表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
⑤俺はハーレムを、ビシっ!……道具屋にならせていただきます1部4章~ダンジョンで裏切られたけど、俺の人生ファーストキスはババアでした!~美女の香りにむせカエル!編  作者: ぺんぺん草のすけ
第二部  第六章 エピローグ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

165/644

タカトの知らない世界(1)

 タカトは、暗い廊下を恐る恐る歩いていく。

 不安そうな目は、辺りをきょろきょろと伺う。

 その動きに合わせて、先ほど婦長が忘れたランプの明かりが廊下の上で小さく揺れる。


「ビン子さーん。どこにいらっしゃいますかぁ?」

 タカトはなるべく小さな声で叫んだ。

 それでも、静まり返った病院の廊下には、やけに大きく感じられた。


 お……と……だ……ま


 歩を進めるタカトの耳に何かが聞こえる。

 タカトの顔が引きつった。

 ――またかよ……


 先ほど、トイレで用を済ましておいて本当によかったと今更ながら思う。

 この残尿感なら、たぶん漏れることはないだろう。


 おれ・・とん……だ……おれ……まち……

 その音は、どうやら男の声のようである。

 その低い男の声は、何か同じような言葉を繰り返し呟いているようである。

 その声のもとへと、近づくタカト。

 一つの病室からぼそぼそと漏れ出している。


 タカトは病室のドアを少し開ける。

 中を伺うタカトの目は、一つの黒い影を見つけた。

 その影は、ベッドの上で背中を直立させ気が抜けたようにぼーっと座っている。

 そして、つぶやく。


「俺は本当に跳んだんだ……俺の時間は跳んだんだ……間違ってない……」


 タカトは、食い入るように男を見ていた。

 その時、タカトの膝がドアに当たった。


 ガタっ!

 ――やべぇ!


 ベッド上の男は、首だけをくるりと動かしドア先をにらむ。

 咄嗟にタカトは、ドアから目を離すと、後ずさった。

 なぜなら、見てしまったのだ。

 その振り向いた男の顔が、とてもとても楽しそうに笑っているのを。


 病室の中から男が叫ぶ。

「本当なんだ! 俺はあの女に時間を跳ばされたんだ! 記憶喪失じゃないんだ! 信じてくれ!」


 タカトは、怖くなり徐々にドアから離れていく。

 しかし、今度は、隣の病室から何やら聞こえてくる。

 やめておけばいいのに、タカトは、またもや、その隣の病室のドアを少し開けて中を伺った。


「もう、寝たいんだよぉ……夢を見るのが怖いんだよ……」


 タカトは、また、食い入るように男を見ていた。

 その時、タカトの膝がドアに当たった。


 ガタっ!

 ――やべぇ!


 ベッド上の男は、首だけをくるりと動かしドア先をにらむ。

 タカトは、ドアから目を離すと、後ずさった。

 なぜなら、見てしまったのだ。

 その振り向いた男の顔が、ぐちゃぐちゃに崩れていたのを。


 病室の中から男が叫ぶ。

「あそこには夢を実現にする奴がいる! 悪夢を現実にする奴が! 医療の国には絶対に行くな!」


 タカトは、怖くなり徐々にドアから離れていく。

 そして、廊下の奥へと目をやった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ