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⑤俺はハーレムを、ビシっ!……道具屋にならせていただきます1部4章~ダンジョンで裏切られたけど、俺の人生ファーストキスはババアでした!~美女の香りにむせカエル!編  作者: ぺんぺん草のすけ
第一部 4章 ダンジョンで裏切られたけど、俺の人生ファーストキスはババアでした!~美女の香りにむせカエル!編

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あれ……この感覚……前にも……

 ビッー! ビッー! ビッー!


 警告音が鼓膜を突き刺す。高周波の電子音が連続して鳴り響き、タカトの脳を直接揺さぶった。


(わっ! なんだよ! びっくりした!)


 まぶたの裏を、鋭い閃光が突き抜ける。反射的に目を開けた視界に広がったのは、漆黒の闇。どこまでも、完全なまでの黒だった。


(確か俺……洞窟の中にいたはずだが……これ、夢だよな!?怖すぎる……)


 混乱した思考のなかで、ちらちらと光が浮かびはじめる。白や青の光点がまばらに散る。星──いや、違う。星じゃない。

 正面には、矩形の青白く輝く大画面。明らかに人工物だ。


(……あれ? どこかで見た光景だぞ……)


 意識を引き締めようとするが、首は微動だにしない。まばたきすらできず、まるで眼球だけが別の意識に支配されているようだった。


(なんで体が動かねぇんだ? 閉じ込められてるみたいだ……)


 その時、突然、別の声が耳に飛び込んできた。


「また、ワイバーンの群れかよ! いったいどれだけ湧いてやがるんだ!」


 それは自分の声だった。しかし喉も口も何も動かしていない。なのに、声は確かに聞こえている。


(あれ……この感覚……前にも味わったことがある……)


 既視感。はっきりと覚えている。


(そうだ……あの時も、こいつは高斗(タカト)って呼ばれてた……俺、また繋がってるのか?)


 その時、大画面に鮮烈な赤が飛び散った。


 《LOCK ON!》

 《LOCK ON!》

 《LOCK ON!》

 《LOCK ON!》


 四つのターゲットが同時に捕捉される。HUDヘッドアップディスプレイの情報が目まぐるしく更新された。


(……まさか、これがあいつの視界なんだな……?)


「くたばれ! このEBE(地球外生命体)どもが!」

 高斗(タカト)が怒声を上げた。瞬間、


 ガガガガガガガガガ!


 振動。衝撃。空気を裂く駆動音。

 人型装甲騎兵『玄武』の背中から伸びた四本のアームと、既存の両腕──合計六つの重機関銃が、一斉にフルオートで射出を開始する。


 発射数、毎秒100発。マズルフラッシュが連続し、まばゆい光の奔流が画面を覆った。

 その向こう。紫色の異形体が爆ぜ、光の尾を引きながら墜ちていく。


(これ、ワイワイバーン(制圧指標55)じゃん……)


 タカトは確信する。高斗(タカト)が戦っている相手は、魔人世界の魔物たち。

 だが、ディスプレイに映る光景は、タカトたちがいた聖人世界のそれとはまるで違っていた。


 次の瞬間、轟音とともにコックピットが大きく傾く。

 高斗(タカト)の体にGがかかる。視界が急旋回し、HUDが赤く警告を点滅させた。


 《EMERGENCY!》


(うわ! なんだよ! なにが起きてんだよ!)

 パニック寸前のタカト。だが、高斗は冷静だった。

 手元のコンソールに素早く手を伸ばし、ハンドル操作。スラスタ再点火、機体を水平に戻す。


「ちっ! 右アーム直撃か! アシュラシステム、右上腕パージ!」


 瞬間、機体右腕のジョイントが自動展開。内圧解放音とともに、油圧シリンダーが爆発的に収縮し──


 ガコンッ!


 外部アーマーが破裂する。右腕ユニットが分離し、外殻を滑り落ちていく音が機体の外から聞こえた。


 戦闘続行。

 残された三本のアームによる再バランス制御に移行し、迎撃態勢を維持。


(……え、なにこれ。スゲぇ。ていうか、俺、今、なに見せられてんの……?)


 タカトの意識は大きく揺らぐ。

 状況は、完全に理解の範疇を超えていた。


 だが、先ほどまで『ガガガガガガガガガ!』という振動と轟音を撒き散らしていた重機関砲が、突如として『カラカラカラ……』と乾いた金属音に変わった。


「ちっ! 弾切れかよ!」

 高斗(タカト)が通信回線に怒声をぶつける。

「おい、補給ポイントはどこだ!」


 耳元に、通信越しの女性オペレーターの声が駆け抜ける。

「新宿駅に補給用物資の列車を到着させてます! そこで補給をお願いします!」


 即座に、戦術マップがコクピットのHUD上に更新された。

 各ブロックを示すグリッドの一角が、パルス状の橙色に点滅する。


「ワンブロック先か……だが、この玄武のスピードで持ちこたえられるのか……」

 ――この機体の脚部アクチュエータは後方支援型だ。本来ならあの火線を突破できるわけがねぇ……!

 だが、次の瞬間、高斗(タカト)の口元がニヤリと釣り上がった。


「いやwww おれが魔改造した玄武RXバージョン5.03“改”なら、行ける!」


 フットペダルを一気に踏み込み、最大駆動モードへ。

 高周波のモーター駆動音が、密閉されたコクピット内に甲高く反響する。

 脊髄を抉るような加速度Gが、椅子のバックレスト越しに背骨を撓らせた。


(うおおおおっ! 速いっ! でも、これ……俺の体、まったく動かねぇ……!)

(これは夢か? いや、現実味がありすぎる……)


 だが──

 数の暴力には勝てない。

 魔物の群れが、まるで濁流のように玄武を飲み込む。


「アシュラシステム、防御モードへ移行!」


 背中のランドセルから延びる三本の腕が、重厚な鋼鉄シールドを展開し、玄武本体を覆う。

 しかし、防御のために伸びるアームの関節部、冷却フィン。あらゆる露出部に魔物の牙が突き立てられた。

 衝撃、警告、熱。次々に赤いインジケーターがモニターを埋め尽くしていく。


「警告──アシュラシステム左下腕部サーボモーター、応答遅延発生」

「警告──アシュラシステム右下腕部駆動油圧回路、漏洩開始」

「警告──アシュラシステム左上腕部装甲、臨界点突破」


 ――静かだ。だが、機体は確実に崩れていく。


 それでも高斗(タカト)は、なおもアクセルを緩めない。

「俺を舐めるなよ!」

 ――こっちはあえてアシュラシステムを囮にしてんだよ! 牙を立ててきた瞬間、そいつごと粉砕する!


 玄武の両腕に握られていた二振りの超振動チタンブレードが、ブースターによる瞬間振動出力を限界突破まで引き上げる。

 刀身が白銀から蒼白へと相転移し、鋭く輝いた。


 目の前に立ちふさがるのは、全長十メートル超の大型魔物──百牙蛇蟲(ヒャクガジャチュウ)(制圧指標102)!


 だが、高斗(タカト)は微塵も動じない。

 レバーを一気に振りぬく!


 ガガガガガッ!


 超振動波によって撃ち出されたブレードが、大気ごと敵影を両断する。

 魔物の全身が音速で裂け、その体液が爆発的に噴き出した。


 それでも高斗(タカト)は止まらない。

 次なる標的へと、破砕の進軍を続ける!


(こいつ……どこまで無茶をやる気だよ!? っていうか、なんで俺は、こんな奴の中にいるんだよ!?)


 吠えるような駆動音とともに、機体はガード下から空へと跳ね上がる。

 重たい風が、装甲の隙間を叩いていった。


 着地の衝撃で、地面が震え、レールが飴細工のように歪む。だが、そんなことなど意に介さない。


「補給物資はどこだ!」

 視線を走らせた先、駅構内に停車している補給列車を発見する。

「あそこか!」

 アクセルを踏み込もうとした──その瞬間、背筋に悪寒が走った。


 補給列車のまわりには、警護のための人型装甲騎兵『白虎』が七体。

 しかし……そのすべてが、まるで時間が止まったかのように動かない。

 ピクリとも、微動だにもしないのだ。


(なんだよ、あの静けさ……)

 ――……嫌な予感しかしねぇ。


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