魔の融合国(1)
当初の目的などすっかり消し飛んだタカトの脳内は、いかにこの至福の感触を維持すべきかを考えだしていた。
エメラルダを背負って立ち上がるタカト。
更にそこに追撃の誘惑が。
そう、エメラルダの体を支えるために、背に乗るその腰へと回した手が、やわらかい尻の肉に包まれたのである。
オッパイとおしり。
もう、なんか、これだけで幸せ!
「タカト! 大丈夫?」
ビン子は、立ち上がったまま動こうとしないタカトを心配した。
「私、後ろから支えようか?」
ビン子は、タカトを気遣った。
だが、タカトは首を振った。
「大丈夫……」
――というか、気が散る! この感触のみを味わいたいのに、ビン子が側でうろちょろすると気が散る!
タカトは考えた。
ビン子が後ろにいるからダメなんだ!
前を歩かせれば、いちいちエメラルダの体に障ったりすることもないだろう。
「ビン子、お前が先頭を歩いて道案内しろ!」
タカトはとっさにビン子に命じた。
「えーっ! 私、道なんて分かんないよぉ!」
しまった!
タカトの顔が引きつった。
まぁ、ビン子に限らず、タカト自身も、魔の国へとつながる洞穴など入ったことが無いのだから、どの道を行けばいいのかなんて分かりはしないのである。
かといって、ココであきらめたら、せっかっくのおっぱいとおしりが台無しである。
なんかないか……なんかないか……
タカトは、ひらめいた。
「俺の『ワンちゃん!(以下略)』を使え! あれなら、女の子の心の声が聞こえるはずだ。魔の国にだって女はいるはず! それを使って前を走るんだ!」
「えっ! あれを! でも、犬耳だけなら可愛いかな……」
「バカか! それは、犬の鼻と耳がセットでないと起動しないのだ!」
「えー、イヤだよ! それじゃただの変態じゃん!」
「エメラルダの姉ちゃんが死んでもいいのか!」
「うーーー、分かったわよ!」
ビン子は、タカトのポケットから『ワンちゃん!(以下略)』の犬耳と犬の鼻を取り出し身に着けた。
――ぷっ!
噴き出すタカト。
――こいつマヌケだ! まじでマヌケ!
犬の鼻をつけたビン子を小馬鹿にした目で見つめていた。
いやいや、先ほどまでこれをつけていたのはタカト君、君だぞ! 君!
ビン子は開血解放したワンちゃんの耳に手を当てた。
そっと目を閉じ、耳を澄ます。
「何か聞こえる!」
「女の声か?」
「よくわかんないけど、あっちから聞こえる」
ビン子は、一つの暗い洞窟の穴を指さした。
「よし! ビン子道案内頼む!」
ビン子が駆けていく後を、タカトが追いかける。
一歩、踏み出すたびに、エメラルダのおっぱいが、タカトの胸に密着する。
うひょおおおおおお
懸命に走るビン子の後ろで、タカトの目がハートに変わっていた。




