警報(1)
この人魔収容所の所長であるソフィアからはそのような命令は出ていない。
だが、確かに、目の前の移送命令書のサインはセレスティーノのものである。
ソフィアとセレスティーノであれば、騎士であるセレスティーノ方が格上である。
移送命令書が本物であれば、この命令書に従わざるを得ない。
宮仕えの辛いところである。
男たちは、命令書の一文字一文字に目を通す。
そして、机の上の、収容者の名前と突合せを始めた。
サインは本物……
確かに収容者たちの名前も合っている……
だが、男たちは、一番最後の収容者の名前のところで目が止まった。
うん?
男たちが首をかしげている。
最後の名前と言えばビン子のことか?
そうか……ビン子の名前が違っていたのか……
やっぱり貧乏神のビン子なんだよ……
いや、違う!
ビン子の後に、もう一人いる。
真の最後の者の名があった。
そう、タカトである。
タカトの名前が一番最後に記されていたのである。
しかし、タカトの名前のどこに疑問をいだく事があるのだろうか?
「あのう…………これは何でしょうか?」
男たちは、移送命令書をコウスケに差し出し確認した。
コウスケが命令書を確認する。
「どれだ?」
「これです…………」
男は、タカトの名前の後ろを指さした。
「うん? ハートマークだが?」
コウスケは答えた。
ハートマーク? なんでそんなものがタカトの名前の後ろにかかれているのであろうか?
コウスケが、最後にタカトの名前を書いた時に、ついつい無意識に書いてしまったのである。
「なんで命令書にハートマークがあるんですか! これは偽物ではないのですか!」
男たちは声を荒らげ、コウスケをにらむ。
しまった。
俺としたことが……
もしかして、今、気が付きました?
横でカルロスが顔を手で押さえている。明らかに、バカにしたような顔で天を仰いでいる。
ピンクのオッサンは、なぜかガッツポーズ。
いや、今はガッツポーズの場合じゃないから。
コウスケは反省した。
しまった! 確かにハートマークはない……
これでは、せっかくの文章が伝わらないではないか……
一世一代のコウスケの見せ場だったのに!
そこはハートマークではなく、『大好きです!』と直球を投げるべきであった……
コウスケは深く反省した。
反省理由が違うワイ!




