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⑤俺はハーレムを、ビシっ!……道具屋にならせていただきます1部4章~ダンジョンで裏切られたけど、俺の人生ファーストキスはババアでした!~美女の香りにむせカエル!編  作者: ぺんぺん草のすけ
第三部 第一章 病院ではお静かに

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帰りたい・・・(1)

 相変わらず、タカトとビン子はふざけながら、夜の森の道を歩いている。

 タカトの様子をうかがっていた奴隷兵の気配は消えている。既に、真音子とイサクによって、その脅威は取り除かれたようである。

 しかし、タカトとビン子の二人の緊張感のなさと言ったら、どうしようもない。

 静かな森の中で、二人の大声だけが響き渡る。その声の大きさに、森のフクロウたちも声を潜める。


 タカトとビン子は、権蔵の道具屋の前についた。

 権蔵は、今、小門にいる。エメラルダをはじめ、万命寺から避難してきたスラムの人々を小門で匿っているのだ。洞窟の中は、ヒカリゴケが生えているとはいえ、暗い。食料や、防寒など、あらかじめ準備を整えていたが、大勢の人間が押し寄せたのである。今、小門の中はてんてこ舞いである。権蔵は家に帰る間もなく、皆のために動き回っていた。

 だから、権蔵の道具屋は無人のはずなのであった。

 しかし、家の窓からうっすらと黄色い明かりが漏れだしているではないか。


「ビン子! ちょっと待て!」

 タカトがビン子を制止した。

「何よ! 痛いじゃない!」

 タカトの背中にぶつかったビン子が、鼻を押さえた。

「窓を見ろ! 誰か中にいる……」

「ちょっと、怖いこと言わないでよ!」


 道具屋の前の暗い道の上で二人の足がピタリと止まる。

 道具屋の窓から漏れ落ちる光は時折、揺れ動く。

 どうやら、暖炉に火が入っているようだ。

 一体誰が……

 泥棒か?

――いやいや……うちに盗むものなんてあるはずがない。

 タカトは考える。

――もしかして……俺のムフフな本が狙いか? いや! アイナちゃんの本が狙いか!

 もう、君にはそれしか思い浮かぶことが無いのかな……

 しかし、思考がそっちの方向に向いたタカトの焦りは、とどまるところを知らない。

――それはマズイ! あのコレクションを集めるのに、どれだけゴミ捨て場をあさったと思っているんだ!

 その瞬間、タカトの体は突っ走った。暗闇の中にビン子をぽつんと置いて、飛び出したのだ。


 バン!

 タカトは、入り口のドアを勢いよく開け放つ。

「こらぁ! 泥棒! いるんなら出てこい! 俺のコレクションは死んでも渡さん!」


 タカト君……君、本当に何も考えていないだろう……もし、本当に泥棒がいたとしたら、君は、太刀打ちできるのかい?

 いやいや、弱小のタカト君では無理だろう。下手したら、その場で殺されかねないんだよ。

 普通なら、守備兵でも呼んできて、泥棒を捕まえてもらうもんだろう。

 呆気に玄関の前で置いてけぼりのビン子は思った。


 入り口から中を見渡すタカト。

「コラ! 出てこんかい!」

 しかし、部屋の中には誰もいない。いつも通り、少々埃臭い部屋の中で、暖炉の炎だけが静かに燃えている。


 タカトも少々落ち着きを取り戻したのか、声の調子が落ちてきた。やっぱり飛び込んだのはまずかった?

「泥棒さーん! いらっしゃったら返事してください」

 イヤイヤ、普通、泥棒がいたとしても返事はしないだろう。

 道具屋の入り口でランプを振るタカトの背中越しに、ビン子がのぞく。

「誰もいないみたいね……」

「そんなわけないだろ! 暖炉に火が入っているんだから、絶対! 誰かいるって!」

「もしかして……幽霊とか?」

「幽霊が、暖炉に火をつけるかい!」

「タカト! そしたら、誰なのよ!」

「魔物とか……」

「ちょっと、怖いこと言わないでよ……」

「そうだよな……魔物が火をつけるわけないよな……ハハハハ」

 から笑いをするタカト。


 しかし、ビン子は笑わない。

それどころかカタカタと震えている。

「どうしたビン子? ションベンか?」

「あれ……見て……」

 暗い部屋の奥を指さすビン子。

 タカトはその指先に視線をずらす。


 そこには、闇の中に怪しく浮かぶ緑の目。

 二つの緑の眼光が、静かにタカトたちを見つめていた。


 ぎゃあぁぁぁぁ



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