魔の融合国(4)
ゲロゲーロゲロ!
目の前の一匹のカエルが、泣き声と共に大きくジャンプした。
その気配に気づいたタカトは、咄嗟に正面に向き直す。
上空を見上げるタカト。
その顔に、カエルの影が落ちてくる。
――あかん! 俺死んだ!
天から落ちてくるカエルの口が、大きく開いていた。
口の中の赤色が妙に毒々しい。
――最後に見る風景が、カエルの口とは……
走馬燈のように、タカトの過去がよみがえる。
街にいるベッツをはじめとする少年たちにいじめられた思いで。
権蔵じいちゃんに怒られる日々。
お金が無くて、芋を掘る毎日。
あと、記憶に残るは、作業台の道具たち。
だが、どれも女の臭いがむせかえるような思い出なんてありもしない。
あえてあるのは貧乳のビン子と戯れた記憶のみ。
――あっ、ベッドの下のムフフな本どうしよう…………
この期に及んで、ムフフな本の事を心配した。
すでにビン子にその存在がばれている。
なら、いまさら隠したところでどうとなるものでない。
諦めたタカタとは、剣を降ろす。
――カエルと口づけより、ムフフな本に出てくるような女の子と口づけしたかったな……
このカエルの口の開け方は、口づけじゃなくて、丸のみですから。
タカト君を頭からごっくんと丸のみですよ。
目を閉じたタカトは天から降ってくるカエルに向かって、タコのように口を突き出した。
最後のあがきで、せめて、この世との最後の想いでは、巨乳美女とのキスであったと思いたかったのであろう。
脳内では、タカトが崖から落ちた時、助けてくれたあの金髪の巨乳女神に変換されていた。
その女神が、天からふってきているかのように、都合よく妄想していた。
まぁ、これで死の恐怖が和らぐなら、それでいいのではないだろうか。
死ぬ直前ぐらい、本人の好きなようにさせてやろうではないか。
やぶれかぶれのタカトがさらに唇を押し出した。
ごっくん!
「ぶちゅー」ではなく、やはり、「ごっくん」だった。
タカト君、やっぱり、食べられた。
タカトの上半身は、生暖かいぬるぬるしたものに包まれた。
――安らぐぅ……
傍から見ると、タカトの胸から上が、逆立ちしたカエルになっているのである。
そして、その口をもごもごと動かしている。
まぁ、不幸中の幸いと言うか、カエルには歯がなかった。
そのため、頭をかみ砕かれることもなく、丸のみ状態だったのである。
とはいえ、カエルの口は、どんどんとタカトの上半身を飲み込んでいく。
その口の中のぬめぬめとした感触の中でタカトは悶えた。
――女の人のあそこって、こんな感じなのかしら?
今だ見たことも、触ったこともない女性の聖域を、あれこれと妄想していた。
もう、童貞の考えることなんて、こんなことばっかり。
アホですか!
いや、不潔です! 不潔!




