第二百十話・あの男、再び!
「......ん?なんだろ、あれ?」
今いる場所、そこから少しほど離れた場所に見える平原に、人の集まりで
あろうものが俺の目線へと入ってきた。
俺は一体何事だと思い、その人が集まっている場所をジィィーッと凝視し、
観察をする。
「あの人だかり...よく見ると全員武装しているね?」
「はぁ?ぶ、武装した!?あれ全部がか!?」
「うん、三十ちょいくらいいるけど、全員武装しているみたいだよ?」
目の良いルコールが言うには、その人の集まりの正体は剣や鎧で武装した
部隊との事。
それに気づいた直後、
「くくく...待ちわびたぞ、貴様らっ!」
その部隊らしき集団の中央からどこかで見たことのある太ったおっさんが、
ノシノシと音を立ててながら、俺とルコールの下に歩いてきたかと思うと、
ニヤニヤした小悪党ヅラを見せてくる。
「お、お前はさっきの小太り貴族じゃないか!?」
「だ、誰が小太りだぁあっ!こ、この不敬者めがあぁぁあっ!こ、これは
小太りとは言わず、ポッチャリと言うんだ、ポッチャリとなぁぁぁあっ!
わ、分かったかぁぁあ、この大罪人めがあぁあぁぁあっ!」
小太り貴族がデブったお腹をポンと叩くと、青筋を立ててレンヤの言葉に
激昂を見せる。
「はあ?だ、大罪人??大罪人って、もしかして俺の事をいっているのか!?」
「ハンッ!お前以外、誰がいるというのだっ!」
「はあ?いきなり現れたかと思えば大罪人って......突然何を言い出すんだよ
お前はっ!?」
「フン!惚けるなよ、この大罪人めぇ!貴様がリコット王女様達のお探しに
なられているレンヤという人物だって事は、情報でもう明るみに出ているんだっ!」
「だからさぁ~それは間違いだって、あんときに言ったよね?俺はその...
レンヤとかいう奴とは違うってさっ!」
「だ、黙れい!貴様がレンヤだという事は、これだけの証人から得た情報なのだ!
もはや言い逃れできるとは思うなよっ!」
そう言うと、証人しただろう人物達が書いたであろう紙をヒラヒラさせながら
レンヤ達に見せる。
「た、確かにそう書いてあるな。だが仮にだ!仮にもし俺がレンヤだとしてだ。
あの二つの人相書きとはあまりにも似てなさ過ぎるだろうが!」
「うぐぅぬぅうう!?た、確かに貴様の言う様、あの人相書きと貴様では全く
似ても似つかわない。だがしぁぁあしっ!あれは王女様達が自分で直接お描きに
なられたと聞く。ならば、多少似ていないのは、然もありなんではなかろうか?」
「でもさ。もしこいつがレンヤじゃなかったら、あんたどうするつもり?王女様に
罪無き者を捕縛したって伝わっちゃうのよ?」
小太り貴族にルコールがそう問うと、
「くくく。その時はその時だ。貴様達に謂れのない冤罪を食らわせて、上手く
揉み消してくれるだけだ!」
小太り貴族は口角をニヤリと吊り上げ、自分の首に手刀を持っていき横に
スッと動かすと、口から悪どい笑みがこぼれ出す。
「うわ......こ、こいつ。見た目の通りの最低な貴族様じゃん!?」
「と、とにかくだ!せっかく巡り巡って回ってきた出世のチャンスが舞い
込んで来たんだっ!そんな細かい事で、不意にしてたまるかっ!おい、貴様ら!
コイツら二人を捕縛しろぉぉぉおおぉっ!!」
「ははッ!行くぞ、お前達!王女様に仇なすこの狼藉者を我々で見事引っ捕らえ、
そして王女様に突き出してみせようぞぉぉおぉぉっ!」
「「「「おおおぉぉぉ――――っ!!」」」」
「「「「我々の王女様に仇なす連中に裁きの鉄槌をぉぉおおおっっ!!」」」」
騎士軍団の隊長が持っていた武器を天に掲げ、突撃の命を部下に下す。




