第二百十九話・ルコールを襲う愚行なる者達
「お~い、そこにいるのはネージュでしょう?あんた、そんな所で一体
なにをやっているのよ?」
「――はう!こ、この声は!?ああ!やっぱり、ルコール姉さんじゃない
ですかぁ~~♪」
いきなり後ろから声をかけられ、ビクッとなる魔導格闘家のネージュが声のする
方角に顔を振り向けると、そこには自分の尊敬する人物、ルコールがいる事に
気づき、ネージュは満面の笑みを浮かべながら、ルコールの下へ駆け寄ってくる。
「やあ、ネージュ。幾日ぶりだねぇ♪それでこんな朝早くにあんな場所で何を
していたの?」
「この間、居酒屋でお話したポンコツランスの件でですよ!あの野郎、ルコール
姉さんに負けた腹いせに、自分とこの騎士隊である紅蓮騎士隊を引き連れて
今日この町...リタイに報復にやって来るっていう情報を得ましてね。そういう訳で
ここから見える南門を見張り、あいつらが来るのを待ち構えているんですよ!」
「へぇ~あいつ、やっぱり仕返しに来るんだ?でもこんなに早く行動を起こすだ
なんて、相当根に持つタイプのようだね、あの小雑魚?」
ルコールが呆れ口調で述べるその問いに、ネージュが間を開ける事なく、
「はい。思いっきり根に持ちますよ、あのポンコツランスは。心が子供ですから!」
...と、答える。
「ま、そうだろうねぇ。あいつの沸点の低い事は態度で丸わかりだったし♪
それで、その紅蓮騎士団ってどれくらいの強さなの?」
「紅蓮騎士団の強さですか?そうですねぇ、ハッキリ言ってかなりの強さですよ。
何せあいつら、一人一人の実力が冒険者のBランクからCランクくらいの強さを
誇っていますから!」
「ほほう。BランクからCランクの強さをねぇ。それは、それは♪」
ネージュから相手の強さを聞いたルコールと、ニヤッと口角をあげる。
「更に厄介なのは、紅蓮騎士団を纏めている団長騎士グラーナさんの強さですね。
あの人の強さは団長なだけあって、紅蓮騎士団の中でも数段上の強さを持っています。
恐らくSランクレベルはあるかもしれませんね!」
「へぇ、Sランクか......」
「そんな奴らに狙われるなんて、不安でしょうがないでしょうが、しかしどうか
安心して下さいルコール姉さん!元リーダーの起こした不始末の片付けは、
あいつの元仲間だった、あたいとアンナでキッチリいたしますんでっ!」
ボソッと呟くルコールに、ネージュがルコールが不安に垣間見れていると
勘違いしたのか、慌てるように紅蓮騎士団の始末は自分たちがしますので、
どうかお任せ下さいと言わんばかりに、胸を大きくドンと大きく叩く。
だが、
「ん?いやいや、あたしも闘うよ?だって、面白そうじゃん♪」
「お、面白そう...ですか?」
ルコールはSランクと聞いて臆するところか、ニヤニヤが止まらないと
いった表情をする。
「だって、Sランクと闘えるんだよ。こんなワクワクはないでしょう♪」
「おおぉぉおっ!さ、流石は姉さんですね!Sランクと聞いても全く微動だに
しないその態度と自信満々な表情!マジでリスペクトですっ!」
そんなルコールを見たネージュは、尊敬の念を込めたキラキラ笑顔をこぼす。
「あ、そうそう。アンナと言えば、あいつの姿がどこにも見当たらないけど、
アンナリッタはどうしたの?」
「ア、アンナですか?あいつなら、ここの門の逆にある門、北門を見張って
いますよ!」
ルコールのアンナリッタはどこという問いに、ネージュがアンナリッタのいる
場所を伝える。




