第八十二話・おっさん、からまれる
「おっと!逃がしませんぜ、おじ様♪」
「ちょ、プレシアッ!?何で俺にしがみつくっ!?」
「だってぇ~私、まだまだおじ様をからかい足りてません♪」
「なんじゃ、そりゃあ!?そんなくだらない理由でお年頃の女性が
おっさんだが、男性である身体に抱き付いてくるんじゃありませんっ!」
俺はプレシアに年頃の女性らしくしろと注意しながら、プレシアを背中から
振りほどこうと、懸命なって身体を大きく振るが、全然離れてくれない。
そんなドタバタをやっていると、
「おいこら!おっさんっ!いい加減にプレシアさんから離れたまえっ!
プレシアさんが迷惑しているだろうがっ!」
突如、少し離れたテーブルに屯っていた三人組のリーダーらしきイケメンの
青年が、俺に向かって人差し指をビシッと突き付け、叫声を荒らげると、
座っていた椅子から勢いよく立ち上がり、こちらに早足でズカズカと音を
立てて近づいてくる。
「いや...離れろっと言われてもなぁ......どう見ても、この子の方から
俺に抱き付いてきてるし、迷惑を被っているのも俺の方だと思うんだが?」
「ふざけるなよ、おっさん!お前みたいなジジイな男性に、プレシアさんが
付きまとうだなんて、そんな事ある訳がないだろうがぁあっ!」
レンヤの言い訳にイケメンの青年がイラッとした顔で完全に否定すると、
小馬鹿を含んだ蔑んだ自分理論でレンヤを責め立ててくる。
「し、失礼な奴だな。お前の目は節穴なのか......」
だって俺の背中に思いっきり張り付いて、両手両足でギュッと抱きついて
いるんじゃん、こいつ。
俺がそんな愚痴を心の中でこぼしていると、
「......やれやれですわ。このおじさん、なんと自惚れのお強い御方なので
しょうか?」
「全くだぜぇっ!おかげで酒を思いっきり、吹いちまったじゃねぇかっ!」
目の前にいるイケメン青年と屯っていた、残りパーティメンバーの二人の
女性が、青年と同じくレンヤの態度に呆れながら近づいてくる。
俺達の元に近づいてきた二人のうち、左側にいる...あの城にいた神官の服に
似たロープを纏う女性が、
「それにしても、さっきから黙って聞いていれば、先程から言い訳にも
ならない世迷い言ばかりをお言いになられて...いいですか、おじさん。
そこのランスの言う様に、あなたみたいなお年寄り、若い女性は誰ひとり
見向きなんていたしませんわ!ホント...身の程を知りなさいなっ!」
癖毛の無いサラサラ金髪ストレートヘアを手でパッとなびかせ、清楚を醸す
碧眼でしばらく俺をジィィーッと値踏みした後、蔑んだ表情でフッと嘆息を
吐いつつ、俺を小馬鹿にしてくる。
そして俺に近づいて来た二人のうち、右側にいる...黒いローブに大きな
とんがり帽子を被った、魔法使いのような風貌の女性もまた、
「そうだぜ、おっちゃん!ランスLVのイケメンおっちゃんならいざ知らず、
あんたみたいな不細工で平面顔をプレシアちゃんが相手なんぞする訳ないじゃん!
そいつの言う様に、身の程を知れってんだっ!」
見た目とは全く真逆の男勝りの口調で、俺の顔をジロリと睨みながら貶してくる。




