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第二百七十六話・我は強い子


「イヤ~食事室を見たら、ますますお腹が空いてきちゃったな。アーニャ

ちゃんもお腹が空いているよね?」


「い、いえ。わたしは別に......その......」


「ふふふ。無理をするな、アーニャ。悲しいがお腹の虫は抑えられないぞ!」


「―――はう!?」


ホノカから指摘され、アーニャがあわあわと慌てながら自分のお腹を抑える。


「...むぅ。そ、そういうホノカ様こそ、先程からグーグーとお腹が鳴りやまぬ

状態ですわよ♪」


アーニャは少しム~とした表情で、今の仕返しと言わんばかりにホノカの

お腹をツンツンと突ついてそう言い返す。


「こ、これは違うぞ、アーニャ。こ、これはだな、我が口で言っているの

だっ!グーグー!ど、どうだ、アーニャ!わ、我の言う通りだろっ!!」


「あはは...意外に頑固なのですね、ホノカ様って......」


「流石にその誤魔化し方は、少し無理があると思うぞ、ホノカ......」


ホノカの苦しい言い訳に、アーニャとレンヤが呆れてしまう。


「それよりもさっきからやたらと良い匂いが鼻に入ってくるな?調理室で

何か旨い物でも作っているのかな?」


「こ、この匂いは!柑橘系のフルーツを使ったパイのようです!わたしの

大好物なんですよ、これ♪」


「おお、アーニャのふにゃけた顔を見るに、これはかなりの絶品食べ物なのは

間違いないようみたいだな!これは是非とも食うしかないぞ、主よ!ではっ!

あの竜女に全てを食い尽くされてしまう前に、いざ食事室へと参るぞっ!」


ホノカがフンスと鼻息荒くすると、食事室に向かってスタタと早足で

駆けて行く。


「お、おいホノカ!そんなに慌てて走ると転んじゃう――――あ!」


レンヤがホノカをとめようとするが時既に遅く、ホノカは床に向かって

豪快にバタンとずっこけ転んだ。


「だ、大丈夫か、ホノカ!」


「うぐ...痛くない......ぞ。な、何故なら...我は強い子。さ、最強の...最強の

魔法擬人...。だから...決して痛くなど......うぐぅ.........ぐす」


ホノカは我慢すればするほど、目尻に大きな涙がドンドン溜まっていく。


そんなホノカに、


「ったく...我慢なんかしていないでケガを見せてみろ!」


レンヤが軽く嘆息を吐くと、ホノカのケガをポーションで治していく。


「これで......よしっと!次からはちゃんと足元には気をつけて、歩くなり

走るなりをしろよ、いいな!」


ホノカのケガが完治したのを確認したレンヤは、ホノカの頭にポンと手を

置き、優しく頭を撫でながら行動の注意をする。


「......す、すまん、主。次からは気をつける。実はめちゃくちゃ痛かった。

つい泣いてしまいそうだった!」


頭を撫でられ頬を赤くするホノカが、レンヤの注意を素直に聞く。


「うう...ズルいですわ、ホノカ様。わたしもレンヤ様から頭をなでなで

して下さいませっ!」


レンヤに頭をなでなでされているホノカを見て、アーニャが頬を思いっきり

プクッと膨らませて羨ましがっている。


「ん?なんだ?アーニャも主のなでなでを所望するか。ふむ...永き病み、

そして深き闇から回復できた記念だ。よしっ!アーニャにも主のなでなで

権利を進呈しようではないかっ!」


ホノカがそう言うと、手招きをしてアーニャにこっちへ来いと声を掛ける。


「ホントですか!?あ、ありがとうございます、ホノカ様っ!」


ホノカの呼び掛けに、アーニャが花咲く笑顔で近寄って行く。


「ふふ...主のなでなでは至高至福だぞ!」


「はい!それは見ていてヒシヒシと伝わってきますわ♪あ...で、でも、

本当によろしいんですか......レンヤ様?」


顔色を伺うような上目遣いで、アーニャがレンヤの事を見てくる。


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