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⑤俺はハーレムを、ビシっ!……道具屋にならせていただきます1部4章~ダンジョンで裏切られたけど、俺の人生ファーストキスはババアでした!~美女の香りにむせカエル!編  作者: ぺんぺん草のすけ
第三部 第一章 病院ではお静かに

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トイレのタカトさん(1)

 コチラは、研究棟から逃げ出したカルロス一向。

 わき目もふらずに、のびる廊下をひたすら懸命に駆けている。

 カルロスを先頭として、ピンクのオッサンと続き、その後ろに、残った収容者たちが何とかついていく。

 少し遅れてコウスケが後ろを気にしながら走っていた。

 コウスケの後ろには、ハァハァと息を切らしながら走るビン子の姿。

 少々体育は苦手な女の子。こんなに全速力で走ったら、すぐに息が上がってしまう。

 そして、そのビン子の後ろ、すなわち、最後尾を、怪獣の着ぐるみを着たタカトがヒョコヒョコと走っている。

 怪獣の頭が取れたとはいえ、まだ、その体は着ぐるみに包まれていた。

 息が上がっているビン子にさえ、追いつくことができない。

 正直走りにくい。

 この着ぐるみを早く脱ぎたいと思っていても不思議ではない。

 しかし、タカトは、この瞬間、別の事を考えていたのだった。

 何を隠そう、タマホイホイの事である。

 ムフフな本を見ながら、シコシコドビュッシーした痕跡を隠滅しなければ、この先、どこの誰に何を言われるか分かったものではない。

 幸運にも、貯蔵室から抜け出せたのだ。だからこそ、今! タマホイホイを回収。いや、完全破棄をしなければならないのだ!


 前の廊下の角から、突然、守備兵たちが姿を現した。

 この守備兵、真音子が聞いた足音の守備兵だろう。

 と言うことは、イサクに出会う前にカルロス達と鉢合わせをしたようである。

「こっちに逃げ込め!」

 カルロスは大きな声で叫ぶと、十字路の上で進路を右へとかじを取る。

 それに合わせるかのようにピンクのオッサンや他の収容者も右の廊下へと駆け込んだ。

 遅れながら、コウスケと共に、ビン子も右へと曲がっていった。

 しかし……最後尾の怪獣は、なぜか左に駆け込んだ。

 そう、皆とは反対の左の廊下を、一匹の怪獣だけが走っていくのだ。


 怪獣は駆ける。

 ヒョコヒョコと駆ける!

 ――おっしゃあぁ! これで俺を邪魔する者は誰もいない!

 その怪獣の足取りは、いつしかスキップに変わっていた。

 運がついている。そう、怪獣は思ったのかもしれない。

 ――とにかくタマホイホイだ! あれを見つけて完全消去!

 だが、身にまとう着ぐるみがやっぱり邪魔だ。

 ――まずは、こいつを何とかしよう……

 タカトの目の前にトイレの札が見て取れた。

 怪獣は、トイレに駆け込んだ。そして、そのまま個室に立てこもる。

 うーん!

 個室から気張る音が聞こえてくる。

 それと共に、個室のドアがガタガタと揺れる。

 よほど、ウ○コが固いのか?

 いやいや、どうやら、その中で、タカトが着ぐるみを脱ごうともがいているようなのだ。

 しかし、その着ぐるみ、着る時も、二人がかり、やっぱり一人では脱ぎにくい。

 壁に体を押し付けながら、何とか着ぐるみの中から腕を引きずり出していく。

 あともう少しと言うところで、背中がつった。

 ――いてぇぇぇぇ!

 咄嗟に口を自らの両手で押えるタカト。

 ココはトイレでも、人魔収容所の中のトイレである。

 守備兵がいてもおかしくないのである。

 さすが、タカト、状況判断は間違ってない!


「スミマセン……少し静かにしてもらえます……ちょっと、いま力が入っているときなんで!」

 突然、隣の個室から声がした。

 びく!

 そら見ろ! やっぱり誰かいた!

 ――叫び声上げなくてよかったぁ。

 タカトは、額の汗をぬぐう。

「スミマセン! こっちもちょっと厄介な代物でして!」

 タカトは着ぐるみから足を出しながら、申し訳なさそうに答えた。

「お互い大変ですね……」

 個室の向こうの声は、少しトーンが落ちていた。

 すでに山場は越したのだろう。

 タカトは、完全に着ぐるみから脱皮し、ブリーフパンツ一丁の姿になっていた。

 ふうーと一息つくと、トイレに座った。

 どうしようかな、お隣さんがいなくなってから出ようかな。

 ――顔合わせると気まずいし……

 タカトがそんなことを考えていると、またもや隣から声がした。

「スミマセン……トイレットペーパー貸してもらえますぅ?」

 ――なに! お隣さん! トイレットペーパーがないだと!

 それは緊急事態!

「どうぞ! これ使ってください!」

 タカトは、壁についているトイレットペーパーを外して、隣の個室に投げ入れた。

「あっ……ありがとうございます」

 隣の個室から水が流れる音がした。

 隣の人は、無事、危機を乗り越えることができたようである。

 やはり、困った時はお互いさまの気持ちが大切だ。

 タカトも安堵の表情をのぞかせた。



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