いている。
何かが、カエルの口の中に残っているようだ。
と言うことは、タカトの体についた何かか?
もしかして、タカト君、夢精したとか……
いやいや、まだ、カエルの口は下半身まで包み込んでいなかったはず。
そう、タカトの童貞はすんでのところで守られたのである。
ではなぜ?
タカトの体には、塩がたくさんついていたのである。
大空洞でアクセサリーを見ながら騒いでいた女たちのスカートを覗こうとしていた、あの時に、ビン子が頭からぶっかけた塩である。
塩を手で払っただけのその髪や服には、いまだ塩がべったりとついていたのである。
その塩を嫌って、カエルがタカトを吐き出したのだった。
だが、カエルもあきらめない。
目の前にごちそうの人間がいるのだ。
ココで食べないという選択肢はない。
他の魔物たちが集まってくる前に、さっさと食べてしまわなければならない。
ここは魔の国。
魔の国は力こそ正義。
より強いものが支配する。
当然、獲物も、強いものが来れば横取りされる。
次の瞬間、カエルの口が大きく開いた。
力をこめて震えるその口から、尖った歯が生えてきた。
あるはずもない歯が、次々と生えてくる。
というか、歯があるんだったら、最初から使えよ!
と、タカトは軽く突っ込んだ!
いやいや、歯があったら、あんた今頃、死んでいたからね!
歯をむき出したカエルの口がタカトへと飛びかかる。
いまだ、地面に倒れていたタカトは、上半身を起こすだけでやっとであった。
――やっぱり食われる!
大きなトラバサミのような口が迫ってくる。
タカトの顔の横を、一条の光がかすめとんだ。
――えっ?




