第二百五十一話・リサーナ・アジョッキン、ギガン城襲撃
―――時は少し遡って、ここはギガン城。
「ふむ、この辺でいいかしら?」
光太郎達、勇者パーティと別れてギガン城に飛んで行ったリサーナは、
自分の顔をギガン城の城壁に向けると、静かに技の発動体勢へと入る。
『貫け!ブリザァァド・アイズ・ビィィィイィムッ!!』
リサーナがそう発すると同時に、二つの瞳がキラリと青く輝く。
そしてその瞬間、青き閃光がリサーナの両の瞳から発射され、目の前の
城壁を粉々に砕いてぶっ飛ばす。
「―――な、なんだ!?か、壁がいきなり吹き飛びやがったっ!?」
「お、おい、見ろ!砕けた壁の穴の向こうに誰かいるぞっ!?」
「な、なに!?」
王の間を扉を守っていた兵士二人が、突如粉々に砕けた城壁に驚き慌て、
その砕けた城壁の方角に急ぎ顔を振り向けると、そこに少女らしき人物が
空中にプカプカと浮いている事に気づく。
「......さて、トーヴァスさんはどこにいるのでしょうかねぇ?」
砕けた城壁の穴からゆっくりと中へと入ってくるリサーナは、キョロ
キョロと周囲を見渡している。
「......ん?あそこに見える大きな扉は?」
あれに記憶がございますわね?
「あ!思い出しましたわっ!確かあの扉は、トーヴァスさんのいる
王の間の扉ですわっ!」
そしてどこかで見た記憶のある、大きな扉らしき物を目線へと入れると、
リサーナはその扉が何かを思い出す。
...という事は、
あの扉を抜ければトーヴァスさんに会えるって事ですわね!
「では早速......」
リサーナはその大きな扉が何だったかを思い出すと、その大きな扉に
移動するべく、足を前に一歩出す。
......が、その瞬間、
「き、貴様、それ以上動くな!そ、そこで止まれぇぇええっ!」
「き、貴様がどこの誰かは知らないが、それより先にその足の歩みを
進めることは決して負かりならんぞぉぉおっ!」
王の座への扉を守っていた二人の兵士が、手に持っていた武器をサッと
身構え、リサーナの進行を止める為、その前にバッと立ち塞がる。
「う~ん、そんな事を言われましてもねぇ~。わたくし、そこの扉の奥に
いらっしゃるトーヴァスさんに用がございますので、そういう訳には
いかないんですよ。ですので、大変恐縮ではございますけど、そこを
退けてもらってもよろしいでしょうか?」
「バ、バカな事を言うなっ!貴様の様な怪しき者、易々と陛下のもとに
通す訳ないだろうがぁぁあっ!」
「アポもなく、このような不埒旋盤な行動でやってきた輩が、我々の
主君に一体何用かぁぁあっ!」
そして二人の兵士がリサーナに向けて武器を突き出しながら、ジリジリと
間合いを積めていく。
「やれやれ...好戦的な連中ですわね......」
こちらとしては、穏便に済ませたいと思っていますのに。
それにこの城で派手に暴れたら、ルコール御姉様からお叱りを受けちゃい
そうですしねぇ。
「ふう...致し方ございません。この方法で入るとしますか......」
リサーナは肩を竦め、軽い嘆息を吐くと、
「扉から入るのが駄目だと言うのでしたら、ここから通れば......」
リサーナは近いの壁に身体を向けると腰をスッと落とし、拳を静かに
後ろへと引いていく。
「な!?き、貴様!壁に向かって何をするつも――――」
「......良いだけの事ですわぁぁあっ!」
『竜・闘・気・ッ!!』
そしてリサーナは竜奥義....竜闘気を発動させ、拳にドラゴンの形をした
オーラを纏わせると、王の間のある壁に向かって思いっきりその拳を
叩き込んだ。
だがしかし、
「ほえ!?ウ、ウソ!?か、壁が砕けてませんわ!?」
目の前の壁をぶち抜く事が全くできず、また亀裂もひび割れも壁には
入っていなかった。
「こ、この強度...それにこの波動......これはもしかして御姉様の!?」
その衝撃事実にリサーナはしばらく何故とハテナ顔をして首を傾げるが、
壁から伝わってくるルコールの力の波動を感じ、
「......なるほど、そういう事ですか。どうやらこの壁、ルコール御姉様の
鱗を触媒にしている様ですわね?」
壁が全く砕けなかった理由にリサーナは納得した。




