第二百二十話・あの馬鹿と違って
「あ、そうそう。アンナと言えば、あいつの姿がどこにも見当たらないけど、
アンナリッタはどうしたの?」
アンナがいない事に気づき、ルコールが探す様に周囲をキョロキョロと見る。
「アンナでしたら、ここの門の逆にある北門を見張っていますよ!」
ルコールのアンナリッタはどこという問いに、ネージュがアンナリッタのいる
場所を伝える。
「北門を?」
「はい。あそこの門からランスと紅蓮騎士団達が来る可能性はかなり低いとは
思うんですが。しかしないとは言いきれはしませんので、一応見張っておこうと
なりまして!」
どうして北門にアンナリッタがいるのかと首を傾げているルコールに、ネージュが
その理由を説明していく。
「なるほど。そんじゃ、あたしは残りの門。東門を見張りに行こうかな♪」
因みに、リタイの町に西門はない。
「え!?ひ、東門を...ですか?いや~流石に東門はないと思いますよ?だって、
あそこは非常通路として存在する門でして、通常は開門していないんですよ。
それ以前にあの東門って、入り組んだ道をグルッと遠回りしていなきゃ辿り
着くことのできない門ですから!」
ネージュがニガ笑いを浮かべながら、東門はないと思うとルコールに告げる。
...が、しかしルコールは、
「う~ん、でもなぁ......」
首を横に傾げて、何やら、納得がいかないという表情をこぼす。
「どうしたんです、ルコール姉さん?何か、納得していない御様子ですが、
引っ掛かる事でもおありなのですか?」
「え?ああ......確か、東門って宿屋に近い場所にあるでしょ。更にあの通りって、
人の行き交いもあんまりない。だから町の人達からはバレにくいし、その東門を
通って町の中に侵入して宿屋に近寄るには丁度良い場所じゃないの?」
ネージュの問いに、ルコールはランス達が東門から侵入してくるやもしれない
可能性...その理由を説明していく。
「た、確かにルコール姉さんの言われるように、東門から侵入すれば奇襲を
かけるのには打ってつけだとは思います。ですがあの猪突猛進のお馬鹿なランスが
そんな回りくどい事をしますかね?さっきも言いましたが、東門のある場所へ
行くにはかなりの面倒と時間はかかるんですよ?」
「あの雑魚だけなら多分、いいえ、百パー来ないでしょうね。でもさ、あんたの
言うSランクの奴なら別だと思うんだよ。Sランクになるには冷静な判断、
鋭い洞察力、そして緻密なる計算、それらを混ぜ返して良い決定を決める頭脳を
持たなきゃいけないって聞くしねぇ!」
ルコールの考えに対し、ネージュはランスがそこまでの策を練れないと述べるが、
Sランクレベルの団長なら、その可能性も大きいと告げる。
「そ、そうですね...ルコール姉さんの言うように、団長...グラーナさんならば
その考えに行き着く可能性はありますか...」
そして、ネージュもルコールの考えも否めないと同意して納得した顔を見せる。
「んじゃ、そういうわけで、あたしはその可能性のある東門に向かってみるよ!」
「いや!だったら、ルコール姉さんが行くのは無しですよ!」
「え!何故に?」
ネージュの言葉にルコールがハテナ顔で首を傾げる。




