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⑤俺はハーレムを、ビシっ!……道具屋にならせていただきます1部4章~ダンジョンで裏切られたけど、俺の人生ファーストキスはババアでした!~美女の香りにむせカエル!編  作者: ぺんぺん草のすけ
第三部 第一章 病院ではお静かに

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隣あう二つの死(3)

 ヨークの前方、すなわち暗殺者たちの背後から、足音が近づいてきた。

 その数が多い。

 そう、それは、万命寺の僧たちが、暗殺者を追って走ってきた足音であった。

 ――今頃かよ! おせぇよ!

 ヨークは、強がるように笑った。


 ネコミミのオッサンは焦った。

 目の前には魔装騎兵、後方からは万命寺の僧たちが迫ってきている。

 このままでは挟撃されかねない。

 ならば、どうする。

 だが、目の前の魔装騎兵は確実に弱っている。

 今なら、三人同時にかかれば、一人二人は通り抜けることができるかもしれない。

 ネコミミのオッサンは覚悟を決めた。


 その時である。

 ビー! ビー! ビー! ビー!

 ヨークの魔血ユニットが警告音を発した。

 どうやら、ヨークの出血も限界で、開血解放状態を維持させるだけの血流を、魔血ユニットに注ぎ込むことができなくなっていたのだ。

 血液不足は、人魔症を発症する。

 すなわち、死さずとも、今度は人魔になって人々を襲いだすのである。

 解決方法は、今すぐ開血解放を解く事である。

 そうすれば、魔装装甲から流れ込む魔の生気による人魔症は回避できるのである。

 だが、ヨークは開血解放を解かない。

 いや、解く気が全くないのである。

 今、ココで開血解放を解けば、目の前の暗殺者たちは、ここぞとばかりに駆けていくだろう。

 もはや、立っているだけで精いっぱいの生身のヨークでは、その暗殺者の動きを制することはできない。

 いや、それが、生身でなく魔装騎兵の状態であっても、怪しいものだ。

 だが、奴らはビビっている。

 魔装騎兵の力、いや、魔装騎兵のヨークの力にビビっているのだ。

 ならば、魔装騎兵であり続け、にらみを利かせていれば、奴らを足止めできる。

 その時間が、1分でも1秒でもいい。

 少しでも長く足止めできれば、いいのだ。

 そうすれば、後は万命寺の僧たちが、何とかしくれるだろう。


 だが、このまま開血解放を解かなければ、ヨークは人魔症にかかってしまう。

 そして、人魔となって暴れ出すのだ。

 ならば、駆けつけた万命寺の僧たちを人魔化したヨーク自身が襲うかもしれない。

 ヨークは、己が拳で、自分の胸を激しく打った。

 ぐらりと傾くヨークの体。

 だが、ヨークは倒れない。

 最後に力を振り絞り、足を踏みとどめた。

 しかし、振り起こしたヨークの上半身の魔装装甲は、胸のところが砕けてぽっかりと穴をあけていた。

 ヨークは再びナイフを構えた。

 今度はわき腹でなく、自らの心臓にむけて。

 そう、空いた穴にむき出された、己が胸にナイフの先を添えたのである。

 ――ギリギリまで耐えてやる。

 小いさく刻むヨークの鼓動だけが、やけに大きく聞こえるようだ。

 かすむ意識の中で、魔血ユニットの警告音に集中した。

 ――コイツが、最後の警報を出した時、それが合図……



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