第二百三十三話・汚れた頬っぺた
「......はぐ、おお!旨い、旨いぞ、主!」
ホノカが先程欲しがっていたスイーツを買って上げ、それを
手渡すと、ホノカがご満悦な笑顔でパクパクと食べていく。
「そっか、そっか。それは良かったな、ホノカ♪」
「ああ。とても満足だ、主。だ、だがな、主。もう一度言うが、
け、決して我は求めた訳ではないのだぞ!主の手を煩わす事を
しないのが、我ら魔法擬人なのだからなっ!」
ホノカがさっき屋台で買ったスイーツをパクパクと食べながら、
自分達魔法擬人とはを問うてくるので、俺はニコニコ顔で、
いやいや、素直に欲しいって言わない時点で、十分煩わせて
いるんだけどな。
...と、心で思うのが、
表の言葉では、
「はいはい。そうだね♪」
...と、返事を返す。
「うぐ、その顔は理解してくれてないな、主よ!」
俺の思いの内に感づいたのか、ホノカは納得いかないムムッと
した表情で抗議してくる。
そんな中、
「......ん?なんだろ?何かあっちの方がガヤガヤと騒がしいねぇ?」
ルコールが歩いている方角から少し東方面に行った場所から、
人々の喧騒した声が聞こえてくるのに気づく。
ルコールにそう言われ、俺も耳をその方角に傾けると、
「......ああ、確かに聞こえてくるな。聞くに耐えないおっさんの
喚き散らす汚い声が......」
ったく...良い歳をして騒ぐなよなぁ。
ただでさえ、おっさんは肩身が狭いっていうのによ。
「取り敢えず、見に行ってみる?」
「そ、そうだな...俺も何か気にもなるし、行ってみるとするか。おい、
ホノカ、ユキ。行くぞ!」
「はう!ちょっと待ってくれ、主!?まだ食べ終わって...モグモグ、
ゴク!よ、よし、いつでも良いぞ、主っ!」
レンヤに急かされ、ホノカは慌て残ったスイーツをパクッと口の中に
放り込み、一気に食べ終わる。
そして気合いと意気込みを入れて、レンヤについて行く。
「あ!ちょっと待つっすよ、赤いのっ!」
そんなホノカに、ユキが待ったを掛けて止めてくる。
「ん。どうした、白いの?何故我を止める?」
「行く前にその口や頬っぺたを拭いて行きなさい。あんたの口周辺に、
みっともなくクリームがベタベタついてるっすよ?」
「―――なう!?」
ユキがクスッと笑いながらホノカの顔を指差すと、口周りにクリームが
ベタベタついているのを指摘する。
ユキに指摘され、慌て様にホノカが頬や口周辺に手を当て触ってみると、
「うぐ!?」
確かに言われた様に、クリームが頬や口の周りにベッタリとついて
いる事に気づき、ホノカは顔を赤くして恥ずかしがる。
それを見たレンヤは、アイテムボックスから一枚の布を取り出し、
「はは。もうしょうがないなぁ、ホノカは。ほれ、ホノカ。ジッとして...
......よし、取れたっと♪」
クリームのついたホノカの頬を優しく丁寧に拭っていく。
「す、すまぬ、主。あ、ありがたき幸せだ!エヘヘ......」
顔を接近させて自分の頬を拭いてくれるレンヤに、ホノカが顔を真っ赤に
しながらも、嬉しさで表情が綻んでしまう。
「ああ~赤いのズッコイ!それは卑怯っす!反則っすよ~~っ!」
それを見たユキが、口を尖らせてホノカに猛烈抗議をした後、ユキは手に
持っていたホットドッグのソースを、自分の頬にわざとらしくペタペタと
つけていく。
「ほらほら、おじさん!ボクの頬っぺたも汚れているっすよ!さっさと
拭いてっすっ!」
そして、ソースのついた自分の頬を、レンヤにの前に近づけ持って行く。
「やれやれ...だらしないぞ、白いの!ほれ、こい。我が拭いてやる!」
「ち、ちょっと!?何であんたが拭こうとしているんっすかぁっ!?
ボ、ボクはおじさんに拭いて欲し――――いい、ウププッ!?」
しかし思惑通りには行かず、嘆息を吐きながらレンヤとユキの間に
割って入って来たホノカから、汚れた頬をゴシゴシと拭かれてしまう。




