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⑤俺はハーレムを、ビシっ!……道具屋にならせていただきます1部4章~ダンジョンで裏切られたけど、俺の人生ファーストキスはババアでした!~美女の香りにむせカエル!編  作者: ぺんぺん草のすけ
第三部 第一章 病院ではお静かに

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死にたがり(6)

「少年! エメラルダ様を連れて、先に行け!」

 ヨークの命令が、タカトに飛んだ。

 二人のやり取りに呆気に取られていたタカトが我に返る。

 そして、急いでエメラルダの手を肩に回し、抱き起す。

「分かったよ! ヨークの兄ちゃんも無理するなよ!」


 暗殺者たちが、じりじりとヨークとの間合いを詰めていく。

 ヨークは首からかかる二つの破片を右手に取った。

 その破片はボロボロだ。

 一つはヨークと書かれたおちょこの破片。

 そしてもう一つはメルアとか書かれた、砕けた破片。

 ヨークは、何か意を決したかのように、もう一度、その破片を強く握りしめた。


「さて、いっちょやりますか!」

 ヨークの左手が懐から折りたたみナイフを取り出した。

 手のひらで慣れた様子でナイフを広げる。

 格闘タイプのヨークがナイフとは、ついに拳で闘うことをあきらめたのか。

 いや、そうではなかった。

 そのナイフは、くるりと手のひらで半回転すると、ヨークの左わき腹に突き立てられた。

 そう、ヨーク自身の手で、自らのわき腹を突き刺したのである。

 ドクドクと流れ出す赤い血液。

 だが、その流れ出す赤い血筋は、一点を目指していた。

 そう、腰についた魔血ユニットである。

 ヨークの腹から流れ出した血が、魔血ユニットを赤く染めていく。

 ――さぁ、一緒に行こう! メルア!

「開血解放!」

 ヨークが叫んだ。

 それと共に魔血ユニットが甲高い起動音を響かせた。

 ヨークの体の内側から、魔装装甲が肉のように盛り上がる。

 盛り上がった肉塊は、黒光りを帯びていく。

 洞穴の中に黒きトラの魔装騎兵の目が光る。


 エメラルダは叫んだ。

「ヨーク! 開血解放を解きなさい! ココにはもう、魔血タンクはないんですよ!」

 そう、神民でなくなったヨークは、魔血タンクを持っていない。

 当然、エメラルダも持っているはずがなかった。

 なら、ヨークはどうやって、魔装装甲を開血解放したのであろうか。

 それは、己が血である。

 わき腹から流れ出す血を魔血ユニットに流し込み、それで開血解放を行ったのだ。

 しかし、所詮は人間、出血量には限界がある。

 大量に噴き出せば失血死を招く。

 また、血が止まれば、魔血不足により、ヨークの体は人魔症を発症してしまう。

 どちらにしても、ヨークには、死しかないのである。

 だがヨークは笑っていた。

「ご心配なく! こんな奴ら、とっとと、終わらせますよ!」

 要は、死が訪れるまでの間に、暗殺者たちをぶちのめせばいいだけなのだ。

 しかし、目の前の暗殺者たちはレモノワの暗殺者。

 そうそう簡単には倒れてくれそうにはない。

「この魔装騎兵ヨークがいる限り一歩も通さん!」

 黒きトラの咆哮が、暗い洞窟内に響き渡る。


「ビン子! いくぞ!」

 タカトは、ヨークの叫び声にただならぬものを感じ取っていた。

 だが、今は理由を聞く暇はないだろう。

 ならば、言われた通りエメラルダを連れて走るのみ。

 タカトは毒で足がもつれるエメラルダを担ぎ、懸命に走り出した。

 ビン子も後ろを気にしながらついていく。

 エメラルダは、後ろを振り向き、手を伸ばす。

 ――死なないで……ヨーク。



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