第二百二十六話・ルコールに舞い込むボーナス
「うぐぐ...こ、こんな事が...わ、私は...さ、最強のS...ランクの実力を...
持つ...え、選ばれし...者......だぞ!そ、それがこんな小娘......如きに、
て、手も...足も出ずに...ま、負けて...しまう...という...の......か......!」
「Sランク能力を持つ者とはいえども、あたしの手にかかっちゃえば、
所詮はそんなものだよ♪」
「ふ...ふふふ。ど、どうやら...井戸の蛙は...わ、私の方だった...か......ぁ、
......グハッ!」
グラーゼがそうか細く呟くと、その場にバタンと大きな音を立てて倒れ込み、
意識を失って気絶してしまう。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「ふう...これでヨシッと!」
ルコールはグラーゼと生き残った部下達...そして近くで転がっていた
ランスもついでに、持っていたロープでグルグル巻きにしてふん縛る。
「き、貴様ぁぁああ!ほどけぇぇええ!ほどきやがれぇぇええ~~っ!
俺をこんな目に合わせたとママが知ったらあとで酷い事になるぞぉぉおおっ!
だ、だがしかし、今直ぐロープをほどいて俺を解放すれば、ママには言わずに
許しやってもいいっ!だ、だからさっさとロープをほどきやがれぇええぇっ!」
ルコールからロープで強引にグルグル巻きにされたランスが、地面に這いつく
ばりながら、見苦しくもルコールに抗議の言葉を叫び続ける。
「へっ!?マ、ママッ!?あんたもしかして、マザコンさんなの!?」
この見た目と性格で自分の母親の事をママと呼ぶランスに、ルコールが目を
見開いて驚いた表情を見せる。
だが、直ぐに表情を元へ戻し、
「......まぁぶっちゃけ。それは親と仲が良いって事なんだし、別にそれを
あ~だ、こ~だと馬鹿にする気は更々ないけどさ。でも敢えてひとつだけ
言わせてもらうとするなら、せめて呼び方はお袋とか、母さんとか、母上に
変えた方がいいんじゃないの?あんたのその容姿や性格に全く合ってないと
思うんだけど?」
ルコールがランスにそれとなく母親の呼び方を注意する。
がしかし、
「う、うっさい!黙れぇえやぁああっ!お、俺がママの事をどう呼ぼうと
貴様に関係がないだろうがぁぁあっ!放っておけやぁぁあぁぁあっ!!」
その注意を何度も受けた事があるのか、ランスがかなりのキレ気味口調で
怒ってきた。
「そんなどうでも良い事より、このロープをさっさとほどけぇぇええっ!!」
そして再びロープをほどけと、再度ルコールを睨みつけながら抗議をしてくる。
「ハァ...馬鹿だねぇ。ほどくわけないじゃんか。せっかくの舞い込んできた
ボーナスだっていうのにさ~!」
「は、はあ!?ボ、ボーナスだと......!?」
そんなランスに対し、ルコールが呆れ顔で肩をひそめると、やれやれと深い
嘆息を吐いてランスの言葉を却下する。
「そ。ボーナスだよ♪あんたとこいつらはあたしとレンヤを暗殺しようと
した輩だよ?それをギルドに叩き出せば、きっと報酬がわんさかだよ、うふふ♪」
ルコールはギルドから貰える報酬の事を想像し、ニヤニヤがとまらない。
「それにあんたとそこのお馬鹿騎士達って、絶対前科がいっぱいあるでしょう?
だからきっとその報酬もプラスされると思うんだ♪これをボーナスと呼ばずに、
一体なにをボーナスと呼ぶんだよってもんよっ!うんうん♪」
プラス報酬を視野に入れた報酬の額を想像すると、ルコールの表情が更に
ニヤニヤしていく。




