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⑤俺はハーレムを、ビシっ!……道具屋にならせていただきます1部4章~ダンジョンで裏切られたけど、俺の人生ファーストキスはババアでした!~美女の香りにむせカエル!編  作者: ぺんぺん草のすけ
第三部 第一章 病院ではお静かに

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第339話 小門の楽園(3)

「喜べ! 町の商人たちが、ココに商品を持ってきてくれるそうだ」

 街から帰ってきた僧たちの報告を聞いたガンエンが、嬉しそうにコウエンとビン子に話しかけた。

 そして、洞窟の中でひっそりと生活するスラムの住人たちの様子をくるりと見まわした。

「ここの者たちも、久しく買い物などしていないからな……っと、タカトや、お前、何しとる?」

 ガンエンは犬のような恰好をしているタカトを、不思議そうに見つめた。

 タカトは、ジジイには興味ないわい! と言わんばかりにそっぽを向く。

 まじで、この犬、感じ悪い!


「ガンエンさま、かといって、ココの者たちは、ものを買うだけのお金など持っていませんよ」

 コウエンは寂しそうにつぶやいた。


「そんな事言われんでも分かっておるわ! だが、万命寺の隠し財宝と言うものがあるじゃろうが!」

 ガンエンは自信満々に胸を張った。

「そんな話聞いたことがありませんが……」

 それに対し、コウエンは不思議そうに頭を傾げた。


「まぁ、そうじゃろな……だって、そんな物、最初からありはせんからな」

 さらに胸を張るガンエン。

 その横で、タカトがずっこけた。

「ジジイ! バカか! それなら隠し財宝などと期待させるなよ!」


 ガンエンは腕を組みながらタカトを見下す。

 本当にこいつは短絡的な奴だと言わんばかりに、あきれ果てた目で見ているのが分かる。

「タカトや、よーく考えてみい。焼け残った万命寺の備品が、あるじゃろうが! 一応、年代物のアンティークの高級品ぞ!」

「そんなものがあるんだったら、とっくに盗まれとるわい!」

 タカトがすかさず突っ込みを入れる。


「タカトや……だから、お主は、先が読めておらんのじゃ! すでに、そんな物、回収済みよ!」

 自信満々にガンエンが洞窟の奥の暗闇を指さした。

 タカトが目を凝らす。

 その先には、金の仏像やら、燭台など、古くから寺に伝わる逸品が無造作に転がっていた。


「えっ! あのお寺の大事な物、売っちゃってもいいんですか?」

 ビン子が、そのガンエンの言葉に驚いた。

「いいんじゃない? だって、寺もうないしのぉ」

 ガンエンは人ごとのように口笛を吹いた。

 その横で指をかみ悔しそうな表情を浮かべているタカト。


 ――チッ! やはり、遅かったか……どうりで、焼け跡に探しに行っても目ぼしいものが無かったはずだ……

 タカト君……あんた、火事場泥棒ですか……


 だが、よくよく考えてみると、この小門に誰かが来るのはマズイのではないだろうか。

 だって、この小門には、魔人国と通じた罪で罪人となったエメラルダが隠れているのだ。

 もしかしたら、その商人たちだって、エメラルダを捕まえようとするかもしれない。

 いや、捕まえようとしなくとも、エメラルダがいると分かれば、アルダインに通報するかもしれない。

 いやいやいや……実際は、そんな次元の話ではない。

 すでに、この小門の中に、エメラルダがいると気づいている奴がいるのだ。

 そう、アイツ……オオボラだ。

 

 タカトは、ガンエンに注意した。

「だけど、オオボラは、この小門の場所、知っているんだぞ。もしかしたら、オオボラの奴がエメラルダさんを捕まえにくるかもしれないだろ」


 しかし、ガンエンはあきれた様子で答えた。

「タカトや。もう、オオボラは神民じゃ。あいつは、この小門の中へは入れはせん」


「ならば、オオボラが自分の奴隷たちを使って追ってくるかもしれないじゃないか」

「なら、その奴隷たちだけを警戒していればいいんじゃないのかな?」

「その商人だって、オオボラの奴隷たちかもしれないだろ?」

「そうじゃなぁ……だが、今回ここに来てくれるのは、今までずーっと街にいた顔なじみの商人たちじゃ。さすがに、奴隷たちを、すぐさま顔見知りの商人にすることは難しいじゃろぅて」

「そうか……顔見知りの商人たちか……」

 確かに、万命寺が燃える前から付き合っていた商人たちであれば、すなわち、それはエメラルダが罪人となる前からいた商人である。

 それは、街に買い出しに行った僧たちが、確認しているのだから間違いないだろう。

 ――なら、大丈夫か……

 しかし、タカトは一抹の不安を拭い去ることができなかった。


 なぜなら、あの温泉の御簾垣の前で見せたオオボラの表情がタカトの心に深く残っていたのだった。

 湯煙の中、タカトに笑いかけるオオボラであったが、目だけは全く笑っていなかった。

 それどころか、まるで、得物を見つけたオオカミのように、まっすぐにタカトをにらんでいた。


 あの目……


 思い出したタカトは身震いをした。



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