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⑤俺はハーレムを、ビシっ!……道具屋にならせていただきます1部4章~ダンジョンで裏切られたけど、俺の人生ファーストキスはババアでした!~美女の香りにむせカエル!編  作者: ぺんぺん草のすけ
第三部 第一章 病院ではお静かに

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人魔収容所(4)

「ココに入っていろ!」

 タカトとビン子は、貯蔵室の一つの白い牢屋の中に放り込まれた。

 床に倒れ込むタカトとビン子。

 その後ろでガチャリと檻の閉まる音。


「ココから出せ!」

 タカトが檻にしがみつき激しく揺らす。

「ソフィア様がおっしゃる通り、作り方を教える気になれば、出してやる」

「それはちょっと……」

 急に静かになるタカト。

 バカにしたように衛兵は、鍵をくるくると回しながら、その場を離れていった。

「どうしようタカト」

 ビン子は不安そうにタカトに尋ねた。

 下をうつむき黙っているタカト。

 その様子に心配したのか、ビン子は、優しく声をかける。

「タマホイホイって、そんなに難しいの? 私が手伝ったんじゃだめかな?」


 ――ビン子ぉ……お前が手伝ったらますますアカンって!

 内心、いかんともし難いタカトは、力なくその場に座り込みうなだれた。

 ――本当、どないしよう……


「もしかして、タカトじゃないか?」

 はて、この声は? 聞き覚えのある声がしたではないか。

 タカトは、とっさに顔を上げた。

 白い部屋の中の周りを見渡す。

 白い牢屋の檻の前に白い廊下。その廊下を挟んで白い牢屋が並んでいた。

 向かいの牢屋の檻に、なにやら下着姿の男が鉄の棒に顔を押し付けている。


 目を凝らすタカト。


 はて……? あのバカ顔はどこかで見たことがあるような?

 さてはて一体どこでしょう?

 ぼーっと見つめるタカトにいら立ったのか、檻に顔を押し付けている男は、更に怒鳴った。

「お前! タカトだろ! 俺だよ! コウスケだよ!」

 ほほう! この男はコウスケと言うのか……

 うん? コウスケ……?

「あっ! コウスケ! なんでお前がこんなトコロにいるんだよ!」

 タカトも檻に顔を押し付けた。

 白い廊下を挟んで、タカトとコウスケが檻に顔を押し付けあっている。

 その檻の隙間に押し出される二つの顔は、柵に引っ張られ、目が真一文字に伸びていた。

「いや、タカトこそ、なんでいるんだよ!」


 ビン子も驚いた。

「なんで、コウスケがいるの?」

「いやぁ、なんか俺、人魔収容所に収容されちゃって」

「えぇぇ、コウスケって神民じゃなかったっけ?」

「俺、神民だよ。神民なのにこの扱い。ちょっとひどいと思わないですかビン子さん!」

 タカトがすかさず突っ込んだ。

「全然!」

「なんだと! タカト!」

「大体、お前が神民であることがおかしいんだよ! お前、神民学校行ってないだろ!」

「バカ言え! 俺はちゃんと学校には行っている!」

「嘘だぁ、だったら、毎朝、なんで待ち伏せしいるんだよ!」

「そ・それは……ビン子さんと……」

 ――いや……違う。

 それはビン子さんを言い訳として、タカトと会いたかったのだ。

 それは、カレエーナ師匠に気づかされた。

 自分の心に素直になれと。

「お……おれは……」

 コウスケは意を決したのか、タカトに自分の気持ちをぶつけようとした。

 しかし、はやり、緊張する。

 うまく口が回らない。

「何だって?」

 向かいの檻では、タカトがこれみようがしに自分の耳に手を当てて、大きな声で言えと催促してる。

 目をつぶるコウスケ

「タっ!……タカトに……」

「ところでコウスケ?」

 いいところで、ビン子がコウスケに声をかけた。

 はっと、つぶった目を開けたコウスケ。

 ビン子は檻に手をやり、尋ねた。

「コウスケ? あんた、タカトにムフフな本を貸してる?」

 ――えっ? ビン子さん……今、それって確認しないといけないことでしょうか?

 檻に手をかけるタカトが、横のビン子を見ながら固まっていた。

 しかし、ビン子にとっては、一大事。

 もしコウスケのものであれば、勝手に破棄するわけにはいかないのだ。

 ビン子なりに、ムフフな本の所有者を特定しようと頑張っていたのだ。


「ビン子さん……ムフフな本って何のことです?」

 なんか、コウスケは一生懸命決めた覚悟がスッと消えたような気がした。


「そう! それならいいわ」

 ビン子は横で固まっているタカトをにらみつけた。

 檻を掴むタカトは、背を丸め、カタカタと揺れている。

 静かな貯蔵室に、タカトが揺らす檻の音が響き渡る

 まるで、動物園のサル、いや実験動物のサルのようである。


 ビン子の目がタカトを冷たく貫いた。

「タカト……分かっているわよね」

 タカトは、懸命に首を振った。

「ビン子さま、後生です。それだけは……それだけは……お許しください」

 家に帰ればムフフな本が捨てられる。

 直感的にそれを察したタカトは、ビン子の足に泣きすがった。


 しかし、そのムフフな本の処遇については、ココから帰れることができればの話なのであるが。この二人は、分かっているのであろうか? 一体、どうやってここから帰るつもりなのであろうか。

 すでに、怒り心頭なビン子は、泣きすがるタカトの頭をガシガシと足蹴にしている。

 一方タカトは、ムフフな本のためならプライドを捨てた。まさに命乞いに必死である。

 うーん、本当にどうするんだよお前たち……



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