第九十一話・躊躇なき攻撃
「「「「「えええええぇぇぇ―――――っ!!!??」」」」」
小娘?のルコールから軽くいなされ、宿屋の壁にめり込んで気絶する
ランスのその姿に、この場にいる全員がこれでもかというくらいまで
目を大きく見開いて喫驚してしまう。
「て、てめぇ、この小娘が!よくも...よくもランスをやりやがったなぁっ!
絶対に許さないからぁぁぁあっ!」
『発動せろ!フレイム・トルネードオオォォォオッ!!』
ネージュが怒り顔でルコールを睨みつけると、両手で前にバッと突き出し、
炎魔法...フレイム・トルネードを詠唱する!
「ちょちょ、ちょっと!、ネージュさん!?宿内で炎魔法なんて使わないで
下さいよぉぉぉぉおっ!!?」
「ごめん、プレシアちゃん。さっき、ランスも言っていたけどさ、
プレシアちゃんを助ける為の些細な犠牲だと思って、ここは目を瞑ってね♪」
「いやいや、瞑れませんってぇぇぇえぇぇっ!!」
全く悪びれもなく宿屋の破壊を宣言するネージュに、プレシアが慌ててやめてと
懇願するものの、先程のランス同様、その懇願は軽く受け流されてしまう。
「さぁ覚悟しろよ、小娘ぇぇ!私のこの豪炎なる螺旋の炎攻撃で、その身の全てを
焼き払ってあげるからぁぁぁぁっ!あははっはははー~~~♪」
そしてネージュが高笑いを上げながら、先程発動させたフレイム・トルネードを
ルコールに向けて放つと、唸りを上げた炎の螺旋がルコールの全体を囲う様に
襲いかかっていく!
「へぇ~。魔法使いにしては、中々気合いの乗った攻撃だ♪......でもさぁっ!」
ルコールが襲いかかってくる炎の螺旋攻撃に対抗するべく、腰を踏ん張って
身構えると同時に、ドラゴン技...ドラグニック・スマッシュを発動させ、
右の拳に気をドンドン充電されていく!
『うりゃ!ドラグニック・スマァァッシュッ!!』
そして、気を十分充電させた右拳を思いっきり前に突き出し、正拳突きを
打ち出すと、目の前に大きな真空の波動が巻き起こり、ルコールを襲う
炎の螺旋攻撃の全てを跡形も無く掻き消した!
「なんだとぉぉおっ!う、嘘だろぉぉおっ!?あ、あ、あたいの全魔力を乗せた
魔法攻撃だったんだぞぉぉおっ!だ、だというのに焦りもせず、そんなアッサリ
潰しちゃうだなんて.........!?」
自信満々で放った得意の炎魔法だったのに、それを呆気なく簡単にルコールに
掻き消された事で、ネージュは驚愕した表情を狼狽えながら、ヨロヨロと
後退りしていく。
「駄目だぞ。戦闘中だっていうのに、そんなボケッとしちゃ......」
「――え!?」
我を忘れる様に狼狽えているネージュに向けて、ルコールが軽い忠告を
促した直後、ネージュの目の前からルコールがその姿を掻き消す。
「こ、小娘の姿が消えた!?ど、どこ!?どこに消えたっ!?」
突如、目の前から消えたルコールを見つけるべく、ネージュが顔を左右に
キョロキョロと動かし、周囲を見渡している。
「もう、どこを見てんの?あたしはここだよ、こ・こ・♪」
そんな動揺全開のネージュの後ろ側に素早く回り込んでいたルコールが、
ネージュの肩をトントンと叩くと、
「――なっ!?う、後ろだとっ!?」
それに驚いたネージュが、急ぎ慌てて後ろへと顔を向ける。
「て、てめえぇぇえっ!?い、いつの間にそん――――なあっ!?!?」
だが、その目線に映るものは、今にも自分を叩き殴ろうと突き出されて
いたルコールの拳だった!




