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⑤俺はハーレムを、ビシっ!……道具屋にならせていただきます1部4章~ダンジョンで裏切られたけど、俺の人生ファーストキスはババアでした!~美女の香りにむせカエル!編  作者: ぺんぺん草のすけ
第三部 第一章 病院ではお静かに

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第337話 小門の楽園(1)

 小門の中の洞窟の中は、見違えるほどきれいに整備されていた。

 コウモリの糞まみれの岩肌は、権蔵の手によって掃除され、滑らないように平らに削られ道となっていた。

 壁には、ヒカリゴケの明かりだけではなく、魔人国で使われていた発光する小さな魔物を封入したランプもつけられていた。それらの明かりが、その洞穴の中を照らしている。

 それでも、まだ、明かりが足りないと思われるところには、たいまつの光が追加され、赤々と洞穴の中の暗闇を消し込んだ。

 その中でも、命の石があった大きな空洞のホールは、ひときわ大きく変化していた。

 と言うのも、タカトが命の石の生気を吸収したため、あの固かった石が、ボロボロに柔らかくなっていたのである。そのせいで、そのホールの天井が崩れ、外から日の光が差し込むようになっていたのである。

 人々は、その差し込む光を中心として、集まっていた。

 ココには、この小門の中に逃げ込んだスラム街の人間や万命寺の僧たちが、決められた場所にテントを構え、ガンエンの指示のもと、秩序ある生活をしていた。

 地下水が湧き出て川を作っているため水には困らない。

 食料については、魔人世界から入ってくる魔物を駆逐しながら肉へと加工する。

 ただ、野菜や穀物については、どうしようもなかった。

 そこで、定期的に、万命寺の僧の何人かが、街へと買い出しに走っていたのである。

 ただ、万命寺の僧たちは、エメラルダを匿った反逆者として、罪人となっていた。

 そこで、ガンエンは、僧たちに変装させたのである。

 まぁ、変装と言っても、そうたいしたものではない。

 髪が生えてくるまで、かつらをかぶせただけなのである。

 だが、髪と言うものは、それだけでみばが変わるものである。

 いつも坊主頭であった、修行僧がかつらをかぶるだけで、イケメンに変わるのである。

 そりゃそうである。日々、万命拳の修行に明け暮れていた僧たちであるから、体格はいいのである。それが、ちょっとイケている髪型になれば、そりゃ、いい男になるのは言うまでもない。

 おかげで、スラムに住む年頃の女たちは、万命寺の僧たちに首ったけなのだ。

 まぁ、それを面白くないと思う男もいる。

 俺も男だぞ! と言わんばかりに、スラムの男達は、少々不機嫌である。

 その中でも、とりわけ不機嫌なのが、タカトであった。

 ――俺だって、万命拳を修行した身だ!

 確かに、君だって万命拳を修行したよね……でも、万命寺の僧たちのように、もっと厳しい修行を何年も続けたわけではないよね……

 だから、タカトの体は貧弱のまま……当然だよねぇ~。

 そのうえ、女の子を見つけたら、肩端から「おっぱい揉ませてください!」などとのたまっているのだから、もてる要素など全くないのである。

 だが、タカト自身は、それが分かっていないのだ。


「なぜだ! なぜ! 俺はもてないんだ!」

 などと、横に座っているビン子に目を血走らせながら訴えていた。

 一方、ビン子は、なぜか必死に笑いをこらえて、顔をそむける。

「こっち見ないで……」

 笑いをこらえながら、必死にタカトへと懇願した。


 それもそのはず、タカトの頭には犬の耳が乗っているのである。

 犬の耳は耳でもたれ耳ではなく、柴犬のような立った耳。

 そして、何よりも、その鼻には犬のような黒い鼻とひげがくっ付いているではないか。

 ハッキリ言って間抜けである。

「はあ、はぁ、はぁ、ちょっとやめてよ。一体、それは何なのよ……」

 笑いをこらえながら、ビン子はタカトに尋ねた。

「聞いて驚け! これは、あどけない子犬のように乙女心をゲットする『ワンちゃん! 一緒にお風呂に入りましょセット!』だぁぁぁぁあ!」

 拳を突き上げるタカト。

 さらに噴き出すビン子。

「いや……それ、タダの犬の変装だから」

「お前はアホか! これはただの犬の変装道具ではないわ! この犬耳により遠くの乙女のため息までも聞き逃さない。そして、落ち込んだ心にまさに、あどけない子犬のように甘いき泣き声で囁き、ついに一緒にお風呂にゴールイン! この素晴らしい道具の利用価値が分からんのか!」

 ビン子は、腹を抱えて、足をバタうった。

 だって目の前のタカトは、それは犬は犬でも、子犬ではなくて、変な犬! いや、マジでキショイ犬なのである。

「絶対だれもタカトと一緒にお風呂なんかに入る訳ないじゃん! それどころか、駆除対象よ! 駆除対象よ!」

 ちっ!

 タカトは舌打ち、ビン子をにらんだ。

「選択を誤ったか……時代は犬耳ではなく、ネコミミか!」


「そこじゃないから!」

 ビン子は、とっさに突っ込んでしまった。

 これは、タカトの作戦に引っかかったのだろうか? なんか少々悔しさが込み上げていた。



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