第二百六十一話・何度か見たデジャヴァ
「ほ、炎がああ!?あ、あついぃぃいい!?よ、鎧が赤くなってい.........
あづづうぅういいいぃぃっ!!」
「こ、このままでは全身を火傷してしまう!いや!も、燃やされて
しまうぅぅうっ!」
「も、もう堪えられん!よ、鎧を脱ぎ捨てなければぁぁあぁあっ!!」
「け、剣も盾も駄目だ!も、持っているのが、も、もう限界だあぁぁあっ!」
ホノカが放った炎の渦に直撃した騎士達は、パニック全開で熱くなっていく
鎧をポイポイと脱いで、そして剣と盾を遠くに放り投げ捨てていく。
そして、
「うわわあわわっ!?け、剣が!た、盾が!よよ、鎧が凍っていくぅぅうっ!?」
「は、肌が痛い!?凍度がドンドン拡がっていく!?」
「こ、これは!?け、剣が!た、盾が!手にくっ付いて離れない!?」
「よ、鎧もだ!鎧が肌にくっ付いて離れなくなっているっ!?」
「や、ヤバいぞ!か、完全にくっ付く前に脱ぎ捨てなければぁぁあっ!?」
同じくユキの放った氷弾を食らった騎士達は、装備している剣と盾、そして鎧が
ドンドン冷たく凍っていき、自分達の肌にくっ付いて取れなくなっていくのを
恐怖した騎士達は、あたふたとパニクりながら着ている剣や盾、そして兜や鎧を
次々に脱ぎ捨てていく。
「うぐ...また男どもの真っ裸祭りかよ......」
それを見た俺は、目の前の惨事に具合の悪さを更に悪くしていると、
騎士達が脱ぎ捨てた鎧や剣をドロップしますか?『はい/いいえ』と
いう表示が出てくる。
この後、こいつらに真っ裸でうろつかれるのも何か嫌だったので、
迷わず俺は『いいえ』を選択した。
「しかし魔法も使えるのか、ホノカとユキの奴......」
放った魔法で大惨事を起こしているホノカとユキを見て、俺はそう呟く。
「......元々あいつらって魔法なんだし、それも当たり前なのか?」
まぁいい、それより......
「取り敢えず見た感じ、死んだ奴は誰もいないみたいだな?ふう~どうやら
あいつら、俺の殺すなよという指示はちゃんと守ったみたいだな......」
ホント、死人がいなくて良かったよ。
今から船に乗せて下さいって、直談判をしようとしてんのに、そこで
死者なんて出してみろ、交渉已然の問題だ。
レンヤは、ルコールやホノカとユキの戦いでひとりの死人も出ていない事に
心からホッとして安堵する。
「これで俺達を攻撃してきそうなのは、あの連中だけの様だな......うぐ」
俺は具合の悪さを抑えつつ、残っている連中...補佐部隊に目線を向ける。
「は、はひいぃぃいいっ!?」
「キャァァアッ!こ、ここ、こっちを見てきたあぁぁぁああ!?」
「こここ、殺されちゃうぅぅうう!」
俺の目線に気づいた残っていた連中...補佐部隊達が、顔色を一瞬で
真っ青に変えると、あわあわと動揺しまくり、パニックに陥る。
イヤイヤ!
こ、殺されちゃうって、
一応、誰ひとり死んでいませんよ!?
......でもその勘違いもしょうがないか。
「あいつら暴れ過ぎだってえの.........」
俺はルコールやホノカ達にやられて船上にダメージを負っている連中や
ボロボロになっている船の惨劇に呆れてしまう。
「ハァ...その後、あの連中と交渉する俺の身にもなってくれよ......」
俺は深い嘆息を吐いて頭をポリポリと掻いた後、気持ちを交渉モードへと
切り替える、
そしてこの船の持ち主であろう女性の下に目線を移す。
「あの女性がこいつらが言っていたお嬢様の様だな......」
見た感じ、ルコールと同じくらいか?
だとしたら、十六、十七歳って所かな?
「ねぇ、そこのキミ!」
「は、はひぃぃぃいい!なな、なんでございましょうか!お、お金や食糧なら
船の底に沢山ございます!多少ではありますが、マジックアイテムや宝石類も
ございます!それを全て差し出しますので、どうか私達の命や奴隷にする事を
許してもらえませんでしょうかっ!私達はどうしてもこの後にやらなければ
ならない事があるんですっ!」
レンヤに声をかけられた女性は大きく目を見開いた後、ブルブル震える口調で
切実にそう述べると、その場に深々と土下座をしたきた。
「わ、我らからもお願いします!」
「あなたを攻撃した責は我らが全てお取りしますから、お嬢様はお助けを!」
「どうしてお怒りが沈まらないというのでしたら、我らがそのお怒りを
お受けますから!」
「必要とあらば、我らの命を差し出します!我らだけなら、奴隷として売り
捌いても宜しいですから!」
それに続けと、残っていた部隊達やダメージを負っていた騎士達も次々と
土下座をしてきて、レンヤに対して切なる願いの直訴をしてくる。
その光景を見たレンヤは、
「うぐ...ま、また嘆願による土下座を食らうとは......っ!」
この何度か見たデジャヴァなる光景に、レンヤは頭を抱えてしまう。




